一、公衆に対して日本企業評判
①日本の労働者の住宅事情など生活の質が低い、「働き過ぎ」という
②金儲けばかりに熱心
③海外進出先国で社会貢献が少ない「ビジョンがない」
第一章、経営学の発展
第二章、企業の目的
一
1、利潤極大化説
一、企業の目的:「利潤の追求」もしくは「顧客の創造」
2、経営者効用最大説
経営者の台頭:チャンドラー(A.D.Chandler)の理念:所有と支配の分離
企業が小規模な段階においては製造なら製造だけ、流通なら流通だけを行い、また市場範囲・規模も限定されていたため管理が複雑化になる。所有者の手から経営者の手に企業を渡す=とをたらしたである。
3、共同利益目的説(経営者による企業目的)
経営者が新たな企業の支配者となった時、企業の目的は株主は以外に経営者、労働者、顧客、供給者などの組織の参加者の交渉過程によって形成される。
経営者は企業目的の形成に大きな影響力を持ちえるので、ゆえに経営者の自己目的、すなわち彼の動機が企業目的である。
ボーモル(W.Baumol)の説:企業は最低必要利益率の確保という制約条件のもとで売下高の極大化を計る
経営者の動機
ウィリアムソン(Williamson)の説として
1 サラリー
2 安定性
3 優越性(地位、権力、名声など)
④ 職業の業績など
諸動機を最大化することである。
4、社会的責任論(SCR: Corporate Social Responsibility)
特徴
第1に、「企業の社会的責任」といえば、従来は、どちらかというと余裕のある大企業が本業の傍ら行う慈善的活動もしくはフィランソロピーという色彩が濃かった。これに対し、最近は、「企業の社会的責任」を企業活動の本質的要素として組織化し内部化する傾向が顕著である。すなわち、企業の本業について、社会的責任が問われるようになってきたのである。
第2に、このことは、「企業の社会的責任」が現代の企業にとって無視できないリスク、裏返せばチャンスであるということを意味する。本業のない会社は、少なくとも法的には存在しない。したがって、すべての企業が「企業の社会的責任」に対し積極的に取り組む理由が生じてきた。
第3に、「企業の社会的責任」論の裾野と奥行きが急速に広がっていることである。一方では、企業活動のグローバル化・大規模化に直面し、企業に対し何らかのコントロールを及ぼす必要性が高まっていることに対応して、企業行動に対し発言し行動する市民や団体が国の内外を問わず増加している。企業が何をし、また何をしようとしているのか、市民や団体は「企業の社会的責任」を求めどのような発言・行動をしているのか、に関する情報が、情報技術の発展により、迅速かつ安価に伝えられるようになり、上述した変化を支える重要な要因となっている。ガバナンスという観点から見れば、コーポレート・ガバナンスも企業活動とともにグローバル化し、「企業の社会的責任」論がガバナンスの機能を担いつつあるといえよう。
5、顧客の創造説
二、大企業化による変容
①所有者の支配力が減少
②企業の本質・性格は財産から組織へ変わった
③利害関係者が質量ともに増大した。
④求めるのは金銭的・経済的なものだけではなく地位、名誉、自己実現などの非経済的なものまで多様化、拡大してきた。
⑤企業の存続・発展がなによりも要請されるようになった。―ゴーイング・コンサーン化
三、企業の目的と役割
1企業の役割
、①生産や生活に必要な財とサービスの提供
②雇用の拡大、安定化
③労働者の能力を発揮(はっき)させ、満足を与えること
企業としては、次の役割もある
④出資者等の富(とみ)の増大
⑤他の制度体の費用の確保
⑥社会的貢献
メセナ(文化とスポーツなどに対する援助)とフィランソー(慈善活動)など
2、目的と役割の関係
企業が公的サービスと違い、提供する財とサービスは対価を必要として、利潤を得る。②~⑤の役割も遂行できる
四、「顧客の創造」こそ企業目的
1、企業の目的と役割の機能
①統合性の付与
従業員に一体感を与える。例えば戦後:豊田喜ー郎の「三年でアメリカに追いつけ」はスローガンとして打ち出された。
②企業活動の意義の付与
動機づけをする
③手段選択の基礎
④企業活動の達成の目安、および評価荳準の付与
目的が明らかにされて企業活動がどれだけ十分、満足なものであったかを評価ネきる
2、企業存続の確保
企業存続を確保するため、二ーズを作るのは必要である。ある新商品は「本当に」必要なものなのか、二ーズになるか、現代社会においてニーズは人々が欲しいと思い、購入すれば二ーズなので、そのためイノべーションが必要である、近年、自動車業の二年ごとのマイ十チェンジ、四年ごとのモデルチェンジが好い例である。
五、
1、コーポレート・アイデンティティ:
(Corporate Identiy)
略にCI。商標やシンボルマークを用いて全業コンセプト(概念)を確立し、経営活動全般を明確したり、社会に対する会社のイメージを確立する。CIの導入により、組織の活性化、事業と市場の活性化、資源の活性化がある
2、コーポレート・ガバナンス(Corporate Governance):すなわち、企業統治。
第三章、戦略
1、企業経営とは企業の目的達成に向けて諸活動を統合していくことである。
2、環境の要因
ー般環境:自然、社会、経済、文化、法律
個別環境:市場、ネットワーク、製留サービス市場、企業集団、資本市場、労働市場、地域社会、業界団体
3、競争戦略
(1)マイケル・ポーター(M.Porter)五つの競争要因:
①競争業者
②新規参入業者
③買い手:買い手の交渉力
④供給業者:売り手の交渉カ(売り手)
⑤代替製品・サービス
(2)競争戦略
五つの競争要因に対して優位性をもって対処するための戦略が必要となる。
三つ基本戦略
①コストのリーダーシップ (Cost Leadership Strategy )
