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ブルーム連続鋳造における各種偏析の生成機構

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ブルーム連続鋳造における各種偏析の生成機構 1. 緒言 ブルーム連続鋳造で棒線用鋼材を製造する際,V偏析や 中心偏析が鋳片断面中央部に生成し,冷間押出し時のシェ ブロンクラック 1)や冷間伸線時の断線 2)を引き起こすな ど,棒線材の冷間加工性を著しく劣化させる。このため, ブルーム連続鋳造で冷間加工性に優れた棒線材の製造に は,連続鋳造で中心偏析やV偏析の生成防止が極めて重要 である。これらの偏析の抜本的防止には,中心偏析やV偏 析の生成機構を解明し,それに基づき本質的な対策を考案 することが重要であるが,必ずしもそれらの生成機構は十 分...

ブルーム連続鋳造における各種偏析の生成機構
1. 緒言 ブルーム連続鋳造で棒線用鋼材を製造する際,V偏析や 中心偏析が鋳片断面中央部に生成し,冷間押出し時のシェ ブロンクラック 1)や冷間伸線時の断線 2)を引き起こすな ど,棒線材の冷間加工性を著しく劣化させる。このため, ブルーム連続鋳造で冷間加工性に優れた棒線材の製造に は,連続鋳造で中心偏析やV偏析の生成防止が極めて重要 である。これらの偏析の抜本的防止には,中心偏析やV偏 析の生成機構を解明し,それに基づき本質的な対策を考案 することが重要であるが,必ずしもそれらの生成機構は十 分に明らかにされていない。 これまで,連続鋳造や造塊法での鉄鋼の凝固時のV偏析 や中心偏析の生成機構について多くの研究がなされ,それ らについて種々の説 3-17)が提案されている。 V偏析の生成については,等軸晶の沈降,堆積により凝 固界面前面で濃化溶鋼が捕捉されて生成するとした説 3-6) や凝固収縮,バルジング等でのサクションで等軸晶帯内に 発生した辷り部に濃化溶鋼が集積してできるとの説 7,8),樹 間溶鋼への溶質濃化による溶鋼密度の増大で,濃化溶鋼が 凝固界面に沿って沈降した一部が,凝固界面に捕捉されて できるとの説 9,10)が提案されている。上記以外にも,等軸 晶帯内の引張りの熱応力による一種の内部割れ説 11)や凝 固収縮によるサクションで樹間の濃化溶鋼が断面中心部へ 引き込まれて生成するとの説 12,13)や中心部に存在する凝 固収縮によるサクションフローが,周辺部の樹間溶鋼を引 き込む説 14)など様々な説が提唱されている。 一方,中心偏析の生成については,凝固収縮流動 15)や凝 固シェルにバルジング変形やその矯正 15,16)による残溶鋼 の流動が原因とする説,さらにデンドライトのブリッジン グが原因との説 17)も提案されている。また,前述のV偏析 生成機構のうち周辺部からの樹間溶鋼の引き込みをともな う説 9,10,12-14)も,中心偏析の生成機構の一つの説と見なさ れる。 しかしながら,種々提案されたV偏析の生成機構は,塩 化アンモニウム水溶液を用いた低温模型実験や,凝固区間 が狭い小型鋼塊を用いた小規模な模擬実験の結果より提案 されたものや,造塊法で高合金鋼の大型鋼塊を鋳造する際 のV偏析の生成機構について提案されたものである。その ため,これらの説は,凝固区間が鋳造長手方向に10数mか ら数10mに及ぶ商用規模のブルーム連続鋳造でのV偏析の 生成機構にそのまま適用できるとは限らない。また,等軸 晶凝固を前提とした説 3-8,11-13)では,柱状晶凝固時のV偏 析の生成機構を説明できない。 また,従来提案された中心偏析生成機構も,以下に述べ るように中心偏析の生成機構や中心偏析生成にともなう事 象を十分説明できていない。ブリッジング説 17)は粗大な 分岐柱状晶がブリッジングを形成する場合を除き中心偏析 の生成機構を説明できない。単純に凝固収縮流動やバルジ ングによるクレーター先端での溶鋼移動が中心偏析の原因 論 文 ブルーム連続鋳造における各種偏析の生成機構 磯部 浩一 1)* Formation Mechanisms of Several Kinds of Segregation on Continuous Casting of Bloom Kohichi Isobe Synopsis : Formation mechanisms of several kinds of segregation (V segregation, Centerline segregation, negative segregation near center part of bloom section) on continuous casting of bloom are investigated by some examinations on formation behavior of each segregation and distribution of solute element on cross section of bloom and using some analyses. As the results of these examinations and analyses, these formation mechanisms are clarified as follows. V segregation is gradually formed by flow of interdendritic liquid caused by negative gradient of pres- sure resulted from shrinkage flow existing on center side of cross section