首页 法人税法上机関関系制度

法人税法上机関関系制度

举报
开通vip

法人税法上机関関系制度 ドイツ法人税法上の機関関係制度における 少数株主保護 安 井 栄 二 一 は じ め に 二 ドイツ株式法における補償金支払規定 1.概 説 2.補 償 義 務 3.補償の種類 4.補償の適切性とその算定 5.補償請求権 6.契約の変更 7.補償請求権の消滅 8.小 括 三 日本の連結納税制度の適用範囲の拡大と少数株主保護 1.概 説 2.少数株主に対する権利侵害の内容 3.検 討 四 結びに代えて 一 は じ め に 2002年8月,我が国の法人税法に連結納税制度が導入され...

法人税法上机関関系制度
ドイツ法人税法上の機関関係 制度 关于办公室下班关闭电源制度矿山事故隐患举报和奖励制度制度下载人事管理制度doc盘点制度下载 における 少数株主保護 安 井 栄 二 一 は じ め に 二 ドイツ株式法における補償金支払規定 1.概 説 2.補 償 義 務 3.補償の種類 4.補償の適切性とその算定 5.補償請求権 6.契約の変更 7.補償請求権の消滅 8.小 括 三 日本の連結納税制度の適用範囲の拡大と少数株主保護 1.概 説 2.少数株主に対する権利侵害の内容 3.検 討 四 結びに代えて 一 は じ め に 2002年8月,我が国の法人税法に連結納税制度が導入された。導入当初 は2年間の時限措置として2%の連結付加税が存在していたこともあって, 2002年9月の段階で,連結納税制度の適用を申請する企業グループは164 グループにとどまっていた。しかしその後,連結納税制度の適用を申請す るグループは年々増加し,2005年9月の段階では,累計で686グループが 連結納税制度の適用を申請している1)。 このように,日本の連結納税制度は,導入されて数年が経過し,連結納 254 ( 824 ) 税制度を適用する企業グループが増加し,順調に運用がなされているよう である。しかし,連結納税制度には,その導入後しばらくしてはじめて表 面化する問題が存在する。それは,連結子法人の連結グループからの離脱 の問題である。 日本の連結納税制度は,連結グループの範囲を,親会社および親会社に よる完全支配関係を有する子会社,すなわち100%子会社に限定してい る2)。そして,ある企業グループが連結納税制度を適用するかどうかにつ いては,その企業グループの選択に委ねているが,当該企業グループが連 結納税制度の適用を選択した場合には,継続適用が求められ,100%子会 社はすべて強制加入となる。各子会社の選択加入は許されない(法人税法 4条の2)。もし,これらが自由に行われるとすれば,各企業グループは その年ごとの税負担の多寡で連結納税制度の適用を取りやめたり,適用さ れる子会社の範囲を決めたりすることができてしまい,租税回避につなが る可能性があるからである3)。 しかし,連結グループの範囲が100%子会社に限定されているため,何 らかの理由により親会社が100%子会社のうち特定の子会社を連結納税の 範囲から除外したいと考えた場合4),親会社が有する当該子会社の株式等 をごくわずか外部に売却すること5)によって,当該子会社を連結納税の範 囲から除外することができてしまう。これでは,100%子会社をすべて強 制加入としたことの意義が損なわれてしまうだろう。 それでは,連結グループの範囲を拡大することはできるのであろうか。 この点に関連して,日本の連結納税制度の導入のための議論が行われた政 府税制調査会が,2001年10月に公表した「連結納税制度の基本的考え方」 の中に,連結グループの範囲を100%子会社に限定した理由として,以下 のような記述がある。 「連結納税制度の対象となる企業グループとは,その実質において単一の 法人とみなしうる一体性を持ったもの,すなわち,経営が一の法人に支配 されるとともに利益がその一の法人に帰属する完全に一体と認められる企 255 ( 825 ) ドイツ法人税法上の機関関係制度における少数株主保護(安井) 業グループとすべきであり,親会社とその親会社に発行済株式の全部を直 接又は間接に保有される子会社(100%子会社)をその対象範囲とするこ とが適当である。