低コスト戦略(すなわち低価格化戦略):質がよい前提として競争業者より低い価格を設定すれば有利になる
コストに影響をあえる要因
設備の生産性、操業度、減価償却率などによって決まってくる。新鋭設備は、生産性が良く操業度が高ければ有利であるが、減価償却コストが高い。旧設備は生産性は悪いが、減価償却コストは低いので、低操業に有利である
例:日本の自動車業
②差別化(Differenciation Strategy )
差別化戦略とは、ハーバード大学のマイケルポーターが提唱した競争戦略のひとつの基本形で、価格以外の側面で他社とは異なる機能やデザイン、製品ラインアップを実現し、それによって市場シェア及び収益性の維持を目指す戦略のこと
方法
快递客服问题件处理详细方法山木方法pdf计算方法pdf华与华方法下载八字理论方法下载
:
製品やサービスの品質・機能・付帯サービス(多様な流通ルート)など
ブランドイメージ、ディーラーネットワーク(特約店)、製品のフルライン化の構築など
特徴:コストが大きい(研究開発・品質管理・流通チャネルの開発管理・広告宣伝費等)、また成功が保証されているわけでもない。
③集中
(3)
①垂直統合戦略
垂直統合Vertical Integration とは、事業拡大をM&A等を通じて行う際に、特定事業ドメインの上流から下流までを統合していく戦略のこと。
例えば、石油小売業を営む企業が、調査会社や掘削会社、輸送会社などを統合していくことなど。
経済的メリット:研究開発・生産・販売・管理などの諸機能の共同化によるコストの節減できる。(管理者の数の減少、こうした経済メリットを得ると、結果として競争業者に対する参入障壁を築くことになる)
情報メリット:
水平統合とは、事業拡大をM&A等を通じて行う際に、現在の事業ドメインで担っている役割と同じ役割を他の事業ドメインで行っている企業を統合していく戦略のこと。
フルラインアップ戦略Full Line-up Strategy とは、メーカーや小売業企業が、取り扱う製品群を特定セグメントに特化せず、製品群に関するすべてのニーズを満たすような品揃えを目指す戦略のこと。焦点絞込戦略の反意語。
基本的には、低価格化戦略をとる企業がこれを採用することが多い。マクドナルドやトヨタ自動車が典型例。
焦点絞込戦略(Niche Strategyニッチ戦略とも呼ばれる)とは、ハーバード大学のマイケルポーターが提唱した競争戦略のひとつの基本形で、差別化戦略をより先鋭化させ、専門家やマニア向けなど、非常に限定された市場ドメインに特化し、その市場ドメインでのシェアや収益性の維持を目指す戦略のこと。
この戦略を選択する企業を、マーケットニッチャーと呼ぶ。
ファーストフードでいう高級ファーストフードチェーン(フレッシュネスバーガーやクアアイナなど)や、自動車産業でいうフェラーリ、ロールスロイスなどが典型例。
「障壁」
退出障壁Exit Barrierとは、既に手がけている業界から撤退したい場合の障壁(撤退を妨げる要因)のこと。
撤退障壁と呼ぶことが多い。
例えば、雇用の確保、他社との契約、地域住民の反対などの要因を指す。
撤退障壁が高い業界は、不採算事業であっても事業を継続する企業が増えるため、競争が激しくなる。
参入障壁Entry Barrier とは、新しく業界へ参入する際の障壁(参入を妨げる要因)のこと。
例えば、新規参入に際して、巨額の投資が必要である、顧客基盤が必要である、規制で保護されている、技術が必要であるなどの要因を指す。
参入障壁が高い業界・業種は、その障壁の高さが利益の源泉となる。
移動障壁Mobility Barrier とは、産業内で形成されている戦略グループ間の移動に対する障壁のこと。
参入障壁が新しく業界に参入する障壁であるのに対し、移動障壁は業界内ではあるが、他の展開を行う場合の障壁のことを指す。
例えば、安価な商品を提供するディスカウントストアが高級商材を取り扱う小売業へ業態を移動しようとした場合、店舗のイメージや広告宣伝費の投入、仕入ルートの確保などが移動障壁となる。
②多角化戦略
一つの企業のなかに複数の製品ないしサービスをもち、複数のニーズに対応する事業をもつことである。
シナジー効果:
企業間同士の活動による相乗効果の多くはシナジー効果と称される。手法としてM&Aや提携など行う。経営者は、余剰の労働力・機材を出ない、新しいビジネスを始める際最初から育てなくて済む、技術・技能を所有する会社も転用し利用範囲を拡大させる事ができる、権利を互いに使える様になる、など、さまざまな効果を期待している。
(4)多角化戦略のタイプ
①既存事業とは異なる製品やサービスをもって、新たな市場ニーズに対応する事業領域に進出することである 関連多角化経営
②非関連型多角化経営
第4章 組織
1、経営組織論
(1)科学管理法
(2)、人間関係論
(3)、コンティンジェンシー理論
不安定な環境下において官僚制は有効であるとは限らない、という官僚制の逆機能論の問題意識を継承して、唯一最善の組織構造は存在せず、組織の環境と構造との適合関係によって組織成果が向上する、という前提に基づく分析枠組のことであり、安定した環境下では機械的組織が有効であるが、不安定な環境下では有機的組織が有効である
2、リーダーシップ論
リーダーシップとは、チームや部門など複数の構成員からなる組織において、それを統括する者に求められる資質や行動原則のこと。
リーダーシップの本質には諸説あるが、凡そ
1)ビジョンや目標を明確にすること
2)権限やタスクを委譲し部下に働きやすい環境を与えること
3)部下に対して精神的物理的組織的支援を与えること
4)部下の成果について評価し褒章を与えること
の4点に集約できる。
3、モチベーション論(motivation 動機) 動機づけ理論
マズロー(A.H.Maslow)の欲求階層:生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求(社会的欲求)、承認の欲求(尊敬、自尊の欲求)、事故実現の欲求
