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ジャーナリズムメディア学のあるべき教育システム ジャーナリズム・メディア学の あるべき教育システム1 -チューリヒ大学の例から- 江口 豊 On the Educational System of Communication and Media Science at the University Zurich EGUCHI Yutaka In the german-speaking region communication and media science flourished at college level in the last deca...

ジャーナリズムメディア学のあるべき教育システム
ジャーナリズム・メディア学の あるべき教育システム1 -チューリヒ大学の例から- 江口 豊 On the Educational System of Communication and Media Science at the University Zurich EGUCHI Yutaka In the german-speaking region communication and media science flourished at college level in the last decade. Basically there are two streams of efforts. The first type of colleges is oriented towards a practical training course as in several journalism schools in the USA. The second sets priority on the theoretical and systematic education and research as one of the social sciences. The Institute of Journalism studies and Media research of the University Zurich undoubtedly belongs to the second type and is one of the leading institutes in the field in Europe. In the organization and educational system of the institute at the biggest Swiss university there are some solid factors, which nevertheless enable remarkable success also as a professional training course. abstract 江 口   豊 EG U C H IYu taka The Journal of International Media, Communication, and Tourism Studies No.5|021 江 口   豊 EG U C H IYu taka ≥1 本報告は、平成16年度文部科学 省「海外先進教育研究実践支援 プログラム」によるチューリヒ 大学における調査・研究に基づ きまとめられたものである。受 け入れを快諾されたチューリヒ 大学ジャーナリズム・メディア 学研究所所長オットフリート・ ヤレン教授を始め、派遣の実現 に助力を惜しまれなかった関係 諸氏・諸機関にこの場を借りて 深謝したい。 ≥2 江口(2006)参照。 ≥3 「チューリヒ大学ジャーナリズ ム・メディア学研究所」のドイ ツ語正式名は Institut für Publizistikwissenschaft und Medienforschung der Univer- sität Zürich。 ≥4 本報告2.1.に紹介する通り、 ここで問題にする学科名(ドイ ツ語のPublizistikwissenschaft)を その定義にそって和訳するとす れば公共伝達論となろう。ただ し、ここでは人口に膾炙してい る「ジャーナリズム・メディア 学」を踏襲する。 ≥5 本報告では副専攻でジャーナリ ズム・メディア学を学修する学 生は考察の対象としない。 0|目的 江口(2006)2では、スイス、チューリヒ大学におけるジャーナリズ ム・メディア学の領域における研究教育活動全般について報告にした。拙 文は、その延長線で、とくに正規学生を対象とした教育課程と教育運営の 実際面に焦点を絞って調査した結果をまとめたものである。もちろん、教 育と研究の 关于同志近三年现实表现材料材料类招标技术评分表图表与交易pdf视力表打印pdf用图表说话 pdf 裏一体の関係はいかなる研究機関でも認められるものであり、 ジャーナリズム・メディア学教育の担当組織であるチューリヒ大学ジャー ナリズム・メディア学研究所(以後ドイツ語名の略称IPMZ3とする)の研 究活動の特性は、その教育活動にも色濃く反映されている。