また,子会社の少数株主が子会社の欠損金の繰越控除の メリットを享受できないという問題や制度が過度に複雑化するという問題 が生ずることを避けるためにも,対象子会社の範囲を100%子会社とする ことが適当である。」 6)。 すなわち,連結納税制度の導入理由としてもともと主張されていたのが, 子会社形態をとるのか事業部制をとるのかという企業組織形態の選択に対 する「税制の中立性」であり7),そのために連結納税制度を導入するので あれば,その適用範囲はおのずと100%子会社に限定されるというのであ る。しかしながら,このことは必ずしも自明のことではない。たとえば, 増井教授によれば,連結納税制度の適用範囲が100%子会社に限定される ことは,完全子会社形態を選択するよう税制上の誘導効果が生じるとされ る8)。すなわち,連結納税制度の適用範囲を100%子会社に限定すること で,今度は完全子会社形態と非完全子会社形態の間で「税制の中立性」が 失われることになるのである。また,日本と同型の連結納税制度を採用し ているアメリカやフランスでは,後述するように,連結納税制度の適用範 囲が100%子会社に限定されていない。したがって,上記のような連結納 税制度の導入理由をもって,連結納税制度の適用範囲を100%子会社に限 定しなければならない,ということには必ずしもならないのである。 しかしながら,上記「連結納税制度の基本的考え方」の後段部分では, 連結納税制度の適用範囲を100%子会社に限定するもう一つの理由として, 少数株主保護が挙げられている。すなわち,少数株主が存在すれば,少数 株主の権利を侵害することになり,その株主の権利保護を図ると制度が複 雑化するので,もともと少数株主が存在しないように,連結グループの範 囲を100%子会社に限定したというのである。たしかに,連結納税制度の 適用により従属会社の少数株主の権利が侵害されるということになれば, 当該少数株主の保護のための枠組みが必要となる。そして,それにより制 256 ( 826 ) 立命館法学 2006 年 3 号(307号) 度が複雑化するのであれば,制度を簡略化するために,連結納税制度の適 用範囲を100%子会社に限定して,もともと少数株主が存在しないように 制度設計をするということが考えられるだろう。 それでは,連結納税制度を採用している諸外国はこの点についてどのよ うにしているのであろうか。当該諸外国も連結グループの範囲を100%子 会社に限定しているのであろうか。たとえば,オランダ9)やオーストラリ ア10)では日本と同様に連結グループの範囲を100%子会社に限定している。 しかし,それら以外の国では100%子会社に限定していない。たとえば, フランス11)では連結グループの範囲を親会社の持株割合95%以上の子会 社とし,アメリカ12)では80%以上,イギリス13)では75%以上,ドイツ14) にいたっては50%超としている。このように,連結グループの範囲は必ず しも100%子会社に限定されていない。 そうであるならば,これらの国々では少数株主の権利はどのように保護 されているのであろうか。この点について,とくにドイツでは,株式法 (Aktiengesetz,以下 AktG と表記する)の中で少数株主の保護全般に関 する規定が設けられている15)。ここで,ドイツの連結納税制度と AktG の 関係について若干説明しておくと,ドイツの連結納税制度に相当する,ド イツ法人税法(Korperschaftsteuergesetz,以下 KStG と表記する)上の 機関関係制度(Organschaft)の適用要件として,利益供出契約 (Gewinnabfuhrungsvertrag)が支配会社と従属会社の間で締結される必 要があり(KStG 14条1項1段1号),この契約を有効に締結するために は,AktG 291条以下の規定の内容を踏まえなければならない16)。そして, その規定の中には,少数株主保護制度としての補償(Ausgleich,AktG 304条)や代償(Ab ndung,AktG 305条)に関する規定があり,このよ うな制度によって少数株主の権利が保護されている。 