有名なモティベーション理論の一つがマズローの欲求階層説です。マズローは人間行動を欲求満足化のプロセスと捉え、その欲求として以下の5つがあると考えました。
●生理的欲求
人の基本的欲求であり、具体的には、食物、水、空気、休養、運動などに対する欲求。
●安全・安定性欲求
安全な状況を希求したり、不確実な状況を回避しようとする欲求。
●社会的欲求
集団への所属を希求したり、友情や愛情を希求したりする欲求。
●尊厳欲求
自己の価値や自尊心を実現したいという欲求で、たとえば他者からの尊敬や責任、自立的な行動の機会を希求する欲求。
●自己実現欲求
自己の成長や発展の機会を求めたり、独自の能力の利用および潜在能力の実現を求める欲求。
人間はこのような欲求群の中から満足されていない欲求があると、人間の心理的な部分に緊張状態を生み、この緊張を解除しようとして行動を起こすだろう。そして、この行動によって緊張から開放されると、不満だった欲求が満足され、その欲求は行動を動機づける力を持つことはないだろう。これがマズローの説明する人間行動のプロセスの基本的考え方です。またマズローは5つの欲求は階層構造を形成していると考えており、人間の欲求満足化行動は低次欲求から高次欲求へと段階的に移行していくと考えました。
マグレガーのX理論、Y理論
マグレガーもアージリス同様、マズローの欲求階層説をもとに「X理論・Y理論」という理論を構築しました。
� X理論は、マズローの低次欲求(生理的欲求や安全・安定性欲求)を比較的強く持つ人間の行動モデルで、逆にY理論とは、マズローの高次欲求(尊厳欲求や自己実現欲求)を比較的強く持つ人間像です。
●X仮説の人間像
・仕事は人にとっていやなものである。
・大多数の人は自ら責任を取ろうとせず、ただ命令されることを好む
・大多数の人には組織上の問題を解決するだけの創造力は持っていない
・生理的欲求や安全欲求が人を動機づける
・大多数の人は厳格に統制されなければならない。
●Y仮説の人間像
・仕事は条件次第で遊びと同じものになる
・自立が組織目標の達成には不可欠である
・組織の問題を解決するために必要となる創造力を多くの人は持っている
・人は低次欲求だけでなく、高次欲求でも動機づけられる
・正しく動機づけられれば、仕事上でも自律的・創造的になれる。
ハーシ=ブランチャード
『入門から応用へ 行動化学の展開 人的資源の活用』
生産性出版1978年を参考にして作成
社会の生活水準が上昇し、生理的欲求や安全欲求など低次欲求が満たされている時にはX仮説の人間観によるマネジメントは管理対象となる人間の欲求と適合しないため、動機づけの効果は期待できないでしょう。低次欲求が十分満たされているような現代においては、Y理論に基づいた管理方法の必要性が高く、たとえば従業員独自の目標設定、自主統制と自主管理、能力開発、参加制度の設定、管理者のリーダーシップの再訓練などを中心とするマネジメントが適切になると考えられています。
期待理論
モティベーション理論のなかで、内容理論とは異なり、特定の行動がなぜ起こり、どの方向にすすみ、どのように持続され、終わるかというプロセスに注目した理論をプロセス理論と呼びます。
プロセス理論の代表的研究はポーター=ローラーの期待理論です。期待理論は、組織メンバーの動機づけは、「期待×主観的価値」つまり職務遂行の努力が何らかの個人的報酬をもたらすであろうという期待と、そのような報酬に対して人が持つ主観的な価値の二つの要因の積できまると考えています。個人が報酬に高い価値を認め、努力すればこの報酬が得られると思う期待が高いほど、人はより努力すると考えるのです。
このように期待理論ではマグレガーなどの自己実現人ではなく、期待利益を最大にしようとする合理的な人間像に基づいています。また
(1) 業績に結びつくように個人の資質に対して適切な役割を与え、
(2) その役割遂行によって達成される何らかの成果に対して報酬が与えられる、
(3) その報酬が公平かどうかで満足度が決定し、そこで知覚される主観的価値が次の努力投入に影響を与える、
というプロセスに注目しています。これらが内容理論と異なる点です。
このほか、プロセス理論には、自分の行った貢献に対する報酬が低すぎるなど個人が不公平を認知するとそれを解消しようとしてモティベーションが発生するとかんがえる公平理論や、行動が反復されるかどうかは過去の行動が報われた程度に依存するとする反応強化理論があります。期待理論は未来が行動を規定するのに対して反応強化理論は過去が行動を規定すると考えるところが異なる点です。
内発的動機づけ
デシ(Deci)は「内発的動機づけ」という理論を構築しています。これは「有能さ」と「自己決定の感覚」が個人の行動の動機づけになるという考え方です。ここでいう自己決定とは、自分の行動の原因が自分自身であるということです。これらの二つの要因を感じることができる活動に従事するとき、人は内発的に動機づけられた行動をしているといいます。自己を有能で自己決定的であると感じている人は、さらなる有能さと自己決定の感覚を求めて、意欲をもやし努力して行くと考えるのです。動機づける要因が自分の内部にあると感じるときには、人は内発的に動機づけられているのです。
この理論に基づくと、たとえば報酬や社会的な承認、業績評価などの外在的要因は、自分の内部ではなく外部にあるため、内発的な動機づけを低くしてしまうと一般には考えられます。しかしデシは、これらの外在的な要因も自分の有能さと自己決定の感覚を変化させると考えています。このような外在的要因が内発的動機づけの作用を持つのは、外在的要因がいわゆる「情報的側面」を持つからだと、デシは説明しています。
「組織文化」
1. 最近の新入社員と話が通じないと悩んでいませんか?