of bloom. The shrinkage flow on solidification proceeding to crater end forms the centerline segregation and the negative segregation near center of cross section of bloom, to promote mass transfer of solute in mushy zone, in vertical direction to solidification interface toward to center of cross section. Key words: centerline segregation; V segregation; negative segregation; formation mechanism; continuous casting; bloom. 平成24年2月23日受付 平成24年3月29日受理(Received on Feb. 23, 2012; Accepted on Mar. 29, 2012) 1) 新日本製鐵(株)技術開発本部室蘭技術研究部(Technical Development Bureau, Muroran R&D Lab., Nippon Steel Corporation, 12 Nakamachi Muroran Hokkaido 050- 8550) * Corresponding author : E-mail : isobe.kohichi@nsc.co.jp DOI : http://dx.doi.org/10.2355/tetsutohagane.98.405 鉄 と 鋼 Tetsu-to-Hagané Vol. 98 (2012) No. 8 17 405 とする説も 15,16),鋳片の厚み中心部に誘起される残溶鋼の 流動が,溶質濃化を促す機構やどのように中心偏析を形成 し,悪化させるかや,中心偏析の周囲に負偏析帯が形成さ れたり,等軸晶帯が拡がるとその負偏析領域が断面周辺側 に拡大する理由を十分かつ合理的に説明できない。 例えば,連鋳クレーターエンド近傍の溶鋼流動 18)や鋼塊 の熱対流消失後のクレーター内の溶鋼流動 19)の計算結果 では,凝固界面近傍では凝固収縮で流れは凝固界面へ向か い,断面中心部へ向かう流れは存在しない。このような溶 鋼の流動パターンだけに着目すると凝固界面近傍の濃化溶 鋼は鋳片断面中心部へ供給されず中心偏析は生成しないこ とになる 20)。 以上述べたように,従来のV偏析や中心偏析の生成機構 は,実際のブルーム連続鋳造におけるこれら偏析の生成挙 動やそれらの生成にともなう事象,さらに中心偏析の周囲 の負偏析の生成機構や生成挙動に対し十分合理的な説明を 与えていない。 そこで,本研究では,実際のブルーム鋳片でV偏析や中 心偏析およびその周囲の負偏析の実態や,鋳片断面内の溶 質濃度分布について調査したり,ストランドクレーター内 の溶鋼流動を鋲打ち試験で可視化する実験を行い,それら の結果からブルーム連続鋳造でのV偏析と中心偏析やその 周囲の負偏析の生成機構を新たに提案した。さらに,未凝 固鋳片に大変形を加え,残溶鋼をメニスカス側へ絞り出し ながら,鋳片を噛み止める実験を行い,その際の逆V偏析 や負偏析の生成挙動を調査し,提案した各生成機構からの 予測結果と実験結果の一致を確認し,今回提案した各偏析 の生成機構の妥当性を検証した。 以上に加え,溶鋼流動下の凝固時の流動速度と負偏析度 (実効分配係数)に関する実験式 21)と溶鉄に浸漬した丸鋼 の回転溶解実験の結果 22)に基づき,鋳片断面中心部の凝固 収縮に起因する残溶鋼の流動速度とその流速での凝固界面 に直交方向の物質移動速度を推定した。さらに,上記物質 移動速度と対流速度の比(Pe数)を,鋳型内電磁攪拌の場 合と対比し,凝固収縮流動が上記物質移動の促進により負 偏析の生成や残溶鋼への溶質濃化におよぼす影響について 考察した。 2. 実験方法および調査方法 本研究では,Table 1に主仕様を示す室蘭No.2,No.3CC の3種類のサイズの鋳片を用いて各種調査,実験を実施し た。最初に等軸晶帯生成領域とV偏析の生成挙動の関係を 明らかにするため,機械構造用鋼S48Cの大断面ブルーム 鋳片(350mm厚×560mm幅)から,縦断面エッチプリント (EP)を採取し,等軸晶帯の厚みとV偏析の生成領域の関 係等について調査した。調査材の成分と鋳造条件をTable 2 に示す。 また,本研究では,固液共存相の流れがダルシー則に従 うと考え,その場合に導かれる幾つかの原理を利用して, 鋲打ち試験で連鋳鋳片の固液共存相内における樹間溶鋼の 流れ(流線)を可視化し,鋳片凝固時の流線に直交する等 圧線の方向や流れを駆動する圧力勾配の方向を明らかにし た。鋲打ち試験は室蘭No.2ブルームCCを用いて実施した。 固液共存相の流れがダルシー則に従う場合に導かれる原 理を以下に説明する。簡単化のために,固液共存相の密度 を一定と仮定し,温度変化による密度変化も無視する。2 次元流れがダルシー則に従う場合,直交する2方向の流速 と圧力勾配の関係は,(1),(2)式で記述され,その場合, 連続の式 (3)式は自動的に満足される。また,(6),(7)式 で定義される流れ関数を導入した場合も連続の式は自動的 に満足される。また,流線の定義式(4)式から導かれる(5) 式と(9)式の一致は,流れ関数一定の線は流線であること を示す。さらに,圧力の勾配と流れ関数の勾配ベクトルの 内積は0になる((10)式)ため,等圧線と流れ関数一定の 線(流線)は直交する。 