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TPP問題と日本農業 - 38 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● TPP問題と日本農業 石 原 健 二 1. アメリカが求めて参加したTPP (1) 1960年代から始まる自由化問題 貿易自由化と関税障壁をめぐる問題は1960年代から始まっている。当時のヨーロッ パ共同体(EEC)結成に伴う域内関税の撤廃とEECの輸出の伸張に対し、アメリ カが打ち出したケネデイの関税一括交渉がその嚆矢である。本格化するのは1970年代 になるが、石油危機後...

TPP問題と日本農業
- 38 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● TPP問題と日本農業 石 原 健 二 1. アメリカが求めて参加したTPP (1) 1960年代から始まる自由化問題 貿易自由化と関税障壁をめぐる問題は1960年代から始まっている。当時のヨーロッ パ共同体(EEC)結成に伴う域内関税の撤廃とEECの輸出の伸張に対し、アメリ カが打ち出したケネデイの関税一括交渉がその嚆矢である。本格化するのは1970年代 になるが、石油危機後のスタグフレーションとともに経済摩擦が激化してからである。 日米間では沖縄返還問題と繊維交渉がいつの間にか取引され、繊維産業への補償が問 題となる。その中で農産物、特に穀物の輸出入に変化が生じてくる。1980年代を前に EECが穀物輸入国から輸出国に転じるのである。先進国の農業保護政策が定着し、 過剰問題が生ずるようになり、アメリカとの輸出競争とともに、後進国の農業保護政 策と衝突することとなったのである。いうまでもなくアメリカの工業の没落、比較劣 位化が農産物輸出に集中させる要因にもなったのである。 1980年に入ると、日本は対外的には円高の下で、現在の中国がアメリカに攻められ ているように、円安と内需拡大を求められ、特に、農産物の自由化が大きな課題とさ れたのである。以後、農産物の自由化はアメリカのみならず、国内では財界からも求 められ、内・外圧両面からの圧力を日本農業は受けることとなる。まず、輸入制限12 品目の関税化と牛肉・オレンジの自由化が課題とされ、1980年代後半には全米精米協 会(RMA)の通商法301条をちらつかせた食管の廃止と米の自由化要求が始まる。 米は1993年末のガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意がされ、日本は関税を阻ん だものの、ミニマムアクセスを受け入れ、1999年関税化に移行したが、今でも77万t の米を輸入している。このあと、1995年からWTOが設立され、関税を中心とした貿 易交渉はここで行われることとなっている。 - 39 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● (2) WTOとFTA、EPA WTO、FTA、EPAの関係は< 关于同志近三年现实表现材料材料类招标技术评分表图表与交易pdf视力表打印pdf用图表说话 pdf 1>のようになっている。WTO(世界貿易 機関)は、現在154カ国が加入している貿易協定であり、今では中国、インドも加 わっている。関税引き下げを中心に14分野に分かれて検討が進められている。ここで は途上国には関税削減の割引措置が認められ、削減の義務はない。ただし、その決定 は全会一致で主要国ひとつの反対でもあれば、合意とはならない。現在は、ドーハラ ウンド以来の交渉が行われているものの、アメリカが農業での自国の保護を譲らず、 議長国提案に応じていないことから交渉は進んでいない。この4月21日、WTOは ドーハラウンド交渉の議長提案を発表したものの行き詰まりは決定的となっている。 アメリカと後進国との意見の合意は得られないままである。 WTOとの協定が合意に達しない場合とられている方法が、複数国・2国間で行わ <表1> FTA・EPA・TPP、WTO 協 定 範 囲 関係国 機 関 特 徴 日本の立場 自由貿易協定 (FTA) 物品の自由化 (90%) 経済連携協定 (EPA) 物品の自由化 (90%)+金 融・サービス 等を含む。 2カ国-数カ 国。 農産物。重要 品目を除いた 自由化。 環太平洋 連携協定 (TPP) 物品の自由化 (100%)+ 他分野。 9カ国(11. 1月時点) なし。 ・2カ国間-数カ 国間の交渉で協 定を作成。 ・先進国-途上国 の場合 途上国 に優遇措置な し。 ・途上国同士の場 合 90%のしば りなし。 ・農業国内保護の 削減は対象とせ ず。 世界貿易機関 (WTO)協定 物品の関税引 き下げ、サー ビスなど14分 野。 加盟154カ国 WTO(世界 貿易機関) ・全会一致による 決定。 ・後発途上国(全 体の1/3)に 削減義務なし。 ・途上国(全体の 3/4)に優遇 措置。 ・農業国内保護の 削減も協定の一 部。 漸進的自由化 (一定の関税 の引き下げ。 重要品目への 考慮)。 資料)服部信司「TPP参加問題と日本農業・日本経済」2011年4月号『農村と都市をむすぶ』全 農林労働組合より。 - 40 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● れるFTA(Free Trade Agreement 自由貿易協定)である。