「~と、~たら、~ば、~なら」の使い分けについて
この四つは日本語の文法の研究の中でも多く取り上げられ、今でも研究者の中で研究が続けられているものです。一応の解説は各参考書に載っていますが、それでは説明できない「例外」が多くあるので学習者を悩ませる問題であると思います。
ここでは、一応のそれぞれの文型の取りうる意味と、大まかに使い分けができるようなポイントのみ、『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』他の参考書からまとめて述べてみたいと思います。
1.「~と」
19課で勉強した「~と」は、前の文の条件が成り立つと、後ろの現象が自然発生的に生じる、という意味になります。基本的には、
①春になると、暖かくなります。(1)自然現象
②このボタンを押すと、水が出ます。(2)機械の操作
③あの角を左に曲がると、右に学校があります。(3)発見
箱を開けると、プレゼントが入っていました。
④起きる時間になると、目覚まし時計がなります。(4)習慣?反復動作
毎週日曜日になると、先生たちはサッカーをしにいきます。
の四つの用法があると言えます。後ろに、「意志(V現在形、~よう)、希望(~たい)、命令(~なさい)、依頼(~てください)」が来ることはできません。「~と」の後ろの文(「後件」と呼びます)は、変化の結果を
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す動詞(~なります)、状態を表す動詞(います、あります、ています)、自動詞(出ます、咲きます、降ふります、並びます、等)です。
また、もう一つ、「~と」は、前の文も後ろの文も過去の場合でも言うことができます。(つまり、二つの事実がすでに発生している、過去のことである場合)
⑤窓を開けると、冷たい風が入ってきました。
⑥彼に電話すると、すぐに出ました。
以上、「~と」は、仮定というよりも、後ろのことが発生したきっかけを述べるというような意味合いが強いです。ですから、後ろには、前件(前の文)が発生すると、自然に後件のことがらが発生する、という意味のものが来ます。
また、「~と」は、「~たら」とほとんど置き換えが可能です。(「~たら」はその条件が起こるかどうかわからない条件(仮定条件)でも、また、その条件が発生することがすでにわかっていることである場合(確定条件)でも使えます。)
2.「~ば」
「~ば」は上の「仮定条件」と「確定条件」のうち、「仮定条件」を表す意味がより強い用法です。
①明日もし{○晴れたら、○晴れれば、×晴れると}キャンプに行きます。
また、「~ば」は、原則として、後ろの文に、「意志(V現在形、~よう)、希望(~たい)、命令(~なさい)、依頼(~てください)」を使うことはできません。
②マナさんが{×来れば、×来ると、○来たら}、パーティーを始めましょう。
③先生から連絡が{×あれば、×あると、○あったら}、知らせてください。
④試験が{×終われば、×終わると、○終わったら}、遊びに行きたい。
⑤朝、人に{×会えば、×会うと、○会ったら}、挨拶をしなさい。
ただし、前の文が、イ形容詞、ナ形容詞、名詞、動詞(状態を表すもの、例:ある、いる、ている等)を使った「状態」を表すものの場合には、後ろに「意志(V現在形、~よう)、希望(~たい)、命令(~なさい)、依頼(~てください)」が来ることができます。
⑥明日{○晴れれば、○晴れたら、×晴れると}、買い物に行きたいです。
⑦何かわからないことが{○あれば、○あったら、×あると}、聞いてください。
⑧{○わからなければ、○わからなかったら、×わからないと}、勉強しなさい。
また、前の文も後ろの文もすでに起こっていることの場合(過去の場合)にも、「~ば」を使うことはできません。
⑨薬を{×飲めば、○飲むと、○飲んだら}、風邪が治りました。
⑩窓を{×開ければ、○開けると、○開けたら}、鳥の声が聞こえました。
「~ば」は、やり方がわからなくて誰かに教えてもらうときや、何かに困っていて誰かに相談するときなどによく使われます。
?どうすれば、日本語が上手になりますか。
-毎日一生懸命勉強すれば、上手になりますよ。
?この機械はどうやって使えばいいですか。
-このボタンを押せば、スイッチが入りますよ。
?一日何時間ぐらい勉強すればいいでしょうか。
-3時間ぐらい勉強すればいいでしょう。