Table 1. Major specifications of Muroran No.2 and No.3 BL-CC. Table 2. Chemical compositions and casting conditions of examined large section blooms on formation behavior of V segregation. (S48C, 350mm×560mmBL) 鉄と鋼 Tetsu-to-Hagané Vol. 98 (2012) No. 8 18 406 〈ダルシー則〉 (∂P / ∂x) = -(με / k)u (1) (∂P / ∂y) = -(με / k)v (2) 〈連続の式〉 (∂u / ∂x)+(∂v / ∂y) = 0 (3) 〈流線〉 dx / u = dy / v (4) すなわち -vdx + udy = 0 (5) P:圧力,u, v:流速(x, y方向),μ:粘性係数, ε:空隙率(液相率),k:透過係数 〈流れ関数:Ψ〉 u = (∂Ψ / ∂y) (6) v = -(∂Ψ / ∂x) (7) (∂u / ∂x)+(∂v / ∂y)=(∂ 2Ψ / ∂xy)+(∂ 2Ψ / ∂xy) = 0 (8) dΨ = (∂Ψ / ∂x)dx + (∂Ψ / ∂y)dy = -vdx + udy = 0 (9) 〈流線と等圧線の関係〉 ∇P・∇Ψ = (∂P / ∂x,∂P / ∂y)・(∂Ψ / ∂x,∂Ψ / ∂y)   = (με / k)u・v-(με / k)v・u = 0 (10) 以上の原理より,何らかの方法で固液共存相内の流線や 流れの方向を可視化できると,その流れの駆動力である圧 力勾配の向きや方向も特定できる。 本研究では,Fig.1に示す形状の直径4.3mmφ,長さ 150mmのSCM440線材を焼入れ,硬度を高めた上,溶射で その表面全体に厚み100μmのFeSをコーティングした鋲 を自作して鋲打ち試験に用いた。この鋲を凝固途中の鋳片 に打ち込み,残溶鋼との接触で鋲の表面から周囲へ流出し たFeSの軌跡をサルファープリント(SP)で検出して固液 共存相内の流れを可視化した。上記の鋲を用いた場合,低 融点のFeSを鋲全面に溶射しているため,残溶鋼の存在位 置で,トレーサーのFeSと溶鋼が確実に接触し,容易にFeS が周囲へ流出して,残溶鋼の流動を確実に可視化できる。 しかも,EPMA等を用いなくても,SPで簡便にFeSの流出 軌跡を現出できる。 また,室蘭No.3CCで鋳造した,350mm厚×560mm幅の 大断面ブルーム鋳片や240mm厚×263mm幅の中断面ブ ルーム鋳片の断面内,もしくはそれら鋳片を分塊圧延した 162mm角の鋼片の断面内のC濃度分布は,以下の方法で調 査した。5mmφのドリルを用いて,鋳片または鋼片の表層 からそれらの厚みまたは幅中心まで,厚みもしくは幅方向 に切り粉を採取し,それらを化学分析して断面内のC濃度 分布を調査した。さらに上記調査では等軸晶帯の分布とC 濃度の分布の関係を把握するため,鋳片あるいは鋼片横断 面のEPを採取したサンプルでC濃度の分布を把握した。 本研究では,今回提案したV偏析や中心偏析およびそ の周囲の負偏析の生成機構の妥当性の検証を目的に,室 蘭No.2CCにて未凝固鋳片に大圧下を加え,残溶鋼を上流 側に絞り出す試験も実施した。本試験では3台の矯正機の うち2台を改造し,V,H2段のカリバーロールでそれぞれ 1段当たり約80mmから120mm圧下したり,220mm角の中 断面ブルーム鋳片を2段の圧下で162mm角まで成型でき るよう改造した。未凝固圧下の試験では1段もしくは2段 の大圧下で残溶鋼を連続的にメニスカス側へ絞り出しなが ら引き抜きを停止し,そのまま凝固させる噛み止め試験を 行った。未凝固大圧下の実験に用いた圧下装置の模式図を Fig.2に示す。本試験では,圧下装置で圧下後の鋳片と噛み 止め部の上流側の鋳片からサンプルを採取してSPやEPで 逆V偏析や負偏析の生成状況を調べ,残溶鋼の絞り出し流 動と各偏析の生成挙動の関係を調査した。また,大圧下後 の鋳片サンプルで,前述と同様ドリル採取した切り粉の化 学分析により断面内のC濃度分布を調査し,サンプル内の 負偏析の生成範囲を調べ,噛み止め位置での断面内の流動 可能領域との大小関係を把握した。 3. 実験,調査結果および考察 3・1 V偏析の生成挙動と凝固組織の関係 最初にS48Cの大断面ブルーム鋳片のEPで調査した, 鋳片上面側(L面側)と下面側(F面側)等軸晶帯(EAZ: Equi-axed crystal zone)の厚みとV偏析の生成領域との関係 をFig.3,4に示す。調査した0.48%C鋼は難等軸晶化鋼種の ため等軸晶帯厚みのバラツキも大きい。鋳片L面側で等軸 晶帯の厚みが20mm以上ある場合は,L面側の等軸晶帯の 厚みとV偏析が生成する領域の鋳片L面,F面側の限界(V 偏析帯厚み)はほぼ一致する。一方,鋳片F面側では等軸晶 帯とV偏析帯の厚みは必ずしも一致せず,F面側では等軸Fig. 1. Overview of FeS coated rivet for rivet driving tests. ブル ムー連続鋳造における各種偏析の生成機構 19 407 晶帯の厚みが,V偏析帯の厚みを上回ることが多い。また, 厚み中心まで柱状晶が発達した場合は,厚み中心から厚み 方向片側約20mmの範囲にV偏析が生成していた。等軸晶 が生成した場合はL面側等軸晶帯の厚みが増大すると,鋳 片L,F面側両方でV偏析の生成領域は拡大し,鋳片L,F 面側へ最大約70mmの範囲でV偏析の生成が認められた。 柱状晶凝固のように,鋳片中心部の狭い領域でV偏析が 生成する場合は,最終凝固部の凝固収縮で一気にV偏析が 生成する可能性がある。