ここでは「実質的すべて の品目の関税を一定期間後に撤廃していくもの」とされているが、90%が『デファク トスタンダード』(事実上の世界基準)となり、農業の国内保護削減は協定の対象と されないこととなっている。 EPAは「物品の貿易以外の分野を含む協定」で、協定が途上国との間で結ばれる 場合は「90%以上の自由化が必要」などの縛りもない。経済協力などで合意すること が認められている。 (3) APEC、ASEANの中のアメリカ 菅首相がTPPへの参加を表明したのはAPEC(Asia Pacific Economic Cooperaion 太平洋経済協力)首脳会談の議長国のときである。APECは1989年 オーストラリアの提唱で生まれた経済協力協定である。そしてASEAN(東南アジ ア諸国連合)は、まとまった経済協力を行う連合である。2006年、APEC、ASE ANのいずれにも参加していないアメリカがアジア太平洋自由貿易圏構想(FTAA P)を提唱したが合意にはいたらなかった。日本はこのアメリカの提案の位置づけの ために、アメリカ支援のためにTPP参加を示唆したとされている。 問題となっているTPP(Trance Pacific Partnership 環太平洋経済連携協定)とは、 2006年、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国でそれぞれ貿易 上で影響の少ない国同士が、物品の自由化において一定期間後(2017年)までに「す べての品目(100%)」の関税撤廃を約束したのである。これにすぐ反応したのがペ ルー、オーストラリア、マレーシア、ベトナムそれにアメリカである。現在9カ国で 協議を行っている。 (4) アメリカの不況とTPP TPPは「20世紀型FTA」とも呼ばれていて、APECの中でFTAのモデルを 作ろうとしているといわれている。アメリカの意図はブッシュ政権から続く不況で、 輸出産品が少なくなる中で、「金融」「投資」を含めた協定を狙いとしている。単な る物品の自由化ではない。全分野の交渉への参加を求めている。 これまでのAPEC、ASEANでは、日中韓が加わり、不在となっていたアメリ カが、TPPを通じてアジアへの関与を強めようというのである。オバマ政権の主要 な経済政策のひとつは輸出の拡大であり、就任時の演説で5年間に輸出の倍増を目指 - 41 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● すといっている。TPP参加で輸出増加をしようとするのは、FTA、EPAでは自 国の農業保護の削減が交渉の対象にならないからである。このため事前に、オースト ラリアとのFTA交渉ではチーズなど酪農製品、砂糖などの維持を確保しようとして いる。 アメリカはTPPの合意を持ってAPEC、ASEAN内の交渉を進めようとして いるが、狙いは中国と日本にある。何しろアメリカが中国のWTOへの参加を承認し たのは、中国が食糧自給を放棄したことが条件となっており、その後の中国のアメリ カからの穀物輸入は飼料を中心に急増している。TPPは物品以外の分野では知的財 産権、投資、サービス(一時入国、電気通信など)、政府調達、金融、労働力など多 方面にわたるものである。物品でいえばもちろん農産物が中心であり、輸入が増加し つつある中国と日本がターゲットとされている。 2. TPP参加検討とその狙い (1) 菅首相の狙い 民主党の2010年選挙のマニフェストで戸別所得補償方式とニュアンスが異なる表現 がされていたのが、FTA問題である。それまでの自民党より積極的にWTO、FT A交渉と農業振興を同時遂行できると主張していた。TPP参加表明のあと国家戦略 室主催のフォーラムで発表された政府の説明は次のようなものである。 日本は高齢化・人口減少により国内市場が縮小し、外需が必要とされている。これ からの世界経済の中心はアジアであり、アジアの国との連携が必要になっている。そ れにはEPA、FTAによる関係の推進が必要だが、日本は今韓国に先を越されてお り、市場を奪われかねない。このためFTAAPを実現することが必要だ。TPPの 参加は農業にとっては大変になるだろうが、輸出できる農業を作ればよい(1)。 この論理は後に述べるように、経団連などの提言に沿うものである。 (2) GDPに与える影響 このような菅総理の意見表明に対し、農林水産省は<図1>のような資料を出して (1) 谷口信和『農村と都市をむすぶ』2011年4月号pp.29~39 全農林労働組合 - 42 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● <図1> TPPによる影響(農水省発表資料) いる。TPPに参加すれば、農林水産物の生産の減少が4兆5千億円、今40%といっ ている自給率は13%くらいになる。水田などは多面的機能を持ち環境保全の役割をし ているが、そういったものを含めて喪失額が3兆7千億円。合わせて8兆4千億円ほ どのGDPへの影響が出る。就業機会の減少数は350万人に上るであろうと。 それに対して経済産業省は、TPPに入ればGDPが10.5兆円プラスする。但し、 失業者は80万人増えることになるであろうという。雇用機会が80万人減るが、GDP 10.5兆円プラスになるから、今の不況を克服するにはこの方法がいいのではないかと。 他方、内閣府は小さく見積もって、6.1兆円から6.9兆円のプラスになるであろうと いう。農水省と内閣府の計算をすると、両方で考えればGDPは大して増えないであ ろうということになる。経産省は今の経済を成長に乗せ、プラスに持って行き、日本 の経済を立て直すにはTPP以外にはあり得ないという。