その特性を一 言で述べるならば、社会科学の枠の中で公共コミュニケーション現象を理 論的、経験的な研究で体系的に解明しようとする姿勢であろう。そして、 この研究姿勢が教育実践面にそのまま反映されていると言うことができる。 いずれにせよ、グローバル化する世界という枠の中で、しかもメディア 社会として類似の過程(必ずしも同一のものではないにせよ)にある日本 におけるジャーナリズム・メディア学教育の重要性を考えるとき、本報告 にわずかであれ触発される要素、示唆される要素が見出されるとすれば、 筆者としては望外の喜びである。 1|チュー リヒ大学哲学部ジャーナリズム・メディア学科4 スイスの諸大学では、ジャーナリズム・メディア学(コミュニケーショ ン学を含め)を専攻しようとすれば、当該大学のいわゆる精神科学(日本 流にいえば人文科学)全般をカバーする哲学部に学生登録することになる。 この哲学部の一学科であるという事実は、後の修士論文執筆と修士課程修 了に関する事務手続きなどで再度表面化する。ジャーナリズムやメディア という現代の若者にとって魅力的なキーワードにあふれたジャーナリズ ム・メディア学科に入学希望者が多いのは当然であろう。2004/05年冬 学期開始時点で、チューリヒ大学には23,000名余りの学生が登録されてい る。学生数最大の学部は哲学部であり、在学生総数約11,000名に上る。ジ ャーナリズム・メディア学科は同時点で総数約1,000名を超えている。 2005/06年冬学期開始時点でも200名近い新規入学者が主専攻の学生とし て登録されている5。スタッフ数が限定されている現実を考えれば、何らか の選抜が必要と考えるべきところであろう。医・歯・獣医学系のように希 望者全員を受け入れることができない場合は、定員制限(Numeruns Clausus) を実施する場合もある。しかし、ジャーナリズム・メディア学科では「修 022|国際広報メディア・観光学ジャーナル No.5 ジャーナリズム・メディア学のあるべき教育システム ―チューリヒ大学の例から― 江 口   豊 EG U C H IYu taka 学の自由」という立場にたって、入学時点での選抜は実施していない。つ まり、ある種の「ふるい分け」(IPMZ関係者は「適性の確認」という表現 を使用している)は、その後の学修の課程で行われている。 2|現在の教育体制6 従来、スイスの諸大学で人文系の最初の修了課程を修士(Lizenziat)と して位置づける場合が多かったが、これが1999年のボローニャ宣言によ って全面的な変更を受けることとなった。しかし、チューリヒ大学哲学部 で新しい教育課程がスタートするのは2006/07年の冬学期であり 7、未 決・未公開の事項も多い。ちなみに、現教育課程は2015年まで維持され ることが保障されている。また、2006/07年からは、現教育課程に在籍 する学生が希望すれば新しい学士課程への編入も可能となっている。本報 告では基本的にまず現教育課程を紹介、解説していくこととする。その後 で、ボローニャモデルに則った新しい教育課程の中身が判明もしくは確定 している部分について補足する。 2.1.学科内容の規定8 ドイツ語でいうPublizistik- und Kommunikationswissenschaftという学問領 域は「新聞、ラジオ、テレビのような古典的なメディアばかりではなく新 しいメディア(オンラインコミュニケーション)によっても産出される公 共圏でのコミュニケーションを対象としている」9。つまり、IPMZの教育・ 研究活動は、広義のコミュニケーション学領域の中で、いわば万人にとっ てアクセス可能なコミュニケーションに関係する現象を解明する学問とい うことになる。 【専攻決定にあたっての学生への注意事項】 ジャーナリズム・メディア学科を専攻として決定するにあたって、注意 事項として以下の諸点が学生に提示されている10。 ・ジャーナリズム・メディア学科は哲学部内の主専攻としても副専攻とし ても履修可能 ・他の社会科学、文化科学領域と密接な関係にあるため、哲学部のすべて の他専攻、他学部の諸専攻とも組み合わせ可能(主専攻と副専攻の組み 合わせ) ・ラテン語習得に関する条件はない ・英語文献の重要性から良好な英語の知識が要求される ・基礎課程と本課程との二段階からなる ・ジャーナリズム論が経験的な社会科学であるため、データ処理や統計な ≥6 ボローニャ改革の導入決定以 来、チューリヒ大学でも従来の Lizenziat(修士に相当)単一の 課程から学士課程(Bachelor of Arts)と修士課程(Master of Arts)との二段階課程に移行す ることが決まっている。 ≥7 チューリヒ大学でも、理数学部、 経済学部では2004/05年の冬 学期にボローニャプロセスがス タートしており、哲学部と同時 に神学部、法学部でも新教育課 程への移行が開始される。 ≥8 以下 2 . 1 .の内容は主として 2005/06年冬学期新入生向け ウェッブ上の説明資料 http:// www.ipmz.unizh.ch/news/Studieren den-Info.pdfより引用。 ≥9 この定義は、北海道大学大学院 国際広報メディア研究科で講座 が設定している「公共伝達論」 に一致する。 ≥10 http://www.ipmz.unizh.ch/home. html?/studium/index.htmより引 用。 The Journal of International Media, Communication, and Tourism Studies No.5|023 江 口   豊 EG U C H IYu taka ≥11 http://www.ipmz.unizh.ch/ser- vice/dok_down/Lehrziele_IPMZ.pdf より引用。 ≥12 http://www.ipmz.unizh.ch/ser- vice/dok_down/Lehrziele_IPMZ.pdf より。 どの経験的な研究 方法 快递客服问题件处理详细方法山木方法pdf计算方法pdf华与华方法下载八字理论方法下载 に習熟する必要がある。 【中心的な研究対象】 すべての関与する演者、組織、 制度 关于办公室下班关闭电源制度矿山事故隐患举报和奖励制度制度下载人事管理制度doc盘点制度下载 とそれに影響を与える要因やプロセ スに配慮しながら、現代メディア社会におけるコミュニケーションと情報 に関わる、さまざまな条件、広がり、利用と影響が対象である。 【学習目標】 「大学教育が目標とするのは、問題を把握し、方法論に則って知見を獲 得するとともに、批判的に判断し、他者に伝えるという能力の獲得である。 それにより、自立した研究能力に到達させるのである」というチューリヒ 大学が提示する理想像が基本となっている11。 この学科での学修は具体的な職業教育と理解しているわけではない。む しろ、学生が授業から学ぶのは、 a)ジャーナリズム・メディア学の基礎的知識、指針となる知識、深化し た知識を獲得する b)経験的なメディア研究、コミュニケーション研究を計画し、遂行する という能力を得ることである。 2.2.各授業カテゴリー 【講義科目】 講義科目は以下のような分類に基づいた構造化が図られている。このう ち、A、B、Cの分類は、講義内容・テーマによって、ジャーナリズム・メ ディア学のマクロ、メゾ、ミクロという3つの研究対象レベルに照らし合 わせて想定されたものである。必修講義はジャーナリズム・メディア学の 基礎的な概念、方法などを指し、学修の初期に履修すべきものとされてい る。各学期ともに、A、B、C3つの分類の授業が量的にも質的にもバラン 024|国際広報メディア・観光学ジャーナル No.5 ジャーナリズム・メディア学のあるべき教育システム ―チューリヒ大学の例から― 12 江 口   豊 EG U C H IYu taka スよく配分されている。因みに、2005/06年冬学期では各カテゴリー10 コマ程度の講義が開設されている。 講義A:メディア体系論、メディア法、メディア構造論、メディア経済論 講義B:コミュニケーション研究、政治コミュニケーション論、組織コ ミュニケーション論、メディアマネージメント論 講義C:メディア内容論、メディア機能論、メディア受容論、メディア 効果論 必修講義:ジャーナリズム・メディア学概論、学問研究作業論、研究方法論 さらに、それぞれの講義について2つの追加的な範疇付けが添えられて いて、学生の便宜を図っている。 *学期末に筆記試験を申請、受験可能な科目 *当該テーマの領域の理解を深化させる科目(当該テーマ領域の基礎科 目の既修を前提) 【演習科目】 演習科目は基礎課程から博士論文執筆に至るまで幅広く展開されている。 研究初級演習:この演習授業は、経験的な研究方法への理論的、実践的知 識を伝授するものである。参加者は、それぞれの方法を徳的のテーマに 応用し、2学期間にわたり研究プロジェクトのすべてのステップを経験 し、研究レポートの形でその知識を記録する。 演習:講義科目が一方通行になりがちで、知識の伝授に集中するのに対し て、演習では議論を中心に位置づけ、自己の仮説を口頭発表および記述 表現で発することが必ず求められる。この点を学修規程にしたがって言 い換えるならば、「演習授業は、特定の問題領域や研究領域を体系的に取 り組むことに資するものであり、出席者の積極的な参加があって成立す るものである。」13 プロジェクト演習:2000年から開設されたものであり、体系的な修士論文 準備に特化した演習である。演習のテーマをみて、学生が自分の修士論 文のテーマに近いものを選択する。規定の単位数などを満たした学修の 最終段階にある学生を想定したもので、参加者には修士論文研究の計画 書を提出させ履修許可を与える。通常、プロジェクト演習を履修した次 の学期には修士論文を提出し、修了試験を受験することになる。 【インターンシップ】14 チューリヒ大学ジャーナリズム・メディア学科の授業は、経験的研究を 自立的に計画、遂行したり、批判的に評価したり、興味をもつ一般市民に それを伝える力を授けることを目的としている。したがって、職業上の実 践経験は、ジャーナリズム・メディア研究を補うという点で重要で、大い に薦めるべき補足的要素である。インターンシップには二つの利点が考え られている。 (1)職業の日常とコミュニケーション領域の実践面を見聞する ≥13 http://www.ipmz.unizh.ch/ser- vice/dok_down/Lehrziele_IPMZ.pdf より。 ≥14 http://www.ipmz.unizh.ch/home. html?/studium/index.htmおよび江 口(2006)8頁以下を参照のこ と。 The Journal of International Media, Communication, and Tourism Studies No.5|025 江 口   豊 EG U C H IYu taka ≥15 ドイツ語圏の大学では、何時 修了するかは学生自身が決定 し、その申請手続きを行う。 ≥16 http://www.ipmz.unizh.ch/ser- vice/dok_down/Pub_2-05.pdfを 参照。 ≥17 脚注16参照。 (2)人間的な接点と経験によって職業生活への移行を容易にする このような理由から、主専攻学生には職業実践(インターンシップ)を 薦めている。残念ながら学生数の激増により、インターンシップの受け入 れ先は学生自身で探すことになっている。 過去の必修制度下でのインターンシップ報告はIPMZ図書室に置かれて いる。必修制度内でのインターンシップの扱いには以下の規程がある。 *修士修了申請以前に10週間もしくは400時間の実習を行うこと15 *A4版用紙5ページから10ページの実習報告を作成し、研究所の担当 者に提出すること内容は、字実習先の企業組織、自身の活動に関する 客観的な記述、およびそれに関する積極的・批判的コメントを含むも のとする *実習報告には、労働証明書(職種によっては自身が作成した記事など) を添付すること *実習が認定されると、認定証が交付される 【コロキウム】 修士論文コロキウム16 このコロキウムは、修士論文に関連する問題を参加者全員で論議し、問 題設定、理論的な観点、研究デザイン、研究結果などを互いに認識するた めのものである。開催形態は通常集中講義式で毎週ではなく、学期中に数 回にわたって開かれる。修士論文を提出しようとする者は、論文提出先と なる教授のコロキウムに参加を義務づけられている。参加するためには、 *開催される前の学期末に開かれる準備会合に出席する *10頁程度の概要の内容が必要なレベルに達している という二つの条件を満たす必要がある。このコロキウムは研究部門ごとに 設けられる。 博士論文コロキウム17 このコロキウムでは、準備中の博士論文に関連する理論や方法が紹介さ れ、批判的に検証されるとともに、それぞれの研究の進め方について議論 する。参加者全員で博士論文執筆のリスクや副次的効果についても明らか にしていく。つまり、学問的なネットワークの張り方が不十分なままであ ったり、博士論文執筆中断、謝った期待などを未然に防ぐことも目的のひ とつである。この授業でのワークショップを通じて、個人の問題設定を時 間的にも十分に議論したり、各領域の専門家を招いて報告をしてもらい、 興味深い視点の提示を受けることもある。 コロキウムへの参加については、まず各研究部門のコーディネーターに よく問い合わせるよう注意が与えられている。修士コロキウム同様、6つ の部門、すなわち6名の教授ごとに開設され、定期的ではなく、随時開催 される。 026|国際広報メディア・観光学ジャーナル No.5 ジャーナリズム・メディア学のあるべき教育システム ―チューリヒ大学の例から― 江 口   豊 EG U C H IYu taka 【E-ラーニング】18 ドイツ語圏全般、そしてスイスでのジャーナリズム・メディア学への学 生もしくは学生予備軍の関心は高く、いずこの大学も学生募集で苦労する ことはない。統計によれば、1995年から2000年の五年間で学生数が実質 10倍になっているとの指摘もある19。しかしながら、こうした学生の集中 に対応するための人的資源には制約がある点は洋の東西を問わない。この ため、数年前からチューリヒ大学本部と同E-ラーニングセンターの財政 的・技術的援助を受け、IPMZでもE-ラーニングを長期的な視野で教育に 導入する試みを行っている。すでに日常化しているのは、オンライン上の 講義目録の提示、授業登録手続きであり、実験されているのが、ウェッブ 上での 教材 民兵爆破地雷教材pdf初中剪纸校本课程教材衍纸校本课程教材排球校本教材中国舞蹈家协会第四版四级教材 の提供および学習プラットフォームやフォーラムの立ち上げで ある。例えば、第1学期学生向けの最初の概論の講義では、 (1)講義そのものについてのオンラインフォーラム (2)オンラインでの課題練習のためのフォーラム (3)授業運営に関するフォーラム (4)(講師サイドからは見られることのない)学生たちだけの講義に関 するフォーラム の4つが設けられて、学生の便宜を図っている。 こうしたアイディアにより、協働促進型かつ問題出発型の学習を目指し ている。