しかし,等軸晶凝固で厚み中心か ら厚み方向最大70mmの広い範囲に生成するV偏析は,厚 み中心部と周辺部では凝固タイミングは大きくずれるた め,クレーターエンド近傍での凝固収縮流動で片側70mm もの広範囲でV偏析が一気に生成するとは考えにくい。 前述したように,今回の調査では鋳片L,F面側のV偏析 帯厚みは鋳片L面側の等軸晶帯の厚みとほぼ一致した。こ のことは,湾曲型CCでは自由晶である等軸晶が徐々に沈 降,堆積し,ほぼ鋳片上面側柱状晶の先端まで堆積して, ほぼ未凝固部に等軸晶の充填構造が形成された段階から, V偏析の生成が活発化することを示唆すると考えられる。 3・2 固液共存相内の残溶鋼流動可視化結果 FeS溶射鋲を220mm角のブルーム鋳片に打ち込んだ箇 所の鋳片縦断面SPをFig.5に示す。本SPでは鋳片周辺部か ら厚み中心部へ,かつ,最終凝固部へ向かう残溶鋼の流動 の流線が鋲表面から溶出したFeSの軌跡として現出されて いる。また,本SPには同時にV偏析を形成するストリーク も観察され,このストリークの方向とFeSの流動方向は一 致している。このことは,ブルーム連続鋳造でのV偏析は, 鋳片周辺部の樹間の残溶鋼が最終凝固部方向へ流動して形 成されることやその流動を駆動する圧力勾配が,流線に沿 う方向に存在することを示している。未凝固部の液相率が 高いと,溶出したFeSや周囲より流入した濃化溶鋼は液相 内の混合拡散により周囲に分散し,それらの流動の軌跡は 凝固後に観察できない。このことを考えると,V偏析のス トリークは,凝固がある程度進行し,固液共存相の流動性 が低下,液相が均一に流動できない状態になって生成した と推定される。 V偏析を生じさせる圧力勾配は,鋳片断面中心側に存在 し,凝固収縮により誘起される最終凝固部へ向かう残溶鋼 の流動に起因すると推定された。この推定の妥当性を検証 Fig. 3. Relation between thickness of L side EAZ (Equi-axed crystal zone) and L/F side thickness of V segregation zone. (S48C (0.48%C), 350mm×560mm BL) Fig. 4. Relation between thickness of F side EAZ (Equi-axed crystal zone) and L/F side thickness of V segregation zone. (S48C (0.48%C), 350mm×560mm BL) Fig. 2. Overview of experimental apparatus of continuous squeezing and machine stop tests. 鉄と鋼 Tetsu-to-Hagané Vol. 98 (2012) No. 8 20 408 する目的で,未凝固鋳片を圧下して残溶鋼を鋳片の引き抜 き方向とは逆のメニスカス側へ絞り出し,その鋳片断面中 心部に存在する溶鋼流動に起因する圧力勾配が樹間溶鋼を 引き込み,逆V偏析を生成させるかについて調査した。具 体的には室蘭No.2CCにて,S48Cの220mm角未凝固鋳片を 約1.1~1.3m/minで連続的に引き抜きながら,Fig.2の圧下 装置で1段もしくは2段の圧下を加え,残溶鋼を連続的に メニスカス側へ絞り出しながら,鋳片を噛み止め,そのま ま凝固を完了させた。噛み止め部近傍の鋳片から縦断面の SPとEPを採取し,残溶鋼の流路周辺で逆V偏析の有無を 調査した。 Fig.2のHロール1段で未凝固鋳片を大圧下しながら噛み 止めた場合の鋳片縦断面SPの1例をFig.6に示す。本SP中 央部の黒い部分が,絞り出された残溶鋼の流路であり,残 溶鋼は白矢印で示した方向へ絞り出された。本図では残溶 鋼の流路周辺部に逆V偏析が確認でき,断面中心部の残溶 鋼の流動により流路の周辺部でV偏析の場合と同様に周辺 部から断面中心側,かつ下流側へ向かう圧力勾配が生じそ の方向にストリークが形成されることが確認された。 NH4Cl水溶液を用いた凝固サクションの冷間模型実験 で,人工的なサクションで固液共存相の周辺部から下流側 の排出孔へ斜めに向かう流れが誘起されており 14),鋲打ち や噛み止め試験の結果はこれと同様な現象と判断される。 3・3 ブルーム連続鋳造におけるV偏析生成機構 鋳造長手方向に凝固範囲が広いブルーム連続鋳造で特 に,凝固組織が等軸晶化し,鋳片断面内でV偏析の生成範 囲が広い場合のV偏析の生成機構は,前述の調査,試験結 果から,以下のようにまとめられる。 ブルーム連続鋳造時凝固組織が等軸晶化した場合は,断 面中心部の凝固サクションに起因する鋳片断面中心部の残 溶鋼の流動により,周辺部から鋳片長手方向に斜めに中心 部へ向かい低下する圧力勾配が生じる。その結果,樹間の 残溶鋼がこの圧力勾配に基づき流動を繰り返す結果,V偏 析のストリークが発達し,鋳片断面内で広範囲にV偏析が 形成される。本V偏析の生成機構を,後述する中心偏析と その周囲の負偏析の生成機構とともにFig.7に模式的に示 す。 一方,柱状晶凝固の場合は,Fig.3,Fig.4に示すようにV 偏析の生成は鋳片断面内の狭い領域に限定される。この理 由は以下のように考えられる。等軸晶は自由晶で,結晶の 充填構造もルーズなため固液共存相の内の圧力損失が少な いのに対し,柱状晶凝固では凝固組織が周辺部の凝固シェ ルに固定され,かつ鋳造方向に直角に密に発達するため, 流動時の圧力損失が大きい等で圧力勾配が上流側で断面周 辺側が凝固する際には小さくなり易い。このため,柱状晶 凝固時は,断面中心部の限定された範囲でのみ樹間溶鋼の 流動が起き,鋳片断面中心部の限定された領域でのみV偏 析は生成すると推察される。 