メディアを含めてTPPへ の参加を声高にしている。 TPPの問題というのは、交渉分野が24の作業部会を立ち上げて議論をするとなっ ている。市場アクセスの関税撤廃でいうと、繊維、衣料品。工業といっても、中小企 業対応のところが多くなっている。それと農業。例外を原則認めないので、これらの 分野への影響が大きくなる。それ以外にも、銀行、保険、電気通信、原産地規則、衛 生、食物検疫だとか、政府調達、知的財産権など、いろいろな分野にわたって、それ ぞれの交渉をしていかなければならない。本当に関税が撤廃されていくと一体どうな るのか見当が付かないほどの影響が出よう。 ●農林水産物の生産減少額※ ………… 4兆5千億円程度 ●食料自給率(供給熱量ベース) ……… 40%→13%程度 ●農業の多面的機能の喪失額 ………… 3兆7千億円程度 ●農林水産業及び関連産業への影響  ● 国内総生産(GDP)減少額 ………… 8兆4千億円程度  ● 就業機会の減少数 ………………………… 350万人程度 その他の農産物 1.8 4% 林産物 0.5 1%小麦 0.8 2% 水産物 4.2 9% 甘味資源作物 1.5 3% 鶏卵 1.5 3% 鶏肉 1.9 4% 牛肉 4.5 10% 米 19.7 44% 豚肉 4.6 10% 牛乳・乳製品 4.5 10% 試算の結果 ※ 国産農水産物を原料とする1次加工品(小麦粉等)の生産減少 額を含めた。 (単位:千億円) - 43 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● 関税が全部撤廃されれば、日本の産業構造を含めて大転換になっていくであろうこ とは間違いない。まさにClient Stateになっていくのではないか、という恐れがある。 (3) 世界一の農産物輸入国と財界の要求 例えば農業でいえば、日本の場合<図2>1970年代から、バナナから始まって牛肉、 オレンジ、それから米も自由化されてきている。農産物輸入金額は世界で1番となっ ている。純輸入額が403億ドルで非常に突出した輸入額になっている。しかも自給率 が41%で、先進国の中では最低になっている。関税率も11.7%と、関税の許すところ までかなり開放している。今回はそれ以上に輸入しろといっている。 現在、日本からアメリカへの輸出の場合は、無税が40.9%で有税が59.1%。アメリ カは、自動車をはじめとして必要なかなりのものに関税障壁を設けている。逆に日本 の場合は、有税はわずか25.5%で無税が74.5%、完全に日本の方が開放している。 財界をはじめトヨタ自動車などが「TPPに入れ」といっているのは、乗用車の場 合、韓国がアメリカとのFTAで関税をゼロにするので、韓国が乗用車の輸出では日 <図2> 主要国の農産物輸出入額(2006年) 資料)農林水産省。前図に同じ。 47 347 320 549 57 215 373 504 676 714 124 24 577 474 378 224 458 196 423 20 ブラジル オランダ オーストラリア フランス アメリカ 韓 国 ドイツ 中 国 イギリス 日 本 輸入額(億ドル) 輸出額(億ドル) (純輸入額) (262億ドル) (154億ドル) (103億ドル) (100億ドル) (-38億ドル) (-131億ドル) (-158億ドル) (-229億ドル) (403億ドル) (-300億ドル) - 44 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● 本より有利になる。自動車会社としては競争力を保つためには韓国並みにゼロにしろ という主張となっている。韓国の場合、この4、5年でウォンの価値が半額くらいに なっている。日本は逆に20%くらいの円高なので、少し円安に振れればこの2.5%な どすぐに無くなってしまう。にもかかわらず、2.5%を無くせというのである。 日本は自動車をアメリカで製造している場合が多い。韓国は韓国から直接輸出して いる。アメリカでの自動車の生産はトヨタの前に、ホンダなどが行っていて、トヨタ が入り込んだのが確か20年くらい前。フォルクス・ワーゲンがアメリカ進出で失敗し たので、トヨタ方式の生産がアメリカで可能かどうかを東大とハーバード大で3部門 に分けて2年間調査している。その結果、どこに生産拠点を作ればいいかを決め、結 論は、ドイツ人の居住地のところに工場を作っている。黒人の多いところではトヨタ 方式は入らない。そういうことまでして生産拠点を確保している。日本の場合はアメ リカでの供給量の方が多い。韓国の場合とは比較にならないと思われる。 2011年4月19日、経団連は「わが国の通商戦略に関する提言」を出している。ここ では関税の撤廃のほか、インターネットを通じた貿易自由化、インフラ輸出関連の政 府調達市場の開放、制度・企画の調和、外国投資に対する差別等の撤廃と投資仲介制 度の導入など、多岐にわたっている。しかも、農産物では世界最大の農産物輸入国で あることを知った上で、経団連の提言では、レアアースを含む資源・食糧の供給国に おける輸出制限の禁止を主張している。食糧自給より輸入による安定を求めることで 対処し、一方で生鮮加工食品の輸出拡大を通じた食品産業の強化をうたっている。 1970年代から続く農産物輸入路線となっている。 3. 農業のWTO対策 ― 安上がり農政の展開 (1) 財政再建から縮小 ところで今、日本の農業はどうなっているのだろうか。日本の農業政策は、1980年 代から大きく変わってきている。 それまでの日本経済における農業の役割は、第1に市民への安定し、しかも安価な 食料の供給にあった。