〈ビジネスマンの飲み屋での会話〉
A部長:「最近、入社してくる人達の行動を見ていると、どうも理解できないな…」
B主任:「僕ら入社して5年くらいの若手でもわからない部分がありますよ。部長、このあいだ新人Cを怒っていたでしょ。なんかあまり通じていなかったようですけれど、僕なんかは部長の言っていること、よくわかりますよ。」
新人D:「でも、部長は何であんなことでそれほど怒ったんですか?些細なことじゃないですか。う~ん、よくわかんないなぁ」
E課長:「僕が前にいた会社では、あんなことは絶対に許されませんでしたね。うちの会社なんて、まだ生ぬるい方ですよ。」
このような会話が実際にあるかどうかはわかりませんが、経験された方もいるのではないでしょうか。どうしてB主任は新人CやDに年齢が近いにもかかわらず、A部長の言っていることの方が理解できたのでしょうか。なぜ新人CやDはA部長やB主任の考え方を完全には把握できなかったのか、転職経験者であるE課長の「生ぬるい」発言はどのような意味を持っているのでしょうか。これらの問題の原因は、たとえば「年齢が違うからだ」とか、「そもそも性格が合わない」など様々でしょうけれども、一つの鍵は組織文化を共有しているのかどうかにあります。�
社会的な生活を営んでいる限り、たとえばビジネスマンであれば企業という組織に、学生であれば、サークルや大学などの組織に、主婦の方達は、地域コミュニティという組織に、という具合に、かならず何らかの組織に属しています。そして所属している組織には何となく文化のようなものがあります。体育会系の文化を持った企業組織もあれば、非常にソフトな組織もあるでしょう。今回は組織文化という“ソフト”の面を考えて行くことにしましょう。
2. 組織文化とは
組織文化と一口に言ってもいろいろとあります。たとえば和気あいあいと仕事をする企業もあれば、どちらかと言うとドライな人間関係の中で黙々と仕事をしていく企業もあるでしょう。大学のゼミなどにもそれぞれの文化があるかもしれません。たとえば筆者が卒業した大学においても、「まず考える」という意識を持っているゼミもあれば、「まず“走る”(つまり考える前に行動する)」という文化を持ったゼミもありました。文化の話ですから、どちらがよくてどちらが悪いかという問題ではありませんが、それぞれの組織には固有の文化と言うものがありそうです。
では組織文化とは一言で言うとどういうものでしょうか。一般には「組織構成員間で共有化された考え方に基づく企業(組織)全体の行動原理や思考様式」が組織文化と言われています。この組織文化は共有された価値観(経営理念やビジョンなど)やパラダイム(認知の枠組み)および行動規範から構成されるものです。組織文化が組織のメンバーに浸透していくと、ある価値観や思考の枠組みの中で組織構成員の行動をコントロールすることができるようになります。
組織文化に関して経営学が光を当てたのは、1982年に出版されたピーターズ=ウォーターマンの「エクセレント・カンパニー(原題は“In Search of Excellence”)」という本がきっかけです。それまでの経営学および戦略論は、“分析的”とよばれており、極端に言うと、何ごとについても分析に分析を重ねていく、定量的な分析を行っていく、というスタンスが取られていました。組織文化という漠としたものについては分析の俎上には上らず、そのため、組織文化の重要性については軽視されていたのです。
それに対して、ピーターズ=ウォーターマンは、6つの財務指標などに基づいて選ばれた43社の“エクセレント・カンパニー”を詳細に調査したところ、共通の特徴を発見しました。それは非常に当たり前のように聞こえることかもしれませんが以下の8つです。
(1)行動の重視
(2)顧客に密着する
(3)自主性と企業家精神
(4)“ひと”を通じての生産性の向上
(5)価値観に基づく実践
(6)基軸から離れない多角化
(7)単純な組織・小さな本社
(8)厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ
ピーターズ=ウォーターマン『エクセレント・カンパニー』講談社文庫1986年 �
なかでも特に注目する点は、エクセレントと呼ばれる企業では、価値観の共有によるマネジメントが行われている点でした。キャッシュフローといった財務面を重視するそれまでの分析的戦略論とは異なり、明確な組織文化を構築し、価値観の共有化を図ることによってマネジメントを行っていることが明らかになったのです。財務というハードなものに基づいたマネジメントではなく、文化というソフトなものを使ってマネジメントが行われている企業が、財務面でも非常にエクセレントであるというのは非常におもしろい結果です。
3. 組織文化の生成と機能
ところで、読者の中には「組織文化なんて必要ない」という意見もあるかもしれません。しかしこれだけ広く組織といわれる組織のほとんどに組織文化が発生していることを考えると、そこには何らかの意義もしくは機能があると考えていいでしょう。組織文化はできたばかりの組織にはなくても、自然発生的に次第に形成されてくるものかもしれません。いずれにしても組織文化には何らかの機能があると考えてもいいでしょう。
組織文化が生成される要因としては以下の6つが考えられています。
(1)革新:社会集団内のメンバーによる新しい反応
(2)伝播:他の社会集団から模倣により新しい様式を採用
(3)内的伝播:新しい様式の社会集団内でのひろがり
(4)統合:新しい様式が文化の脈絡に適応すること
(5)選択的排除:ある社会集団内にあった既存の文化様式が消滅すること
(6)社会化:ある集団内における次の世代に文化様式が伝えられること