3・4  ブルーム連続鋳造における中心偏析および中心部の負 偏析の生成機構 スラブ鋳片の中心偏析は凝固収縮に起因するサクション 流動 15)や凝固シェルのバルジングやその矯正 15,16)による 残溶鋼の流動が生成原因であることが明らかにされてい る。しかし,凝固収縮流動やバルジングとその矯正での残 溶鋼の流動がどのように中心偏析の形成に関与するかにつ いては十分に言及されてこなかった。また,その周囲に生 成される負偏析の生成機構についても十分解明されていな い。本研究では連鋳鋳片の中心偏析の周囲に大半のケース で負偏析が形成されることに着目し,中心偏析とその周囲 に形成される負偏析の生成機構についても検討を加えた。 S48Cの240mm厚×263mm幅のNo.3CCの中断面ブルー ム鋳片で,断面内のL,F面側で厚み方向(図中の凡例“L” と“F”)と幅方向(凡例“Side”)に5mmφのドリルで切り 粉を採取し,化学分析して,断面内厚み,幅方向のC濃度 分布を調査した結果をFig.8に示す。この鋳片では鋳型内 電磁攪拌で強攪拌した影響で,鋳片表層部に負偏析が存 在し,また,表層負偏析生成の影響でその負偏析の内側で はC濃度の上昇が認めらる。さらに,特に鋳片のL,F面側 Fig. 5. Sulfur print of longitudinal section of bloom cast contin- uously and flow of molten iron in the bloom visualized by diving test with FeS coated rivet. (S48C (0.48%C), 220mm square BL) Fig. 6. Sulfur print of longitudinal section of bloom of continu- ously squeezing and machine stop test. (S48C (0.48%C), 220mm square BL, Reduction: H-Roll only) ブル ムー連続鋳造における各種偏析の生成機構 21 409 で凝固組織が柱状晶から等軸晶に遷移した位置より内側 ではC濃度が内側に向けて減少し,中心偏析を示すピーク の周辺で大きなC濃度の低下(負偏析の生成)が認められ る。このような傾向は,No.3CCの中断面ブルームの肌焼鋼 (SCM420)でも,また大断面ブルームで鋳造したS48Cや SCM420でも認められた。 鋳型内電磁攪拌等,溶鋼流動下で凝固させた場合,強制 対流による乱流混合により濃度境界層内の凝固界面側から バルク溶鋼への物質移動が促進され,凝固界面近傍の液相 溶質濃度が低下するため,晶出する固相の溶質濃度が低下 し負偏析が生成する 21)。凝固時に限らず,このような界面 に沿う強制対流により界面や流れに直交方向の物質移動が 促進されることも良く知られている 22,23)。 鋳型内電磁攪拌による負偏析の生成機構からの類推や界 面に沿う流れによる流れや界面と直交方向の物質移動の促 進効果を考えると,等軸晶帯内でのC濃度の低下や中心偏 析とその周辺での負偏析の生成機構は以下のように推定さ れた。推定した中心偏析やその周囲の負偏析の生成機構の 模式図をFig.7に示す。実際の各偏析の生成は,固液共存相 内の現象であり,平滑界面を想定した模式図のように単純 ではないが,模式図ではより理解しやすいように,概念的 かつ簡略化して示した。 固液共存相内でのクレーターエンド方向に向かう凝固 収縮流動が,固液共存相内で凝固界面に直交方向の断面 中心側へ向かうC等の物質移動を促進する結果,界面近 傍の液相側で溶質濃度の低下(Ci→Ci’)が起きて固液共 存相内周辺側の固相溶質濃度が低下(Cs→Cs’)したり,負 偏析が形成される。また,周辺部での負偏析の生成や溶質 濃度が低下した分,残溶鋼への溶質の濃化や蓄積が進み (CL,b→CL,b’),最終凝固部でこの溶質が濃化した残溶鋼が 捕捉されて凝固すれば中心偏析が形成されると考えること ができる。 本機構に基づけば,凝固収縮流動による中心偏析やその 周囲の負偏析の生成を矛盾無く説明できるだけでなく,ス ラブ連鋳機でバルジングやその矯正,ミスアライメントで 残溶鋼の流動が起きると中心偏析が悪化する理由も,同様 に説明できる。 今回提案した機構を検証するため,先の未凝固大圧下試 験で大圧下での絞り出しによる残溶鋼の流動影響で流路周 辺に負偏析が生成するかを調査した。試験に際しては,エ ンタルピー法2次元差分計算で,大圧下を加えたロールバ イト位置における fs(固相率)=0.8の流動限界固相率の界 面位置を推定した。上記凝固計算に先立ち,FeS溶射鋲を 用いた鋲打ち試験を実施し,SPで鋲表面からFeSが溶出し た鋳片内最表層位置を把握し,その位置が流動限界固相率 の界面位置に対応するよう2次元凝固計算の熱伝達係数を Fig. 8. Relation between distance from BL surface and C con- tent. (S48C (0.48%C), 240mm×263mmBL, M-EMS on, without Soft Reduction) Fig. 7. Simplified schematic view of formation mechanisms of V segregation, centerline segregation and negative segregation near cen- ter of bloom cross section in bloom continuous casting. 鉄と鋼 Tetsu-to-Hagané Vol. 98 (2012) No. 8 22 410 補正した。 