低賃金の基礎だからである。第2は1970年代まで、景気変動の 場合の労働力の調整弁だった。景気変動は第2次産業の変動に対し、第1次産業の労 働者の流動で対処してきていた。国の経済を安定させるために農業の保護が必要だっ - 45 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● たのである。しかし、1970年代後半の石油危機以後、日本の産業構造は重厚長大から 軽薄短小といわれるIT産業中心に変わり、労働力の調整は第2次産業と第3次産業 との間で行われるようになった。食料の安価で安定的供給のみが農業政策の役割と なった。これによって農産物の自由化はより進むこととなっている。今では農業労働 力に安い外国人を求めるようになってきている。 具体的な政策として、いわゆる財政再建で、中曽根首相が臨調を立ち上げる。他方 で前川レポートが国際協調路線で輸出主導型経済を推進する。財政的には、1970年代 から始まった赤字国債の発行を1982年から1989年の間でゼロにしていく。そのため財 政赤字の原因である国鉄と健保と米の食管の赤字、この3つを退治しなくてはいけな い。国鉄については民営化。健保については掛け金の引き上げ。食管赤字は、生産者 に対しては生産費を保障する価格で高く買い、消費者に対しては家計費を損なわない ような価格で安く売る。その差額を財政でみるというのが食管だった。これを無駄と した。食管は1982年から1989年の間で売買逆ザヤがゼロになる。1989年で財政再建が 終わるが、その時、米の価格でいえば、政府米は安く買って高く売ることになってい る。農林水産予算は1982年3兆7,000億円から1992年には2兆7,000億円となっている。 (2) 農業政策の転換 1993年、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意となるが、農業政策は1992年に大 きな転換をしている。 それまでの農業政策は農業生産者全体を対象にしていたので価格政策が中心だった。 それを農業政策の中心を担い手とすると、1992年に決めている。いわゆる新農政とい われるもので、農業政策の対象を担い手に絞る。担い手とは認定農業者と法人となる。 認定農業者というのは、例えば米なら4ha以上とか、内地の酪農であれば30頭以上と か、北海道なら60頭、70頭以上とか、品目ごとにそれぞれの専門農家的な基準を決め て認定農業者として、他は法人化したものを対象に農業政策を行い、その他の人たち は対象としない、としたのである。 1993年はガット・ウルグアイ・ラウンドで、完全に米は自由化される。その中でM A米(ミニマムアクセス米)として、日本は生産量の約8%を買うことになる。現在 でも77万t。1994年から毎年買い続け、1,056万tもの米を輸入している<表2>。 その中でアメリカ米を必ず半分は買うことになっている。 この農業交渉で、日本は「1粒たりともコメは輸入しない」と主張し、アメリカ並 - 46 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● <表2> MA米の輸入数量(輸入先国別) (単位:万玄米トン) 1995年度 輸 入 1996年度 輸 入 1997年度 輸 入 1998年度 輸 入 1999年度 輸 入 2000年度 輸 入 2001年度 輸 入 2002年度 輸 入 米 国 19 23 29 32 34 36 36 36 タ イ 11 14 15 15 16 17 15 15 中 国 3 4 5 8 9 10 14 11 オーストラリア 9 9 9 11 11 12 11 10 そ の 他 1 1 2 2 2 2 1 5 合 計 43 51 60 68 72 77 77 77 2003年度 輸 入 2004年度 輸 入 2005年度 輸 入 2006年度 輸 入 2007年度 輸 入 2008年度 輸 入 2009年度 輸 入 合 計 米 国 36 36 36 36 36 43 36 504 タ イ 15 19 19 18 25 27 33 274 中 国 11 10 9 8 8 7 7 124 オーストラリア 9 2 2 5 - - - 100 そ の 他 5 10 11 10 1 0 1 54 合 計 76 77 77 77 70 77 77 1,056 注:各年度の輸入契約数量の推移。 (参考) MA米以外で、枠外税率を支払って輸入されるコメの数量は、毎年0.1~0.2千トン程度 みのウェーバー条項を主張して、この問題については絶対に触れさせないという対応 で進めていたが、1993年12月26日にガラッと変わってアメリカのいう通りになり、M A米となっている。なぜウェーバー条項を主張できなかったのか。当時、OECDの 事務局次長の谷口誠氏が、2011年3月号の『世界』で「日本には国際的に孤立してま で日本の農業を守るという強い国家的意識統一ができていなかったし、外務省などは 外圧を利用して日本の農業の自由化を図ろうとしていた」といっている(2)。この後 の農業政策は米を含め、基本はWTO対策に沿った政策を模索することとなっていく。 (3) WTO対策としての農業政策 1993年以後農林予算は変わる<表3>。