文化は一朝一夕にはできません。またある社会集団内に定着していないと文化とは言えません。逆に、組織文化は長期間をかけて熟成され、組織に定着するものですから、変革するのも大変な苦労を伴います。
シャインという人は組織文化の機能として(1)外部環境に適応し、(2)内部の統制を図り、(3)組織メンバーの不安を取り除くこと、の3つを挙げています。また神戸大学の加護野教授によると、(1)強い心理的エネルギーを引出す(2)公式的な情報伝達およびコントロールの負荷を低減する(3)組織の弾力的な行動を可能にする(4)組織の外部の人に対して一定の企業イメージや信頼を形成する、という機能があるといわれています。
上述の『エクセレント・カンパニー』では組織文化に関して次のような記述があります。
「文化がきわめて強い拘束力を持っている企業の中で、もっとも高いレベルの自主性が生まれている。そうした企業では、文化は本当に重要な少数の変数をピシッと調節するだけである。…(「IBMはサービスそのもの」という社是に関して)一定の企業文化の中では、こうした標語そのものが、驚くほどの広がりを持つのである。同社では、一事務員にいたるまで誰もが、顧客サービスの向上に役立つなら何でも考えるように求められている。」
ピーターズ=ウォーターマン『エクセレント・カンパニー(上)』204ページ
組織文化を共有すること、価値観を持つことの強みは、「それさえ共有していれば、個々の構成メンバーに対しては、現実的かつ具体的な創意工夫によって、その精神を最大限生かしきるシステムが構築できる」(ピーターズ=ウォーターマン『エクセレント・カンパニー(上)』204ページ)ということなのです。
4. 組織文化の共有
価値観の共有、組織文化を共有していると、冒頭のような会話およびその会話の原因となった出来事はもしかしたら生じなかったかもしれません。しかしそもそも「この人とは組織文化を共有しているな」という感覚は一体どういうものなのでしょうか。どのような状態になれば組織文化を共有していることになるのでしょうか。�
これは、問題設定としては簡単ですが、それに答える/口で説明するのは容易ではありません。経営理念やビジョン、行動規範などを文書化すれば、組織文化の共有化が進むのでしょうか。「共有」という言葉を聞いたときの感覚とはなんとなく違うような気がします。おそらく言葉や文章の意味が、言葉のレベルで理解されているということだけでは、本当のところで組織文化を共有していることにはならないのでしょう。�
神戸大学の加護野教授が、アジアにおける松下電器産業の事例をもとに、組織文化の共有に関するおもしろい研究をしています。それによると、組織文化を共有しているかどうかの判定規準は、とっさの異常事態、日常の接触の中で起こる偶発的事態に対して、適切に行動できるかどうかであり、日常反復される些細な行動やとっさの行動を通じて人々は共有の深さを測っている、そしてそのような文化の共有は「しつけ」によって行われている、と言っています(加護野1997)。赤ちゃんの「おしっこトレーニング」ではありませんが、何度も何度も繰り返し、しつけて行くことによって、組織文化が共有されていくのです。
日本人の会話では「心と心が通じ合う」ということがよく言われます。また、NHKのテレビ番組で狂言師の野村萬斎氏が「“形”ではなく“型”を習得する」ということを言っていました。おそらく「共有する」というのは、こういった発言に近いことなのでしょう。つまり、あれこれ論理的に説明して理解させるのではなく、“うむも言わさないようなしつけ”によって組織文化を伝え、共有化していくのです。もし、「形」は“理解”で、「型」は“悟り”と言えるのであれば、組織文化とは「無形の型」であり、自分で気づいて悟っていく仏教のようなものです。先輩や上司はなんだかんだとうるさいけれども、それはこういうことだったのか、と気づいていく。それによって組織文化の共有が進んでいくのでしょう。
第五章、組織間関係論
1、経営組織論とは、広義には、企業・学校・病院などあらゆる組織体の経営問題とかかわる学問であるが、狭義には、企業の経営問題を中心として扱う学問である。双方の場合に共通していえることは、いかにして組織目的(企業目的)を合理的に達成することができるか、ということである。ここから、経営組織論の性格としてまず第一に目的合理性の追求ということをあげることができる。
2、組織の基本型
(1)ライン組織(line organization)
①分類:純粋ライン組織、同一階層の組織単位間で同質の課業が分担され、職能的分化が行われていない組織である
部門別ライン組織、異質の課業が分担され、購買、製造、販売などのように、職能別、あるいは製品別、地域別などに部門化している組織である。
②長所:命令系統が単純明快で権限、責任の所在がきわめて明確なことである。そのため、組織の規律、秩序の維持が容易になされる組織として軍隊に用いられ、「軍隊組織」ともよばれる。
形:経営者――管理者――作業者
③ファンクショナル組織(functional organization)
即ち「職能組織」とも呼ばれ、専門の原則にもとづいて職能の分化が行われ、その専門職能を担当する数人の上位者から、作業者がそれぞれの職能に関して指揮、命令を受けるような組織である。この組織は、テイラー(Taylor.F.W)の職能別職長制度(functional foremanship)にその起源があるとされている。
長所:管理者の担当する職能が特定の専門領域に限定されるので管理者の負担が軽減されること
職能の専門化から、専門的な能力を持った管理者の養成が容易であることなどである
短所:一人の部下は複数の上位者から指示、命令を受けるので混乱がいじる恐れがあること。