Hロール1段で大圧下後の鋳片で厚み方向にC濃度分布 を調査した結果をFig.9に示す。図中にはロールバイト位 置において fs=0.8以下の未凝固範囲と推定された位置を, 圧下による変形を考慮して図示した。ロールバイト内での 高い圧力により,流動限界固相率(fs=0.8)の界面内側の 樹間残溶鋼は絞り出され負偏析が形成されるが,上記界面 より周辺側の樹間溶鋼はロールバイト内で絞り出されず負 偏析も生成し得ない。よって鋳片断面内で流動限界固相率 の界面より周辺側での負偏析の生成は,ロールバイト上流 側で濃化溶鋼が流動した影響と判断される。 Fig.9では,流動限界固相率(fs=0.8)で定義される界面 より外側の広い範囲でC濃度が低い負偏析領域が拡大して いる。本結果より,ロールバイトより上流側でも圧下によ り絞り出された残溶鋼の流動で流路周辺部に負偏析が生成 されることが確認された。同様な調査を複数の鋳片につい て実施したが,何れの鋳片でも上記流動限界固相率の界面 より広範囲で負偏析の生成が認められた。また,C濃度の 分析は実施しなかったものの,Fig.6の鋳片縦断面のSPで も噛み止めた濃化溶鋼の流路周辺で負偏析の生成が確認さ れた。 以上の未凝固大圧下の試験結果より,断面中心部側の溶 鋼流動でその周囲に,負偏析が生成することが確認され, 本研究で提案した中心偏析やその周囲の負偏析の生成機構 に基づき予測された結果とも一致した。したがって,今回 提案した中心偏析やその周囲での負偏析の生成機構は十分 妥当なものと判断される。 なお前述したように,V偏析の生成にともない鋳片断面 周辺部の樹間溶鋼が中心側へ引き込まれる現象が存在し, この現象が負偏析の生成や残溶鋼への溶質濃化へ寄与する ことが推定される。一方,湾曲型CCで等軸晶の生成量が 多い場合,鋳片下面側等軸晶帯の周辺部で,V偏析が存在 しない領域(Fig.4参照)でもFig.8のようにC濃度の低下傾 向は認められた。このことより,V偏析の生成が広範な領 域での濃度低下と中心偏析周辺の負偏析生成や残溶鋼への 溶質濃化へ及ぼす影響は,凝固収縮流動が凝固界面に直交 方向の物質移動を促進する影響に比べて限定的と推察され る。 3・5  凝固収縮流動による鋳片断面中心部近傍の負偏析生 成挙動に関する解析 前述したように,ブルーム連続鋳造での中心偏析やその 周辺部の負偏析の生成は,凝固収縮に起因する溶鋼流動が 凝固界面に直交方向の物質移動を促進するためであるこ とを明らかにした。この凝固収縮に起因する残溶鋼の流動 速度が中心偏析や負偏析に及ぼす影響を明らかにし,定量 的な溶鋼流動速度の低減目標を得ることは,中心偏析や負 偏析の改善を図る上で有意義と考えられる。そこで本研究 では,溶鋼流速と負偏析度(実効分配係数)に関する実験 式 21)を凝固収縮流動による負偏析生成にも適用し,鋳片あ るいは鋼片断面中央部の負偏析度の測定結果から,鋳片断 面中心部近傍における,凝固収縮による残溶鋼の流動速度 の推定を行った。 デンドライト凝固では平滑界面凝固に比べ,樹間の濃化 溶鋼バルク溶鋼への混合がおこりにくいことも知られてい る 21)。凝固収縮による溶鋼流動速度の推定では,このこと を考慮して,デンドライト凝固の場合について,高橋らに より求められた,以下の溶鋼流動と負偏析度(Ke:実効分 配係数)の関係の実験式 21)を用いて推定した。 Sh(洗滌深さ) = (U / V)/{7500 + (U / V)} (11) U:溶鋼流動速度(cm/s),V:凝固速度(cm/s)at fs = 0.3 Ke(実効分配係数)  = 1-1.33×10-4×(1-Ko)×(1-Sh)×(U / V) (12) Ko:Cの平衡分配係数(0.19(δ) or 0.333(γ)) 凝固速度(V)については,①2次元凝固計算(エンタル ピー法)で fs=0.3の凝固界面位置の推移を推定し,さらに ②上記 fs=0.3の凝固シェル厚(Dfs=0.3)と時間(t)の関 係にルート則を仮定し,(13)式の見掛けの凝固速度係数を 評価して,(13)式を時間微分して求めた(14)式に基づき 推定した。 Dfs=0.3 = K (t) (13) K:見掛けの凝固速度定数(fs = 0.3)[mm/min1/2] V = d(Dfs=0.3) / dt = K 2 / 2D[cm/s] (14) 上記(11),(12)式を用いて求めた溶鋼流速,凝固速度と Sh(洗滌深さ)の関係をFig.10に,Cの平衡分配係数(Ko) を0.333として求めた溶鋼流速,凝固速度とKe(実効分配 係数)の関係をFig.11に示す。これらの図では鋳片表層か Fig. 9. Relation between distance from center of thickness of re- duced bloom and C content. (Continuous squeezing test, (S48C) 0.48%C, Reduced 220mm square BL by H-roll) ブル ムー連続鋳造における各種偏析の生成機構 23 411 ら断面中心部における凝固速度範囲の0.002~0.05(cm/s) でShやKeへの凝固速度と溶鋼流速の影響を示した。Shは 溶鋼流速の増加にともない,また凝固速度の減少につれて 増大し(Fig.10),Keは溶鋼流速の増大,凝固速度の減少に ともない低下する(Fig.11)。よって,凝固速度が小さい鋳 片断面中心部では,溶鋼流速が小さくても負偏析や中心偏 析が容易に生成する。溶鋼流速や凝固速度がKeに及ぼす 影響は,平滑界面の一方向凝固を対象としたBurtonらの 式 24)で予想される傾向とも一致する。 