食管法は1996年に食糧法に変わり、米関係 (2) 谷口誠「米国のTPP戦略と『東アジア共同体』」2011年3月号p.45『世界』岩波書店 - 47 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● <表3> 国家予算に占める農林予算の変化 (単位:億円、%) A B C D 割 合 年 度 一般会計 歳 出 一般歳出 農林水産 総 額 農業関係 C/A C/B D/B 1970 82,131 61,540 9,921 8,851 12.1 16.1 14.4 1980 436,814 303,610 37,765 31,080 8.6 12.4 10.2 1990 696,512 392,711 33,009 25,188 4.7 8.4 6.4 1992 714,897 421,043 37,525 27,793 5.2 8.9 6.6 1995 780,340 499,001 45,999 34,251 5.9 9.2 6.8 1997 773,900 438,060 35,922 29,226 4.6 8.2 6.1 2000 897,702 524,952 38,969 29,481 4.6 7.4 5.6 2002 836,884 511,493 34,713 25,462 4.1 6.8 5.0 2004 868,787 509,381 32,723 24,267 3.8 6.4 4.8 2005 867,048 496,439 30,809 22,559 3.5 6.1 4.5 2006 834,583 478,423 29,245 21,393 3.5 6.1 4.5 2007 829,088 469,784 26,927 20,431 3.2 5.7 4.3 2008 830,480 472,845 26,370 20,045 3.1 5.5 4.2 2009 885,480 517,310 25,605 19,410 2.9 4.9 3.7 2010 922,992 534,542 24,517 18,325 2.6 4.5 3.4 注:1) 2006年まで補正後、2007年以後は当初予算 費は、生産調整と米の価格調整が基本的な柱となった。食管の時と違って、食糧法に なってからの政府の役割は備蓄と価格調整の2つとなる。しかし、備蓄の問題では 1993年、1994年に大きな誤りを犯している。1993年は大凶作、1994年は豊作になった。 そこで備蓄を150万tにするが、回転備蓄として1年間備蓄したものを次の秋、新米 が出て来る時に、買い取った価格に金利、倉敷料を入れて売ることにした。玄米は 17℃以下に保っていれば、1年間は品質がさして変わらない。しかし、常温では必ず 変質する。6、7月に米を買うと白い米が混じっているが、それは粘り気が無くなっ て油の質が変わるから、それを抑えるためにもち米を入れる。1年も玄米を常温で保 存したら完全に売り物にはならない。それにもかかわらず、新米が出て来る時に、金 利、倉敷料をプラスして前年産米を売ったので、卸も買わず、小売も買わない。それ で在庫がどんどん増えた。結局、5年くらい経って、過剰米となってその処理に何百 億円かを掛けることとなっている。米の政府による買い入れ、備蓄は減少し、その機 - 48 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● 能もなくなる。価格調整のための自主流通米等への助成は、米専業農家に対する価格 変動への補填となるが、低落した価格の90%の補填で生産者の一部拠出で行っていた。 WTOの生産調整下の青の政策である。しかし、価格は下がり続け、所得も保証され てはいない。成果の上がらぬものとなった。 米関係で残ったのは生産調整で、生産調整は、初めは米の所得並みの奨励金を出し ていた。1969年から1978年の水田利用再編までで、1978年の水田利用再編対策で転作 を重視するようになって変わってくる。生産調整は水田に全部転作をすることになっ たので、転作保障をするから米の所得補償を半分にするとして、生産調整の経費を 削っていく。最終的に米の所得補償という考え方が無くなるのは、1990年代後半、生 産調整が全部転作の予算になった時である。2000年代になると転作奨励金を中心とし た生産調整となり、2004年にまた変わる。直接支払い方式といい、米だけではなく、 米と麦と大豆と甜菜、原料用馬鈴薯の4品目の品目横断的経営安定対策となる。4つ の品目の専業農家を対象にした所得政策に切り替えている<図3>。4つの品目を合 わせて、固定部分と変動部分に分けて所得補償をやっていくという方式に変えている。 これも青の政策である。これによって、米の価格補償的なものは一切無くなっている。 <表4>は、一般的な意味の農業振興政策費、この経費の柱は価格政策で、野菜価 格安定、果実価格安定、鶏卵価格安定、飼料穀物備蓄対策、加工原料乳対策といった もの。交付金と補助金では、指定生乳生産者団体補給交付金、国内糖調整交付金、こ れはサトウキビとビート。牛肉等関税財源、これは牛肉に対して30何%かの関税を掛 けていることから、輸入差益を充てた子牛や畜産・酪農農家に対する奨励金である。 農業振興政策はこうした価格対策が多いが、例えば、国内糖、大豆、麦、原料用馬鈴 薯は北海道で輪作体系の作物で、いずれも輸入差益が財源になっている。加工原料乳 対策は輸入チーズやバターの関税で、牛乳に対する付加をしている。これも輸入差益 で、価格政策は、野菜価格安定基金以外では、鶏卵も液卵の輸入差益でやっていて、 ほとんど輸入差益が原資になっている。WTO以後は直接支払い政策といっても一般 財源は使わない安上がりな政策を求めてきたのである。 TPPになったらどうなるか。関税がゼロになり、輸入差益がゼロになり、北海道 の麦と大豆、甜菜も無くなっていく。サトウキビも同様、南と北を中心に、日本の農 業は無くなることになる。