?、?は「と」と置き換えが可能ですが、「このボタンを押せば、スイッチが入りますよ」と「このボタンを押すと、スイッチが入ります」とでは、若干ニュアンスが違い、「~ば」の方はたずねられたことに答えていますが、「と」だと、ただ事実を述べているという印象を与えます。普通使い方をたずねられたときや相談されたことに答えるときには「~ば」を使うことが多いです。
また、「~ば」の特徴の一つとして、後ろの文に望ましい事柄が来る、ということがあります。
?急いで行けば、電車に間に合います。
?一生懸命勉強すれば、日本語が上手になります。
??雨が降れば、外出できません。
○晴れれば、外出できます。
??大学生になれば、勉強しなければなりません。
○大学生になれば、アルバイトができます。
3.「~たら」
「~たら」は、もっとも広い範囲に使え、仮定条件(まだ発生していない事柄)にも、確定条件(もうすでに発生した事柄)についても言うことができます。
仮定条件①明日雨が降ったら、キャンプに行きません。
確定条件②さっき窓を開けたら、友達が歩いているのが見えた。
基本的に、「~たら」は、その場限り、一回のみの出来事について述べます。恒常的に(いつもそのようなことが起こる)、また、反復的に何度も行われるようなことについては、「~と」が用いられます。
以上、簡単にまとめてみましたが、最低限覚えておかなければならないと思われるものを以下にあげます。
?「~たら」は、「~ば」「~と」のどちらとも大体言い換えができる。一回限りの出来事に使う。最も広い範囲に使える。
?「~と」は、恒常的、反復的に発生することを現す場合に用いられる。後件には、自動詞、~なります、など、前件が起きると自動的に、自然に後件が発生する場合に使う。「意志(V現在形、~よう)、希望(~たい)、命令(~なさい)、依頼(~てください)」は来ることができない。過去形は使うことができる。
①季節の変化などの自然現象春になると暖かくなります。
②機械の使用方法このボタンを押すとテレビがつきます。
③道聞き右に曲がると、公園があります。
④発見窓を開けるとそこに人がいました。
?「~ば」は、仮定条件を表す。過去形は使えない。前件が状態を表す場合は後ろに「意志(V現在形、~よう)、希望(~たい)、命令(~なさい)、依頼(~てください)」が来ることができるが、その他の場合は使えない。
前件が状態を表す場合
寒ければ、ストーブをつけてください。
明日晴れれば、外出したいです。
安ければ買いますが、高ければ買いません。
それ以外の場合
春になれば、桜が咲きます。(×春になれば、遊びに来てください)
このボタンを押せば、お湯が出ます。(×名前を呼べば、立ちなさい)
また、「~ば」の一番大きな特徴として、誰かに何かを教えてもらうとき、助言するときなどによく使うということがある。教科書でもこの形が取り上げられているので、会話の形で導入したい。
どうすればいいですか。-~すればいいですよ。
疑問詞+~ばいいですか-~ばいいですよ
4.「~なら」
「~なら」は、前件に状態を表す文が来る場合には上の三つと大きな違いはありません。
寒ければ、窓を閉めましょう。
寒いなら、窓を閉めましょう。
一番大きな違いは、「~なら」の前に、辞書形と過去形のどちらも来ることができることです。
大学に行くなら、もっとがんばって勉強しなければなりません。
大学に行ったのなら、いい仕事に就けるでしょう。
「~と」「~たら」「~ば」は、二つの事柄(前件と後件)の関係(きっかけや、時間的な成立条件など)を表すのに対して、「~なら」は、あることを仮定することから導き出される結論や帰結、話し手の判断や考えなどを表します。
①もし彼にあったら、よろしく言っておいてください。
②もし彼に会うなら、よろしく言っておいてください。
上の文で見ると、①は、偶然でもなんでもいいから、もし、「彼に会う」という事態が発生した場合には、よろしく言ってほしい、ということを表しますが、②の場合には、「事態が発生する」ということよりも、聞き手が「彼に会う」という動作をする、ということを話し手が自ら仮定して、依頼しているということになります。
つまり、「~と」「~たら」「~ば」は事実であることに焦点がありますが、「~なら」は、その事態を仮定するのは話し手であって、その仮定は人為的であると言えます。
ですから、後ろが、自然発生的な状態である場合には、「なら」は使うことができません。
×春になるなら、桜が咲きます。
○春に{なったら、なれば、なると}桜が咲きます。
「~なら」の例文は以下のとおりです。
日本語の本を買うなら、丸善がいいですよ。
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