大断面ブルームで肌焼鋼(SCM420)とS48Cを各種条 件で鋳造したケースを対象に,上記手法を用いて種々の 溶鋼流動速度で推定した実効分配係数(Ke)の値を凝固 シェル厚との関係で整理した結果を,Fig.12~15に実線も しくは破線で示した。図中には鋳造した鋼種とその成分 と鋳造条件も併せて示す。Fig.12,13は0.22mass%Cの肌焼 鋼(SCM420)について計算した結果であり,Fig.14,15は 0.47mass%CのS48Cについて計算した結果である。また, 各図中の破線は鋳型内電磁攪拌(M-EMS)の攪拌流速を与 えて計算した場合のKeを示す。各図中には各種鋳造条件 で鋳造した鋳片またはそれを分塊圧延した鋼片の横断面内 各位置から5mmφのドリルで化学分析し,TDでの溶鋼C 濃度で割って求めたC偏析度(C/Co)の測定結果をブラン クマークで示した。Fig.15に示したケースのみ凝固末期軽 圧下を適用し,凝固収縮流動の抑制を図った。 凝固収縮流動での溶鋼流動速度の推定に先立ち, M-EMSによる表層負偏析について,負偏析度の測定結果 と実効分配係数Keの計算結果を対比し,上記溶鋼流速の 推定方法の妥当性について検証を行った。具体的には,上 記手法を用いてフューズドメタル実験 25)で推定した溶鋼 流速を与えて計算した結果(図中の破線)と,C濃度を分 析して求めたM-EMSによる表層負偏析度(C/Co,図中の ブランクマーク)を比較した。Fig.12~15で計算結果と実 測された表層の負偏析度はほぼ一致していることが確認さ れ,上記手法により負偏析度の実測値からその部位が凝固 する際の溶鋼流動を推定することは概ね可能と判断され た。上記結果を踏まえて,連鋳材の断面中心部における負 偏析度(C/Co)の測定結果に基づき,溶鋼流動とKeの関係 の実験式 21)を用いて,各ケースについて凝固収縮による溶 鋼流動の最大流速を推定した。 Fig.12~15でも認められるように,今回の調査材では M-EMSでの強攪拌による残溶鋼への溶質濃化に対応する 濃度上昇が,表層負偏析の内側で認められた。このような M-EMS強攪拌による残溶鋼へ溶質濃化を考慮せず,断面 中心側でTDでの溶鋼組成に対し偏析度を求めると,その 負偏析の程度は過小評価されるため,Keとの比較は不適切 である。そこで次の方法で鋳片と鋼片断面中心部周辺部の 負偏析度を再定義して補正した。上記M-EMSによる攪拌 の影響でC濃度の上昇が認められた範囲の最大C濃度を把 握し,より内部側ではその濃度を初期濃度として凝固した 場合の負偏析度を求めて,Keの計算結果と照合した。具体 的には鋳片各L面とF面側で上記最大C濃度を求め,その 値で各位置のC濃度を割って上記最大C濃度に対する偏析 度(redefined C/Co, LまたはC/Co, F)を求めた。凝固収縮流 動の最大流速の推定を目的としたため,上記方法で補正し た偏析度のうち各面側で最小の偏析度 (以下最大負偏析度 と称す)のみ図中にソリッドマークで示し,計算結果と比 較した。 Keの計算結果とソリッドマークの各面断面中心側での 最大負偏析度の比較より,凝固末期軽圧下で凝固収縮流動 の抑制を図らなかった場合(Fig.12~14)の溶鋼最大流速 は5~9cm/s程度と推定された。凝固末期軽圧下を適用した S48C(Fig.15)では,凝固収縮流動が抑制され,最大流速は 約2cm/sまで減少したと推定された。 3・6  凝固収縮流動による凝固界面に直交方向の物質移動 促進影響の評価 ブルーム鋳片での中心偏析やその周囲の負偏析の生成機 構については,凝固収縮流動が境界層内で凝固界面に直交 Fig. 10. Relation between flow velocity of molten steel (U ) and washed depth (Sh). (V: solidification rate (cm/s)) Fig. 11. Relation between flow velocity of molten iron (U ) and effective partition coefficient (Ke). (Ko=0.333, V: so- lidification rate (cm/s)) 鉄と鋼 Tetsu-to-Hagané Vol. 98 (2012) No. 8 24 412 方向の物質移動を促進したり,固液共存相内での混合(分 散)を加速する影響と推定したが,その妥当性を鋳型内電 磁撹拌の場合の物質移動速度の相対比較から検証した。 従来中心偏析の生成への関与が考慮されてこなかった境 界層内の上記物質移動に関して,その物質移動速度と対流 による物質移動速度の相対的な重要度をPe数で評価した。 M-EMSでの電磁攪拌の場合と鋳片断面中心部で凝固収縮 流動が存在する場合の境界層内の物質移動速度は,S25C 丸鋼の回転円柱溶解実験の解析から得られた,溶鋼流速 (円柱の周速)と境界層の内の物質移動係数の関係 22)を用 いて推定した。 