管理者の職能間に意見の対立が生じた(生じる)場合にその調整が難しいなど
形:経営者――職長――作業者
(3)ライン・アンド・スターフ組織(line staff organization)
命令のー元性を保持しながら専門化の利点を利用するのにライン組織に専門的な知識をもって助言しライン活動を援助・促進するスタッフを配置した組織である
長所:①命令の統一性を確保しやすい②専門化により仕事の能率向上をはかれることなどである。
短所:①スターフ権限が強力になるとライン部門への介入を招きライン管理者と対立しやすい②スタッフが軽視されると、ラインがスタッフを抜きにして事を進め、専門的な立場からの助言や勧告は困難になることなどの短所がある。
形:経営者――専門スタッフ(監督)――管理者――作業者
3、組織の応用型
(1)職能部門制組織(functionalized organizaton)
経営職能の水平的な職能分化を基礎にして、購買、生産、販売などの職能ごとに部門が編成される組織である。
長所:①職能の専門化によって情報や知識の蓄積が容易になり、専門的な能力を持った管理者の養成が容易である②各職能が一括して各部門内で行われるため、経営資源の集中利用が可能で、規模の経済性が得られることなどである
短所:過度の専門化により部門間のセクショナリズム(sectionalism 宗派主义)が生じ、全社的見地からの調整に時間とコストを要する。
(2)事業部制組織
製品・サービス別、地域別、顧客別などの基準で部門化した事業部と、各事業部の上に位置し全社的な活動を行う本社機構からなる組織である。 各事業部間での取引に、事業部の原価ではなく原則として市場価格を用いる「社内振替価格」や社内のほかの事業部よりも安い価格で良質の製品を社外から購入できる権利として「忌避宣言権」が認められている。1920年general moters社などで採用され、1960年代大企業の大半がこの組織を採用している。
長所:①本社機構が分権化により日常的業務に関する決定から開放され戦略的問題に専念できる②各事業部が自立性を持つので市場への対応において迅速(じんそく)性や機動性を発揮しやすい
③事業部ごとの業績評価が可能で、利益責任が明確
④事業部長の経験を積むことでトップの後継者の育成ができる
短所:①事業部間で人員や設備の重複投資が行われやすい
②事業部間の競争が激しくなるとセクショナリズムに陥りやすい(陥る おちいる)
③短期的な利益の追求に走りがちになるなどである。
(3)マトリックス組織(matrix organization)
基本的にはタテ割りの職能部門制組織としての効率性の追求とヨコ割りの事業部制あるいはプロジェクト組織の持つ外部市場への適応性の追求を同時に満足させる、格子状に組み合わされた組織である
特徴:general manager、matrix manager、two boss manager
ゼネラル・マネジャー(general manager)という管理者が生じ、部下のマトリックス・マネジャー間のコンフリクト(対立)を調整し、協働を促進する。
長所:
1 効率性と外部市場への適応性の同時達成ができる
2 専門知識・技術の開発・蓄積が容易になる
3 人材の流動的活用が容易である
短所:①責任・権限関係があいまいで権利戦いが発生しやすい
②コンフリクトの解決や調整に時間を要し意思決定に遅れが生じやすい。
4 組織の構成メンバーにストレスが生じやすい。
(4)ネットワーク組織(network organization)
自律的な組織を水平的に緩やかに結びつけてネットワークを形成する組織である。
部門間だけでなく個々の企業の間でも形成される。
基礎関係:①情報の伝達・交換関係②財・サービスの取引関係③信頼などの規範的関係など
その中でダイナミック・ネットワーク組織という形態がある
特徴:①ブローカー(broker 仲介者)②垂直的な分離③市場メカニズム(競争により優勝劣敗)④情報公開の四つの特徴から成り立ている。
各企業は同じの目的に向けて機能的に特化した外部企業を利用して業務を遂行する、従来自社内で行われた業務の一部または全部の外部委託をする「アウトソーシングoutsourcing」や戦略的な意味合いで緩やかな協調関係を結ぶ「戦略的提携 strategic alliance」がある。
注:アウトソーシング (outsourcing) とは、「外部委託」ともいい、企業や行政の業務のうち専門的なものについて、それをより得意とする外部の企業等に委託すること
アウトソーシングの長所:業務や外部活用をしたほうが効率的であったり、専門的であるものをアウトソーシングするのが有効である
補助内容:日本における組織形態の動向
1、 カンパニー制(company system)
カンパニー制とは社内分社制の一種で、各事業部門をあたかも独立した会社のように分け、事業を運営する仕組みです。ヒト、モノ、カネの経営資源を各カンパニーに分配し、独立採算を徹底するとともに、権限も大幅委譲します。とくに権限の大幅委譲という点で、単純な事業本部制とは異なります。
背景と狙い:日本企業が企業組織改革を実施する時、その狙いは概ね「事業の責任単位を明確にし、権限委譲を進めて意思決定と行動のスピードを早める」ことにあるとされています。この背景には、90年代に入ってから著しい復活を遂げたように見える米国企業の経営システムへの関心があり、カンパニー制もこのような流れの中で注目されてきました。 1994年に導入したソニーなどは草分け的存在であり、給与水準や人事制度をカンパニーの事業内容に応じた体系に変えられるなど柔軟で迅速な経営が可能になるため、産業界では大企業を中心に経営改革の手法として採用するケースが相次いでいます。とくに家電業界では、1999年に東芝、日立製作所、2000年にNEC、2001年には松下電器産業など各社が採用しています。