具体的には、一方でSYCOM(Learning System for an Introduc- tion to Communication and Media Studies)というIPMZ独自の学習補助 システムを、他方でDigital Repository of Shareable Learning Objects Intro- ducing to Communication and Media Studiesというスイス国内諸大学共 同の学習支援システムを構築中である。前者の学習システムは、ジャーナ リズム学のいろいろな領域や研究手法に一歩一歩導いてくれるもので、こ れにより、ジャーナリズム学での学問的な骨格を自ら習得できるというも のである。これに対して後者は、スイスヴァーチャルキャンパス(Swiss Virtual Campus)20というスイス連邦規模で設立・運営されているE-ラー ニング促進プロジェクトの予算措置を受けて、3年間の期間(2004年から 2006年)で開発中のものである。目標は、基礎過程2年間の学生向けの教 授資料、学習資料をデジタル化して蓄積し、参加大学が随時呼び出せるよ うにすることである。参加校として、リーダー役のIPMZの他に、ベルン 大学、フリブール大学、ルガノ大学、チューリヒ・ヴィンタートゥーア単 科大学、チューリヒ経済大学が挙げられている。蓄積される教材の基にな っているのは、当該分野の方法論や各論の入門であり、SYCOMの内容も 取り込まれている。さらには、講師陣からの援助も受けて、学習に対話的 な形態を促進する練習やツールも開発中である。 こうした努力の陰には、チューリヒ大学が2007年までに、大学の授業 全体の15%をオンラインで提供しようという野心的な目標があるからにほ かならない。 ≥18 http://www.ipmz.unizh.ch/home. html?/studium/index.htmおよび江 口(2006)参照。 ≥19 Marr/Pühringer 2003, S. 2. ≥20 http://www.virtualcampus.ch/dis- play.php?lang=2参照。 The Journal of International Media, Communication, and Tourism Studies No.5|027 江 口   豊 EG U C H IYu taka ≥21 http://www.ipmz.unizh.ch/home. html?/studium/index.htm参照。 ≥22 「全学生」とは副専攻の学生も 含む。 ≥23 http://www.ipmz.unizh.ch/home. html?/studium/index.htm参照。 2.3.カリキュラム構造 ジャーナリズム・メディア学の履修体系は、修士終了までで基礎課程と 本課程の二段階に分かれている。2003年冬学期制定の規定によれば、学生 に要求されることがら、いわば教育課程表にあたるものが、以下の一覧表 である。 【基礎課程】21 a)全学生向け必修講義22 第1学期および第2学期「ジャーナリズム論入門ⅠおよびⅡ」 この講義では、中心的な問題設定、対象、基礎概念、理論的なジャーナ リズム論の視点についての基礎知識が教授される。 b)主専攻学生のための必修講義 第1学期の「学問研究入門」という名前の練習コースが必修となってい る。これは概論入門の講義に付随したものである。さらに第1学期、第2 学期に設けられるそれぞれA、B二部構成の「経験的ジャーナリズム・メ ディア学方法論」も必修である。この授業は基礎課程第2回目の部分試験 の出題対象となっている。 概論入門の講義とそれに付随する練習コースの他に、主専攻学生は以下 のような講義を合計4つ履修することが義務づけられている。 *第1学期、第2学期:2つの異なる重点領域の講義を筆記試験を含め履修 する *第3学期、第4学期:2つの異なる重点領域の講義を筆記試験を含め履修 する さらに必修とされているのが、第3学期、第4学期の二学期にわたって 開設される「研究初級演習」である。この演習に参加するためには、第1 回目、第2回目の部分試験に合格している必要があり、演習の最後には実 践的な「研究レポート」と第3回目の部分試験(口頭試験)をそれぞれ提 出、受験しなければならない。部分試験に合格しなければ、本課程に進学 することはできない。不合格とされた場合には、1年後にもう一度だけ受 験の機会が与えられる。 【本課程】23 本課程は、いわば基礎課程の発展段階である。したがって、その部分的 な知識を深め、方法上の能力をさらに改善させる内容を含んでいる。すべ ては学修の最後に控えている修士論文執筆と修士学位請求のための試験へ の準備となるようにコンセプトされている。なお、基礎課程の修了試験に 合格しない限り、本課程での学修は認められない。不合格になった場合は 一度だけ次回の基礎課程修了試験を再度受験可能である。 具体的に本課程で履修すべきものとしては、講義、演習、プロジェクト 演習、コロキウムが挙げられる。講義科目は基本的に自由に選択すること ができる。ただし、異なる領域の最低3つの講義を履修する必要がある。 演習科目の場合、担当講師から始めに要求事項が明示されているが、授業 028|国際広報メディア・観光学ジャーナル No.5 ジャーナリズム・メディア学のあるべき教育システム ―チューリヒ大学の例から― 江 口   豊 EG U C H IYu taka 中の口頭発表と学期末のレポート(20頁程度)の二つの課題は必ず満たさ なければならない。