農水省がTPP参加への反論をあわてて出したのも、安上 がり農政さえできなくなるというのが本音なのかもしれない。 - 49 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● <図3> 日本的直接支払い方式(品目横断的経営安定対策) ① 生産条件格差是正対策の新・旧制度の比較 ② 収入減少影響緩和交付金 <表4> 農業生産振興費の主な対策 (単位:100万円) 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 農業生産振興費 53,516 61,108 44,145 50,738 ① 生産振興総合対策 13,242 21,233 ② 野菜価格安定及び 需給調整対策 9,716 9,249 9,507 9,580 ③ 果実価格安定及び 需給調整対策 1,277 1,260 1,953 ④ 鶏卵価格安定対策 1,402 1,376 1,373 1,337 ⑤ 飼料穀物備蓄対策 1,335 1,235 4,405 4,039 ⑥ 加工原料乳対策 20,068 20,250 20,811 22,551 注:補正後の金額である。 麦 大豆 てん菜 でん粉 販売額 助成額 原料用 ばれいしょ 麦作経営 安定資金 大豆 交付金 調整金 交付金 抱合せ による 実需者 負担 交付単価を決定 行政価格を決定 麦 大豆 てん菜 でん粉 原料用 ばれいしょ 過去の生産実績に基づく支払 =Σ(品目毎の単価× 品目毎の過去の生産実績) 過去の生産量・品質に基づく支払 =Σ(品目毎の単価(品質格差あり)×品質毎の生産量) 標準的収入 過去5カ年 中庸3カ年 の平均収入 当年収入 米の差額 麦の差額 大豆の差額 販売価格は収穫年の翌年 3月までの平均価格 補てんの原資は、標準的収入の 10%の減収に対応しうる額を、 予め農家1:国3の割合で拠出 品目ごとの 収入差額を   合算 補てん金 収入減 の9割 国【3】 農家【1】 農業災害補償制度の発動が見込まれるときは 共済金相当額を算定し、補てん金から控除 収入減 - 50 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● (4) 戸別所得補償の内実 生産者米価は2000年来安くなっている。そこで戸別所得補償が唱えられ選挙に勝ち、 昨年モデル事業として米の戸別所得補償がされている。ではなぜ、生産者米価は下 がったのだろうか。第1は備蓄をしなくなったからである。1996年、食糧法で政府が 100万t、全農が50万t、合計150万tの備蓄をするとした。その備蓄を100万tに削 り、しかも政府の買い入れを少なくしてきた。その結果、現在の在庫314万tのうち、 政府が持っているのは98万t。その中身は5、6年前からの米となっている。いざと いう時の食糧にはならない。備蓄の残りは生産者と生産者団体に任せている。生産者 と農協が持っている米で在庫となっている。価格調整をする場合、商品は市場から隔 離しなければならない。昭和の初め、農業恐慌の時、高橋是清はアメリカが絹の輸入 を拒否したので過剰となった在庫を、彼は「燃やせ」といった。このように市場から 隔離しなければ価格調整はできない。政府自身が行う備蓄ならともかく、農家や農協 の在庫備蓄として数え、出してはいけないといってもそれは無理。持っていても仕方 がないので、みんな安くても売る。従って、米価はぐんぐん下がる。とどまるところ がない。 その上に、コメの流通規制の緩和をしている。食管の時は、配給手帳があって地域 をだぶらせないように、お米屋さんは自分のところは何人の顧客を持っているという 許可制度だった。スーパーなどはお米屋さんの看板を借りて営業していた。それを 1996年にどこでも売ることができる登録制にして、ゆるくし、2004年には登録制から 届出制にしている。その結果、消費者が購入するお米屋さんのシェアは8%、43%は スーパーである<表5>。43%を販売しているスーパーは、卸を通じて買っている。 スーパーは6つの商社が持っているが、卸の株はその商社がほとんど持っている。ミ ツハシや神明といった東京、大阪の大手米卸は、三菱商事がミツハシの約25%、大阪 は33%を持っている。伊藤忠など他の商社を合わせれば、6~7割を商社が持ってい る。スーパーに行く米は商社が握っていることになる。 米の価格変動も変化してきている。商社が40%を握るまでの生産者米価は<図4> のようだった。魚沼産のコシヒカリは別として、人気銘柄の新潟コシヒカリ一般と、 きらら397で見ると、ほぼ9千円の差があって季節の変動がある。それが現在では生 産者米価は山なりにはなっていない<図5>。米穀年度は10月から翌年9月までであ る。今は新米が出かかった時が一番高く、それが段々安くなるという傾向となってい る。しかも、新潟コシヒカリ一般と、きらら397の格差は、全体が4千円くらいで縮 - 51 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● まっている。しかし、消費者米価の方は上がっている。スーパーは、安く買い叩いて、 売る時は大いに儲けていることになる。生産者は安く買われ、消費者は高く売り付け られ、政府の財政支出は少なくて済むというのが今の米政策となっている。 去年の戸別所得補償モデル方式。戸別所得補償方式といっているものは、下限価格 の設定である。1俵13,703円、それ以下になった場合にはその間を埋めることとなっ ている。昨年産の米価は、最低価格がだいたい1万3千円ほどになっている。