Table 3に,ブルーム連続鋳造における各ケースの溶鋼対 Fig. 12. Relation between thickness of shell and Ke, C/Co, redefined C/Co and estimated velocities of solidifica- tion shrinkage flow from minimum redefined C/Co(1). (350mm×560mmBL, SCM420:0.22%C-0.22%Si- 0.75%Mn-0.014%P-0.018%S-0.034%Al-1.15%Cr- 0.17%Mo) Fig. 14. Relation between thickness of shell and Ke, C/Co, redefined C/Co and estimated velocities of solidifi- cation shrinkage flow from minimum redefined C/ Co(3). (350mm×560mmBL, S48C:0.47%C-0.18%Si- 0.65%Mn-0.009%P-0.017%S-0.026%Al-0.04%Cr) Fig. 13. Relation between thickness of shell and Ke, C/Co, redefined C/Co and estimated velocities of solidifica- tion shrinkage flow from minimum redefined C/Co(2). (350mm×560mmBL, SCM420:0.22%C-0.22%Si- 0.75%Mn-0.014%P-0.018%S-0.034%Al-1.15%Cr- 0.17%Mo) Fig. 15. Relation between thickness of shell and Ke, C/Co, redefined C/Co and estimated velocities of solidifi- cation shrinkage flow from minimum redefined C/ Co(4). (350mm×560mmBL, S48C: 0.47%C-0.18%Si- 0.64%Mn-0.009%P-0.016%S-0.023%Al-0.02%Cr) Table 3. Pe numbers in each case of continuous casting of bloom. ブル ムー連続鋳造における各種偏析の生成機構 25 413 流速度と境界層内の物質移動係数およびそれらの比として 求めたPe数を示す。M-EMSの場合,凝固界面近傍でその 界面に直交方向の物質移動速度に対する攪拌流速の比(Pe 数)は1500~1600程度と対流による物質移動速度が相対 的にかなり大きい。しかし,実際にはFig.8に示すように凝 固界面に直交方向の物質移動による負偏析の生成やそれに ともなう残溶鋼への溶質濃化が認められている。このこと は,負偏析の生成や残溶鋼への溶質濃化といった現象に対 しては,Pe数が1500程度でも,凝固界面近傍での界面直交 方向の物質移動速度が無視できないことを示唆すると考え られる。 凝固収縮流動の場合も,対流速度に対する凝固界面に直 交方向の物質移動の速度の比(Pe数)は1000程度と推定さ れ,M-EMSの場合よりPe数はむしろ小さい。したがって, 境界層内における凝固界面直交方向の物質移動が,負偏析 の生成や残溶鋼への溶質濃化へおよぼす影響はM-EMSの 場合よりも相対的に大きく,M-EMSの場合以上に上記物 質移動の負偏析の生成や残溶鋼への溶質濃化への寄与は無 視できないと判断される。 4. 結言 本研究では,実際のブルーム鋳片でV偏析や中心偏析お よびその周囲の負偏析の実態や,鋳片断面内の溶質濃度分 布について調査したり,凝固が進行しているストランドク レーター内の溶鋼流動を鋲打ち試験で可視化する実験を行 い,それらの結果に基づき,ブルーム連続鋳造でのV偏析, 中心偏析およびその周囲の負偏析の生成機構を新たに提案 した。さらに,未凝固鋳片に大変形を加え,残溶鋼をメニ スカス側へ絞り出す未凝固大圧下の試験を行い,断面中心 部に存在する残溶鋼の対流により,逆V偏析や負偏析が生 成することを確認し,今回提案したV偏析と中心偏析の生 成機構の妥当性を検証した。本研究で提案した各種偏析の 生成機構は以下のようにまとめられる。 1)ブルーム連続鋳造では凝固組織が等軸晶化した場合 は,断面中心部での凝固サクションに起因して鋳片断面中 心部に存在する残溶鋼の流動により,周辺部から鋳片長手 方向に斜めに中心部へ向かい低下する圧力勾配が生じ,樹 間の残溶鋼がこの圧力勾配に基づき流動を繰り返す結果, V偏析のストリークが発達し,鋳片断面内で広範囲にV偏 析が形成される。 2)鋳片断面中心部まで柱状晶が発達した場合は,等軸晶 凝固に比べV偏析の生成は鋳片断面内中心部の狭い範囲に 限定される。 3)ブルーム連続鋳造における中心偏析やその周囲の負 偏析の生成は,凝固収縮流動が直接原因であり,具体的な 生成機構は以下のように説明できる。 4)凝固末期に存在するクレーターエンドへ向かう凝固 収縮流動は,凝固界面に直交方向の物質移動を促進した り,固液共存相内の混合(分散)を加速する結果,中心偏析 部の周辺で負偏析が生成するとともに,残溶鋼へ溶質が濃 化し,その濃化溶鋼が最終凝固部に捕捉されて中心偏析を 形成する。 5)上記凝固収縮流動に起因する溶鋼流動の流速は ,負偏 析の生成状況から,最大5~10cm/sと推定された。 6)上記対流下では,凝固界面に直交方向の物質移動や固 液共存相内の混合(分散)の負偏析の生成や残溶鋼への溶 質濃化への寄与は無視できない。 7)以上のV偏析や中心偏析等の生成機構を考えると,ブ ルーム連続鋳造でこれらの偏析の生成を防止するには,根 本原因である凝固収縮流動の抑制が最も重要であり,通常 のブルーム連続鋳造では,凝固末期軽圧下が本質的で最も 有効なV偏析や中心偏析およびその周囲の負偏析の生成防 止対策と考えられる。 文   献 1 ) Y.Ujiie, H.Maede, Y.Itoh, S.Ogibayashi, H.Seki, K.Wada and H.Itoh: Tetsu-to-Hagané, 67(1981), 1297. 2 ) I.Ochiai, H.Ohba, H.Hida an
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