演習の結果は成績評価をともなう。レポートに書き直 しが求められる場合は一度だけ書き直しが認められる。本課程では、イン ターンシップへの参加も薦められている。 本課程の修了は、修士学位請求のための論文提出、筆記試験、口頭試験 の合格をもって完了する。 【修士学位認定試験】 *修士学位認定試験の受験の前提条件 修士学位認定試験受験のためには、IPMZの事務室のみならず、哲学部 の事務でも必要な手続きを取らなければならない。また、それまでに履修 証明書などを提出する必要がある。また、申請にあたっては、審査教授を 決定しなければならない。 各部門の教授から、修士修了申請手続きにあたっての細かな規定がある。 例えば第1部門のヤレン教授の場合以下のような項目に関する規定を公開 している24。 1 修士修了試験:教授の選択 2 第1部門の場合:修士論文準備学生向けコロキウムへの参加手続き 3 コンセプト:期待されているもの 4 修士論文:要求されるもの 5 提出:注意すべきことがら 6 修士学位試験の申し込み *修士学位試験25 本試験は4時間の筆答試験と各45分間の2つの口頭試験とからなる。 *口頭試験は、修士論文指導教員である教授(もしくは講師)の下で受け なければならない。 *筆答試験と2つ目の口頭試験は、指導教員以外の2人の異なるIPMZの教 授の許で受けなければならない。 *3つの試験の中、講師の下で受験できるのは一つだけである。同時に受 験する他の二つの試験はテーマ領域の異なる他の部門の異なる2人の教 授の下で受験しなければならない。修士学位試験(筆答、口頭ともに) は、試験審査員である教授の演習を受講していることを前提とする。修 士論文は講師を指導教員として執筆してもよいが、当該部門の修士論文 準備学生向けコロキウムで紹介されていなければならない。 *試験のテーマ 試験のテーマについては、審査教授(講師)と事前に打ち合わせなけれ ばならない。試験テーマは履修した講義や演習、参考文献などを総合し て設定される。口頭試験の1つについては、3つのテーマ領域を選択す る。3日間で作成すべき筆答試験と4時間にわたる筆答試験では問われる テーマはそれぞれ1つである。 ≥24 http://www.ipmz.unizh.ch/ser- vice/dok_down/lizarbeit_abt1.pdf より引用。 ≥25 主専攻学生対象の規定のみを紹 介する。副専攻学生の場合は要 求されるものが少なくなる。 http://www.ipmz.unizh.ch/ser- vice/dok_down/lizinfo.pdfを参照。 The Journal of International Media, Communication, and Tourism Studies No.5|029 江 口   豊 EG U C H IYu taka 3|教育課程の設計・運営 3.1.教員の授業負担 教授については、一学期あたり5コマ程度の授業負担が求められている。 これに算入されるのは、 (1)講義 (2)演習 (3)研究初級演習もしくはプロジェクト演習 (4)修士論文コロキウム (5)博士論文コロキウム の5種類の授業である。終身雇用の保証を受けていないスタッフの実際の 授業負担は、平均すると一学期あたり2コマ程度である。 また、教授の場合、12学期教育活動を継続した後に必ず1学期間の研究 学期、いわゆるサバティカルをとることが認められている。 3.2.科目内容の決定 授業科目の内容・テーマについては、前年度の段階で教授陣と研究所運 営部(研究所長と1名の担当助手)が審議して決定する。まず、各部門内 部でスタッフが授業の形式と内容について提案を行う。部門の長である教 授がこれを総括、チェックした上で上記のメンバーによる会議に各部門の 提案を持ち寄る。そこで配慮される点は、 *講義、練習、演習などで必修科目がカバーされているか *特に講義については、授業科目分類で紹介されたA、B、Cの三つの領 域に均等に分散しているか *研究プロジェクトの多寡などの個別の事情に配慮した上で、授業負担 が公平であるか などである。 こうして決定された授業科目の総体について、上記のメンバーは再度検 討を加え、学会・研究活動などの知己を通じて、研究所スタッフの提供す る授業に欠けている素材・領域の授業を提供できる人物を選択し、外部講 師として授業の委嘱をする。2005/06年冬学期には10名の外部講師を委 嘱している。外部講師との連携は緊密である。各学期授業開始前に、かな らず説明会を開催し、研究所での新規の事項などは丁寧に説明している。 また、最近力を入れているのは、授業の質の評価であり、外部講師といえ ども、授業の目標、講師が提供する内容、学生に要求することがらなどに ついて、かならず学生に明示するよう求めている。学期末には、研究所共 通の書式で学生への授業評価をさせるよう求めているが、その内容を外部 講師自身がA4一、二枚程度にまとめて提出するよう要請している。つま り、学生が記した授業評価の一次資料自体は外部講師自身に託されるシス テムである。 