2、持株会社(holding company)
他の株式会社を支配する目的で、その会社の株式を保有する会社である。ホールディングカンパニーとも呼ぶ。
キーワード:
1、 規模の経済性:企業規模が拡大し、製品の生産量が増えれば増えるほど、コストが低下すること
2、 スピード経済:情報があれば不確実性を削減し生産と販売の速度をあげることができること
3、 プロフィット・センター:利益責任単位、直接的に利益を生み出す部門を「プロフィットセンター」、生み出さない部門を「コストセンター」ということがある
4、 リストラクチャリング:(restructuring)企業は買収、合併、不採算部門の整理、人員削減などの手段によって事業内容を再編成すること
二、戦略的組織の展開
キーワード:
1、垂直(すいちょく)統合戦略 Vertical Integration
垂直統合とは、事業拡大をM&A等を通じて行う際に、特定事業ドメインの上流から下流までを統合してい
く戦略のこと。
例えば、石油小売業を営む企業が、調査会社や掘削会社、輸送会社などを統合していくことなど。
2、多角化戦略 Diversification
なぜ企業は多角化するのか
なぜ企業は多角化を行うのかという問題について、これまでの多角化研究では2つの説明がされます。一つは既存の事業の市場成長率が低かったり、不確実性が高いことなど、企業外部の環境の原因とするものです。鉄鋼メーカーが半導体事業に乗り出したのは、おそらく鉄の消費量がそれほど高い成長余力を持たなくなったこと、そして半導体の市場が大きく成長する見込みがあったからだと思われます。インテルが音声チップ事業に進出したのも、インターネット技術やブロードバンドなどネットワーク技術の進化によって、これまで処理するのに時間がかかっていた音声や映像がネットワーク上でやり取りされるニーズが増えると予想したからではないかと考えられます。�
もう一つは企業内部の事情によるものです。企業内部の事情はさらに2つの説明がなされます。一つはシナジー効果を享受するため、もう一つは未利用資源を有効に活用するため、という説明です。
多角化とは、既存事業とは基本的に関係のない新たな事業分野に進出することで、事業拡大を図る戦略のこと。コングロマリット化ともいう。
既存事業と関係のない事業分野に進出する点で、既存事業と関連のある事業を通じて拡大を図る垂直統合や水平統合とは異なる。
ライフサイクルと多角化
「企業の寿命は30年」と言うフレーズを聞いたことがある方もいるでしょう。ちなみに、今から100年以上前の1896年、そして1919年、1936年、1955年、1990年の鉱工業に属する企業の総資産額のランキングを見ると以下のようになっています。�
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たしかに30年を経てランク外に落ちた企業もあるでしょうし、そもそも存在がなくなった企業もあるようです。しかし総資産で見たトップ10企業に30年以上入っている企業もあるようです。
この違いの一つを説明する概念はライフサイクルです。企業が生産する製品には一般にライフサイクルが存在すると言われます。製品が新しく開発されて市場に登場し(導入期)、顧客に受け入れられて当該製品の売上高が急速に上昇していきます(成長期)。その後、多くの顧客に製品が受け入れられるようになり(成熟期)、ほとんどの顧客に行き渡る時期に入ります(飽和期)。そしてついには製品として売れなくなる衰退期に移ります。
このように製品にはライフサイクル(寿命)が存在するために、経営者は当該製品及び市場が衰退する前に何らかの手を打たないと存続できなくなります。製品ライフサイクルにしたがうと、その製品の寿命=企業の寿命になります。しかしある製品のライフサイクルを超えて企業が存続しているということは、企業が主力とする製品を次々に変えている、もしくは一つの製品に依存するのではなく、複数の製品を生産・販売していることが想像されます。一般に、経営者は、製品ライフサイクルを越えて企業を存続させるために、既存の製品及び市場が衰退する前に何らかの手を打つでしょう。その一つの手段として、企業は既存製品分野とは異なる製品市場に進出するという多角化を行うのです。
企業は成長するための一つの手段として多角化という戦略を選択するようです。次回はこの多角化の概念についてより詳しく見ていくことにしましょう。
3、関税障壁(しょうへき)
国内産業の保護・育成を目的として、関税が操作され夕乳品の流入が制限されることである。
4、技術移転
さまざまなタイプの技術が、他国、他企業、他部門に提供・移転されることである
5、 ロジスティックス Logistics
ロジスティクスとは、軍事用語から派生して経営に用いられるようになった単語で、単なる物流(Distribution)という意味に加えて戦略性を帯びた意味合いを持つ。
いわば、必要な物資を必要なタイミングで必要な場所に届ける物流システムのことを指す。この意味で、戦略的物流と訳されることも多い。
第二章、経営管理論
1、人間観の変遷
シャイン(Schein,E.H.)は人間観の違いによって経営管理に関する研究を分類する。
1 合理的経済人
賃金によって動機付けられ、賃金を最大にするために行動する。また、人間は指示を受けて行動する機械のような存在であり、感情は邪魔者として処理される。これは機械人ともよばれる。
テイラー(Taylor,F.W.)の科学的管理法とファヨール(Jule Henri Fayol)の管理過程論
2 社会人