しかし、 そのうちの1,700円くらいは10a当たり1万5千円の戸別所得補償。1万5千円は10a 当たりの収量を530㎏で計算して、60㎏では1,700円。価格はそれ以上に下がったので、 補正で同額近い補填をしているので60㎏当たり3,000円近くなっている。生産者の販 売額は1万円を割っている。これは介護保険と同じで、補償金はスーパーに流れ、そ れを官が税金から出している。 <表5> 米の購入先の推移 1996 年度 1998 年度 2000 年度 2002 年度 2004 年度 2006 年度 2007 年度 2009 年度 スーパーマーケット 24% 24% 28% 28% 33% 36% 37% 43% 農 家 直 売 14% 16% 20% 20% 21% 20% 17% 15% 産地直売所 - - - - - - - 3% 生 協 15% 13% 12% 11% 14% 9% 11% 8% 米穀専門店 23% 15% 12% 10% 6% 8% 7% 8% 農 協 7% 5% 5% 5% 4% 3% 3% 2% ディスカウントストア 0% 3% 3% 2% 2% 3% 2% 4% コンビニエンスストア 1% 0% - 0% 0% 0% 0% 0% デ パ ー ト 0% 0% 1% 0% 1% 1% 1% 0% そ の 他 1% 2% 1% 4% 6% 8% 7% 8% 親兄弟から無償でも らっている 15% 21% 18% 20% 14% 13% 14% 11% 資料:農林水産省「食料品消費モニター調査」、「食糧モニター調査」、(株)インテージ「多様な 流通における米の取引動向調査」 注:1) 2004年度以降は「食料品消費モニター調査」結果、2002年度以前は「食糧モニター調査」 結果である。 2002年度をもって「食糧モニター調査」は廃止されているため、2004年度以降と2002年度 以前の値は接続しない。 2007年度をもって「食料品消費モニター調査」は廃止されているため、2009年度以降の値 は接続しない。 2) 1998年度以前は回答方法が複数回答であったため、全体が100%となるように換算している。 3) ラウンドの関係で合計と内訳が一致しない場合がある。 - 52 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● <図4> 主要な産地品種銘柄別にみた入札価格の推移 資料:(財)全国米穀取引・価格形成センター調べ。 <図5> 最近の生産者米価と消費者米価の推移(60㎏) 資料:前図に同じ。 03年 04年 - 53 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● (5) アメリカとヨーロッパでは 今回の戸別所得補償方式には3千億円出されているが、実際はこの金額は商社に 行ったのと同じことになっている。それが現在の状況である。 1992年での日本の農業政策は専業農家に集約し、その人たちに対して経営保障をす るというのが目標だった。アメリカの場合は1993年の農業調整法からずっと価格保障 で、今でも続けている。2008年では予算額をまた上げて、価格保障だけでアメリカは 日本円で2兆8千億円くらい使っている。アメリカは自国の農家に対して価格保障を 行い、日本ではやってはならないという。ヨーロッパの場合は、直接支払い制度で経 営だけは守ろうとしている。西ドイツでは畑作で25haが平均だったが、東ドイツと一 緒になって平均の経営規模は大きくなっている。東ドイツでは今では個別経営で1千 haくらいの農地がある。そのため、ヨーロッパの直接支払い制度は例えば、25haの平 均ではなく、20haくらいの人がやっていけるところで切っている。それ以上の経営は 自分で稼いでいるのだから補償する必要は無い。日本とは逆の補償となっている。日 本の場合は農家を育成するためにお金を出す。例えば酪農にしても肉畜にしても、北 海道では100頭の乳牛が無いと酪農はやっていけない。乳価がそのままで、エサの価 格はぐんぐんと上がるので、つぎは120頭無いと続けられない。これでは基準がつね に大きくなるばかりとなる。どこかで息切れしてしまう。 日本の農業の場合、直接支払いなどは非常に難しい。それにもかかわらず政策の重 点を個別経営の補償において、それが今失敗している。そのために何とかそれを米で 取り戻そうと、小沢さんが中心になって戸別所得補償方式で票を取った。しかし、そ れ以上のことはできない。後の畜産などはほとんど変わらない。畜産や果樹など、競 争が激化してくれば専業農家の規模がだんだん大きくなってくるから、農家が増える とは考えられない。それが今の内容になっている。 これと同じようなことをやって失敗したのが、韓国。韓国は一生懸命に専業農家を 作ろうとして、貸し付けで農家の規模を拡大しようとした。しかし、畜産でいえば、 飼料価格などが非常に上がり、それに追い付けなかった。それで農家は借金漬けと なって韓国農業は今、低迷し、FTAではアメリカの言いなりになっている。 - 54 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● 4. アメリカの農産物自由化対応と市場開放政策 農業の場合、アメリカはウェーバー条項を守っている。これはガット・ウルグアイ・ラ ウンド前から、自分のところは農業の価格保障をやるが、あなた方はやってはいけないと いうもの。アメリカは絶対に主要品目の関税を撤廃しない、手をつけさせませんというの が、ウェーバー条項である。それをずっと貫いている。