こうした授業に加えて、通常毎学期滞在する客員教授1名(語学の問題 があるためか、主にドイツ、オーストリアの大学の同種の研究所の教授・ 講師クラス)が3つ程度の授業(2005/06年冬学期にはザルツブルク大学 030|国際広報メディア・観光学ジャーナル No.5 ジャーナリズム・メディア学のあるべき教育システム ―チューリヒ大学の例から― 江 口   豊 EG U C H IYu taka のLuger教授)を担当し、内容にもう一段の多彩さを加えている。この制 度は IPMZの教授に研究学期(いわゆるSabbatical)が認定された場合に、 貴重な教授陣の補強という役割も果たしている。 すべてを合算して、2005/06年冬学期の場合、授業数の総計は72コマ に上る。 4|IPMZの財政システム IPMZの予算は、大学から配分される経常予算とスイス国立科学振興財 団の助成を中心とする学外研究資金によって運営されている。大学の経常 予算には大きく分けて三種類ある。図書や物品をまかなう予算枠、教授を 除く研究所スタッフや外部講師の謝礼をカバーする教育予算、そして、教 授などの終身雇用を保証されたスタッフとそうでないスタッフ(その多く が通常50%から90%程度の範囲で本来の本給全額は支給されていない)26 の人件費の枠である。因みに客員教授の滞在費、旅費、講師謝礼は別枠で 支給される。 なお、新任の教授枠が認められて、着任する場合は一時金として特別に 一定金額が上乗せされる。先に触れた学生数の影響で、今後も教授ポスト とそれにともなう部門の増設が検討中もしくは申請中とのことである。 研究活動を支える予算としての外部資金は、さきに挙げたスイス国立科 学振興財団の助成金のように評価・選考を経て認定されるものと、教授な どの個人的な人脈で確保される研究プロジェクト資金などがほぼ半分づつ を占めていて、総額としては相当額が確保されている。 5|ボローニャモデルによる教育課程 5.1.ボローニャ改革の趣旨27 教育体制上の最大の変化は、日本の大学の修士にほぼ対応する従来の Lizentiatではなく、ヨーロッパ連合圏でできるだけ共通の大学制度に改革 すべく学士、修士の課程へと2004年冬学期からスイスの諸大学でも切り 替えが行われつつあることである。これは、ヨーロッパ連合加盟国など (スイスも参加)29カ国の文部行政所轄の大臣会議が1999年にイタリアの ボローニャで、決議、宣言されたことに基づく措置である。その眼目とし ては以下の四点があげられているが、最大の目的は、高等教育に関するヨ ≥26 Wirth et al.(2005)によれば、 ドイツ語圏の諸大学での研究活 動の約 80%、教育活動の約 70%が教授以外のスタッフによ って担われている。こうした助 手・講師クラスは、通常博士学 位取得後のスタッフを中間部 門、それ以前のスタッフを下位 部門と呼び、各研究分野の後継 者とみなされているが、かなら ずしも全員が大学に残るわけで はない。ジャーナリズム・メデ ィア学部門でも、助手などのポ ストから経済界に転出するケー スは珍しくない。 こうしたスタッフの待遇などに 関しては問題も多く、現在各国、 各学会単位でいろいろな改善策 が実施、検討されているとのこ とである。 ≥27 江口(2006)参照。 The Journal of International Media, Communication, and Tourism Studies No.5|031 江 口   豊 EG U C H IYu taka ≥28 チューリヒ大学ホームページか ら引用。 http://www.studienreform.unizh. ch/reform/studinfo.html ≥29 http://www.ipmz.unizh.ch/news/ Studierenden-Info.pdfを参照。 ーロッパ共通のいわば「統一規格」を作り、高等教育の立地競争(当然ア メリカを意識している)に対処しようとすることである28。 1 分かりやすく、比較の容易な大学終了資格の体系を確立 2 大学の終了資格に学士、修士の二段階を設置 3 成績単位システムの導入 *ECTS(European Credit Transfer and Accumulation System)ポイント で学士課程で180ポイント、修士課程でさらに90から120ポイン ト取得 *ECTS 1ポイントで30時間の学修を前提とする 4 相関する授業単位、学修単位をモジュールとする 5 成績の証明としてモジュールの修了を認定する 6 ヨーロッパ圏内の学生の移動の促進奨励 5.2.IPMZでの対応 こうした基本的指針に則って、IPMZでは、すでに以下のような修学モ デルを作成し、準備にあたっている29。 *2006/2007年冬学期以降の学習課程 ジャーナリズム・メディア学科の教育課程は二段階の学修プログラムか らなる。 (1)社会科学の枠内での学士(Bachelor of Arts)期間:6学期 (2)社会科学の枠内での修士(Master of Arts)期間:4学期 *主専攻学士課程アセスメント段階 第1学期および第2学期まで(従来の基礎課程にほぼ対応) ★『ジャーナリズム・メディア学基礎』モジュール ★『方法論基礎』モジュール ★『学問研究作業』モジュール ★『選択必修講義』モジュール 第3学期から第6学期まで ★『方法論の展開』モジュール ★『重点』モジュール ★『選択講義』モジュール ★『内部インターンシップ』モジュール (大学の教育活動への参加を認定しようとするもの) ★『リベラルアーツ』モジュール(自由選択単位に相当) *学士課程修了者に想定される職業領域 以下に述べる部門での実施活動および管理活動: ★応用的なメディア、コミュニケーション、世論、マーケティング調査 ★コミュニケーション機能の評価 ★組織コミュニケーションと広報 ★メディアマネージメント ★コミュニケーション、メディア領域での人材養成・教育 032|国際広報メディア・観光学ジャーナル No.5 ジャーナリズム・メディア学のあるべき教育システム ―チューリヒ大学の例から― 江 口   豊 EG U C H IYu taka *修士課程 ★導入モジュール ★重点モジュール ★修士論文 ★モジュールの枠を超えた試験 *修士課程修了者に想定される職業領域 以下に挙げるような領域での企画、評価、組織運営部門: ★研究および教授 ★応用領域のメディア研究、コミュニケーション研究、世論研究、マー ケティング研究 ★メディアコンサルティング、コミュニケーションコンサルティング ★組織コミュニケーション/私企業および公共部門の広報 ★メディア、コミュニケーションマネージメント 6|結びに代えて 本報告では、ドイツ語圏ヨーロッパにおけるジャーナリズム・メディア 学の大学教育の実例をスイス連邦、チューリヒ州立チューリヒ大学を例に 子細に紹介した。そこには学生増という追い風があるにせよ、学問体系に 忠実に対応し、充実した教授以下の講師陣による多彩な授業の展開と、そ れを堅実に積み重ねて人材養成に努力する組織の人材育成への熱意がある。 江口(2006)に報告した通り、IPMZの卒業生は順調に社会からの需要に 応えており、その評価も高いことが伺える。高度専門職業人養成という課 題を抱えた日本の文系大学院にとって、理論研究、理論教育の意外なほど の重要性を再認識せずにはいられない。 (2007年1月10日受理 2007年3月15日採択) ≥ 江口 豊(えぐち ゆたか) 北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授 参考・引用文献 Bonfadelli, H./ Jarren, O. / Siegert, G. (2005): Einführung in die Publizistikwissenschaft. 2. Auflage. Hauptverlag, Bern / Stuttgart / Wien. Marr/Pühringer (2003): Trendsetter oder Drückeberger? Studierendenbefragung. Schade, E. (hrsg.)(2005): Publizistikwissenschaft undöffentliche Kommunikation. UVK, Konstanz. Wirth, W./ Matthes, J. / Mögerle, U. / Prommer, E. (2005): Traumberuf oder Verlegenheitslösung? In: Publizistik, Vol. 50, Heft 3, 320-343. 江口 豊(2006):チューリヒ大学ジャーナリズム・メディア学教育研究の現状 北海道大学『大学院国際広報メディア研究科・言語文化部紀要』51、187-202。 The Journal of International Media, Communication, and Tourism Studies No.5|033 江 口   豊 EG U C H IYu taka 参考資料 A 過去5年間学位取得者数 B 時間割の例(2005年夏学期および2005/06年冬学期から) 〈添付の2005年度授業一覧ファイルを参照してください〉 034|国際広報メディア・観光学ジャーナル No.5 ジャーナリズム・メディア学のあるべき教育システム ―チューリヒ大学の例から― 修士 博士 2001年 7名 1名 2002年 28名 3名 2003年 51名 3名 2004年 77名 6名 2005年 82名 3名 *各年度は、当該年の春、秋の修了者の合計を示す。 � � � 江 口   豊 EG U C H IYu taka The Journal of International Media, Communication, and Tourism Studies No.5|035 � � � � 江 口   豊 EG U C H IYu taka 036|国際広報メディア・観光学ジャーナル No.5 ジャーナリズム・メディア学のあるべき教育システム ―チューリヒ大学の例から― � � � � �
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