1.はじめに
本工事は,供用中の湯浅御坊道路・川辺第一トンネル
に並行して避難坑トンネル(延長2,645m:このうち
TBM坑φ4.5m,延長2,590m)および連絡坑を施工す
るものである.本工事においてTBMのディスクカッタ
ビットは,SNCM材とダイス鋼のビットを併用した.
本報告は,ディスクカッタビットの磨耗と選定の実績に
ついて報告をするものである.
2.ディスクカッタビットの概要
岩盤を掘削するTBMのカッタは,ディスクカッタと
いう回転式のカッタを用いる.このディスクカッタを,
TBMのカッタヘッド面盤上に一定間隔で離れた同心円
を描くように取付け,カッタヘッドを岩盤に押付けて
ディスクカッタが転動しながら岩盤を圧砕することで掘
削が行われる.
ディスクカッタの種類には,図-1のようにカッタハ
ブに1つのディスクカッタビットを装着したシングル
カッタと,図-2のように複数のカッタハブが独立して
回転できるよう軸に装着したものがある.本工事では
ディスクカッタビットサイズを17インチとし,図-3
のようにフェースカッタ(No.9~30)とゲージカッタ
(外周部カッタNo.31・32)に破砕効率の良いシングル
カッタを使用し,センタカッタ(No.1~8)に1つのカッ
タ軸に2つのディスクカッタビットを装着したものを使
用した.
ディスクカッタの刃先形状には,
表
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-1に示すような
種類がある.本工事では,一定した刃先幅を保てる平型
カッタを採用した.カッタビットの材質としては,一般
に使用される SNCM材(ニッケル・クロム・モリブデ
ン鋼)のほか,高価ではあるが耐磨耗用特殊カッタとし
て,工具鋼系のカッタがある.
工具鋼系のカッタビットは耐磨耗性が高い反面,
SNCM材に比べて靭性が低く欠け易い.また,硬岩用
TBMディスクカッタビット磨耗
神崎 浩*
Hiroshi Kanzaki
渡邉 聡*
Akira Watanabe
*関西(支)川辺(出)
阿部 俊*
Suguru Abe
カッタの種類 平型カッタ くさび型カッタA くさび型カッタB
形 状
カッタ刃先幅
特 徴
カッタ新品時から磨耗交換時ま
で一定した刃先幅(貫入幅)を
保つことができる.多くの岩種
で使用される.
亀裂の少ない硬岩や玉石混在岩
などで使用されることがある.
初期の切込性は良いが磨耗は早
い.
石灰岩や泥岩など磨耗の非常に
少ない堆積岩が続く場合などに
使用されることがある.
図-1 シングルカッタ
図-2 センタカッタ
図-3 カッタ配置図
表-1 カッタ形状の比較1)
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に超硬チップを埋込んだチップインサート型もある.た
だし,受注生産品のため高価格で納期に時間がかかるほ
か,高負荷に対してはチップの脱落などの問題がある.
そこで本工事では,交換頻度の多いゲージカッタ(No.
31・32)と交換に時間を要するセンタカッタ(No.1~8)
に工具鋼系のダイス鋼(HRC56~62)を装備し,フェー
スカッタに SNCM材(HRC54~58)のカッタビットを
使用し掘削を開始した.
3.カッタビットの選定と消費実績
TBMのカッタ消費量は,工期・工事費に大きなウェ
イトを占めるが各種岩盤条件により消費量は変わる.消
費量の推定
方法
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については,国内外の各メーカ・研究機
関により異なり統一されたものはないが,石英などの硬
質鉱物含有量が影響するといわれている.
川辺第一トンネル避難坑の周辺地質は,四万十累帯の
うち日高川帯に属する中生代白亜紀の日高川層群美山累
層が広く分布している.美山累層は砂岩および砂岩頁岩
互層を主体としている.本トンネル工事の地質縦断図を
図-4に示す.地質からトンネル区間を�~�に分けて,
カッタビットの消費実績を表-2にまとめた.
区間�,�,�では実績と積算がほぼ等しいものの,
区間�の硬質砂岩層では,実績が積算の約3倍もカッタ
ビット平均磨耗量が大きくなった.
また,区間�の掘削初期においてセンタカッタビット
は回転周長の違いから欠けが多々発生したため,ダイス
鋼の使用をやめ,磨耗の著しい事が予想されたが,以降
のビットには SNCM材を使用した.チップインサート
型は,負荷によるチップの脱落が懸念されたため使用し
なかった.
ゲージカッタについて欠けは発生せず,ダイス鋼を続
けて使用した.
フェースカッタは,ビット磨耗によるカッタ交換が頻
繁に発生したが,SNCM材のビットのため欠けは発生
せず,ビットの偏磨耗等による機械トラブルは防止でき
た.
4.結 論
川辺第一トンネル避難坑は,区間�の硬質砂岩におい
てカッタビットの磨耗が著しかった.この区間の一軸圧
縮強度が150~250MPa と一般的な火成岩や体積岩に比
べ明らかに高い.
カッタビット磨耗量と一軸圧縮強度,および石英含有
率の関係をつかむため,坑内で採取したコアの試験・分
析を行い,その結果を図-5に示す.
分析結果から磨耗量と一軸圧縮強度の関係は,一軸圧
縮強度が高くなれば磨耗量が多くなる傾向は見られる.
しかし,偏光顕微鏡観察の結果から石英含有率を示す
と,磨耗量が大きい部分は25%以上含まれている.ま
た,15%以下では一軸圧縮強度が高くても磨耗量が小
さくなっている.
カッタビットの磨耗量にとってこの微細で硬質な鉱物
がカッタビットの磨耗に著しく影響を与えており,TBM
のカッタ消費量を論じる上で石英含有率は非常に大きな
要素であることが窺える.
参考文献
1)社団法人日本トンネル技術協会,TBMハンドブッ
ク,pp.26.,2000.
2)大阪大学大学院 工学研究科 地球総合工学専攻
谷本研究室,TBMカッタビット磨耗に関する考
察,2004.
区 間 T.D.(m)
単位掘削当りの平均磨耗量
(mm/m)
実 績 JH積算
�
頁岩・砂岩互層 0~448 0.039 0.032
�
硬質砂岩層 448~1680 0.114 0.030
�
砂岩・頁岩互層 1680~2085 0.046 0.027
�
頁岩層 2085~2536 0.022 0.027
Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ
図-4 地質縦断図
表-2 単位掘削長当りのカッタ平均磨耗量の実績と積算の比較2)
図-5 各区間の TBM単位掘削長当りのカッタビット磨耗量と岩
石の一軸圧縮強度および石英含有率の関係2)
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