だから、アメリカの農家は農産物 価格支持政策の下で保護されつつ、その上で過剰になったものは輸出奨励金を付けて海外 に出している。これはEUも同じ。輸出奨励金は米では約30%で、外国に来る場合は3割 安くなって入ってくるということになる。競争力が高くて、後進国はいくら生産性を上げ ても容易に追い付かない。しかも、米はMA米でアメリカ産の米を半分買うようになって いる。これが日本に対する自由化の対応となっている。 牛肉については、O157が出ても自分たちの牛は大丈夫だと主張している。今回の韓国 との間も、日本と同じく牛の月齢問題が解決していない。 オレンジは自由化して日本に入っているが、日本の温州みかんは1個もアメリカに入っ ていない。静岡の三ケ日農協などはカナダに輸出している。 これは農業だけの問題ではなく、日本への市場要求はずっと続いている。一番激しく要 求があったのは1989年から1990年にかけての日米構造協議で、この中で銀行の持ち株制度 を止めさせられたり、労働者の派遣制度を入れたりして、産業構造も変わっている。日本 は社会資本の整備がされていないから、10年間で430兆円の整備をしろといわれ、日本政 府は社会資本、公共投資の政策で430兆円の計画を立てた。それで1990年から必死になっ て公共事業を行っている。途中でそれを630兆円に引き上げ、頓挫するものの、国内で土 建業者に大儲けをさせる土台が作られている。 もっと際立ってくるのが2000年に入ってで、2002年に小泉内閣になる。ここになると、 日米パートナーシップで、日米の包括協議に計画を出して、毎年首脳会談をやり、その報 告を求められている。その中で、例えば保険などにアメリカの会社が入ってくる。医療保 険と自動車保険は2年間、日本の中小の保険会社とアメリカの保険会社にやらせて、それ が定着してから、日本の一般大手の保険会社に損害保険をやらせるというふうに、市場を 開放している。法科大学院も同じ、最近のことでいえば、高速道路でオートバイの速度規 制が80㎞から100㎞以上になった。2人乗りもO.K.になった。これはハーレイ・ダビッ ドソンの要請によるもの。これらがひとつひとつ、首脳会談の報告事項になっている。 - 55 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● ひどいのは税制までがアメリカの制度をそのまま入れている。中小企業の継承税制とい うのは、経済産業省がアメリカの継承税制をそのまま入れたものである。日本の場合の中 小企業は、親父さんなんかが町工場でやって、それがだんだん大きくなって、3代目の孫 くらいになると100人、200人の従業員を抱えていたり、あるいは商店でも拡大して、それ をどうやって継承するかという問題である。農業の場合は相続税猶予制度があるが、中小 企業にはない。そこにアメリカの継承税制をそのまま入れている。アメリカの中小企業と いうのは大企業が子会社を作っていくもので、株の分割をしていくということになる。日 本の中小企業の人たちに株の分割をしろということにして、全部株化していく。銀行から の借り入れや親族で分割できない場合は従業員にも分割しろというのが継承税制で、それ で分割した場合、従業員は株をもらったから俺たちも独立したいとなる。そうすると会社 は訴訟が起こって潰れていく。そういうケースが増えてきている。中小企業の形成の過程 も全く考慮しないで、他国の制度をそのまま入れてくる。商法も会社法になった。日本の 家族制度にあった合資、合名、有限会社は無くなった。LLPとLLCになっている。こ の2つが日本の中小企業の今の言い方となっている。 今、TPPでも一番狙われているのは医療だといわれている。例えば、ゼネラルエレク トリック社はMRIの権利を持っている。それを日本で入れるとき、なるべく病院に施設 しないようにしている。別会社を作って、わざわざ病院からMRI設置場所に患者を導く ようになっている。これはゼネラルエレクトリック社の要望によるものである。最終的に は、日本の健保の体系を変えたいということである。それで民営化していくというところ が狙いである。 韓国では、農業を後退させ、シンガポール化している。去年NHKで放映していたが、 ロシアに1万ha韓国の企業が農地を買っている。それ以上にアフリカのスーダンでついこ の間67万ha買っている。アフリカでは20万haずつ2つの国で買っているから、アフリカで 100万ha以上買っていることになる。バイオテクノロジーへの関心とともに自分のところ で農地を確保できないから他国で確保している。韓国の場合は、現代とかサムソンとか、 大企業に買わせている。 5. TPP対策は出せるのか TPP対策では、今いろいろいわれていて、日本農業の対策を講じればTPPは入って - 56 - ● -自治総研通巻392号 2011年6月号-● もいいではないかという人もいる。要するに、農業のこれからの対策を明示すればよいと いっている。中にはどのくらいかかるのかを計算して3兆円から4兆円くらいかかるので はないかと、民主党の農業系議員でいう人もいる。その財源をどこに求めるかが問題で、 3、4兆円の場合は消費税を上げた場合に2%分を寄こせというのがある。これで農業に 対する安定した予算が確保できるという。消費税がどのようになるかは見当が付かないに しても、専業農家に対する奨励金を非専業農家が支払う結
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分类:经济学
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