友情や安定感、帰属感といった社会的欲求(よっきゅう)によって動機付けられる。公式的な組織よりもむしろ非公式な集団に影響を大きく受ける。
人間関係論によって従業員にまず耳を傾け、欲求や感情を理解するkとが大切である。また、個人を刺激するだけではなく、集団を刺激することも視野に入れなければならない。
マートン(Merton,R.K.)の官僚制の逆機能論やホーソン実験に発する人間関係論
3 自己実現
自己を成長させたいという欲求によって動機付けられる。また、賃金などの外的報酬よりも完成の喜びなどの内的報酬によって動機付けられる。
モチベーション論(motivation)
④複雑人
経済的欲求、社会的欲求、自己実現欲求のどれによって動機付けられるか、人によって異なり、時と場所に応じて変化する。
注:
管理過程論(かんりかていろん)とは、ファヨール(Jule Henri Fayol)が創始した理論で、管理機能を計画、組織、調整、指揮、統制の各過程に分けて考案する立場のことである。ファヨールはこれらの過程からなる管理職能が経営者や管理者に特有の機能であるとした。今日なお有力なアプローチのひとつであるが、管理の本質についての認識の不充分さや、あらゆる組織や状況に普遍的に当てはまる唯一最善の原理原則を強調し過ぎる点などが、近代組織論などの立場から批判されることになる。
科学的管理法(かがくてきかんりほう;Scientific Management)とは、フレデリック・テイラーが20世紀初頭に提唱し、ギルブレイスらによって発展した労働者管理の方法論。テイラー・システムとも呼ばれる。現代の経営管理論や生産管理論の基礎のひとつともなっている。
ホーソン実験(人間関係論の一つの試し)
ホーソン実験(Hawthorne effect)とは、1924年から1932年までシカゴ郊外にあるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場(Hawthorne plant)において行われた一連の調査実験のこと。心理学教授レスリスバーガーと精神科医師のエルトン・メイヨーによって照明実験、リレー組み立て実験、面接実験、バンク配線作業実験という四つの実験が行われた。この実験の結果、労働者の作業能率は客観的な職場環境よりも、職場における個人の人間関係や目標意識に左右されるのではないか、という仮説が導き出された。具体的な実験結果は以下の通りである。
照明実験では、工場の照明と作業能率の相関関係を調査することが目的の実験だったが、照明を明るくした場合に従来より高い作業能率となっただけでなく、照明を暗くしても従来よりも作業能率が高くなることが計測された。
リレー(継電器 relay)組み立て実験では、様々に条件を変えながら、作業能率がどのように変化するかを調査したが、どのように変更を行っても実験が進むにつれて作業能率は上昇した。途中でもとの労働条件に戻す形の条件の変更を行った場合にも、作業能率が上昇した。
面接実験では、労働者の話を聞く形式の面接を行った実験だが、その結果、労働者の行為はその感情から切り離すことができないこと、職場での労働者の労働意欲は、その個人的な経歴や個人の職場での人間関係に大きく左右されるもので、客観的な職場環境による影響は比較的少ない、という結果となった。
バンク配線作業実験は、職種の異なる労働者をグループとして、その協業の成果を計測しようとした実験だったが、実際には、1.各労働者は自分の労働量を自ら制限していること、2.品質検査では労働者の仕事の質だけではなく、検査官と労働者の人間関係が評価に影響すること、3.労働者の時間当たりの成果の差違は、労働者の能力的な差違によるものではなかったこと、が分かった。
2、 経営管理論の系譜(けいふ)
(1)科学的管理
南北戦争後、大陸横断鉄道が建設され、電話も発明され、大量生産時代の到来し西欧の旧移民と北欧の新移民が熟練程度の違いで、組織的怠業(systematic soldiering たいぎょう)が頻繁(ひんぱん)に起こっていたため、テイラーはそれを根絶するために、内部請負制度(inside contract system)から格差出来高賃金制度(differential piece ratesystem)を考案し、課業管理(task management)を提唱(たいしょう)した。
科学的管理の原理:
①作業の科学を発展させ、目分量方式をやめること
②労働者を科学的に選択し、教育し、発達させること
③管理者と労働者が心から協働すること
④管理者と労働者に職責を均等に配分すること
(2)課業管理の原理
①動作研究(motion study)と時間研究(time study)により、一日ごとの作業量の算定
②標準的諸条件(standard condition)
③成功に対する高賃金の支給
④失敗に対する低賃金の支給
(3)職能別職長制度
テイラーは、課業を決め、労働者に命令を与え、労働者から報告を受ける機関、すなわち工場の管理を担う機関として計画部(planning department)をあげる。
計画部職長
1 仕事の順序および順序係職長(工場全体あるいは労働者の作業の流れを決めて、日表を作成し報告を受ける)
2 指導票係職長(部品番号など詳細内容を記した指導票を作成し、報告を受ける)
③ 時間および原価係職長(作業にかかる時間とコストを記録する時間表を作成し、報告を受ける) ④ 訓練係職長(遅刻、欠勤に対処したり、賃金改正の相談窓口になる)
現場職長
1 準備係り職長(労働者が機械や道具を精確、迅速に準備し、扱えるよう訓練し、監督する)
2 速度係り職長(指導票に記された速さで作業が進むよう労働者お訓練し、監督する)
3 検査係り職長(品質を維持するよう労働者を訓練し、監督