そこで,本稿では,まず,ドイツの機関関係制度における少数株主保護 に関係する AktG 304条の補償制度を概観する17)。そして,それによって 得られた示唆をもとに,日本の連結納税制度において連結グループの範囲 257 ( 827 ) ドイツ法人税法上の機関関係制度における少数株主保護(安井) を拡大することができるか,できるのであればどうすればよいのか,とい うことにつき検討していきたいと思う。 二 ドイツ株式法における補償金支払規定 1.概 説 AktG 304条は,利益供出契約における少数株主の補償に関する請求権 を規定し,その補償の方法及び最低額の基準を定め,さらにこの補償が形 骸化しないための特別の裁判上の手続を予定する18)。その目的は,利益供 出契約によって少数株主に対して引き起こされる損失から少数株主を保護 することにある19)。なぜなら,利益供出契約は,従属会社が契約期間中獲 得した全利益を支配会社に対して供出する義務を従属会社に負わせるもの であり,それによって従属会社の少数株主の配当受給権を侵害するからで ある。つまり,この補償の規定により,少数株主は,利益供出契約によっ て発生する少数株主に対する権利侵害を甘受することなく,それまで同様 に当該従属会社に留まることができるのである20)。 上記のような目的から,AktG 304条は強行規定であると解されてい る21)。これは,AktG 304条3項が「(AktG 304条)1項に違反して,補償 をまったく定めない契約は無効である。」と定めていることからも明らか である。 2.補 償 義 務 従属会社に少数株主が存在する場合,利益供出契約は,AktG 304条に 定める補償を予定しなければならない。そこで,従属会社に少数株主が存 在するということが,いつの時点で判断されるのかということが問題とな る。この点については,AktG 304条1項3段によれば,利益供出契約の 締結の承認を決議した株主総会の日がその基準日である。この日に従属会 社が少数株主を有していなければ,AktG 304条に定める補償の定めを利 258 ( 828 ) 立命館法学 2006 年 3 号(307号) 益供出契約におく必要はない22)。 では,ここで問題となる補償を受けることができる少数株主とはどのよ うな者であるのか。また,その少数株主に対する補償義務を負う者はどの ような者か。以下では,それらについてみていくことにする。 (1) 補償を受けることができる少数株主の範囲 AktG 304条に定める補償を受けることができる者は,従属会社の少数 株主である。では,その少数株主とはどのような者であるのだろうか。こ れについて,AktG 304条やAktG のその他の規定には定義されていない。 そのため,この点について複数の見解が主張されている。 第一の見解は,従属会社の議決権の過半数を有する支配会社を除く従属 会社の全ての株主が少数株主である,とするものである23)。これは,単純 に支配会社以外の株主を少数株主と考える見解である。 第二の見解は,第一の見解での少数株主から,その株主のうち支配会社 を100%支配するもしくは支配会社から100%支配を受けている株主または 利益供出契約もしくは支配契約によりその支配会社と結合している株主を 除いた株主を少数株主である,とするものである24)。これは,支配会社以 外の株主であっても,支配会社と経済的に一体であると考えられる者は少 数株主ではないと考える見解である。 第三の見解は,第二の見解での少数株主から,さらにその株主と支配会 社との間に,たとえば70%の持株関係があるような,単なる支配従属関係 が存在する場合に,その株主もその少数株主の範囲から除外する,という ものである25)。これは,支配会社との経済的一体性を第二の見解よりも広 く考える見解である。 では,AktG 304条において,少数株主という概念はどのように解すべ きであろうか。これは,AktG 304条の意味と目的から解釈によってのみ 決定される26)。AktG 304条の目的は,利益供出契約によって少数株主に 対して引き起こされる損失から少数株主を保護することである。この目的 からすれば,利益供出契約によって従属会社に対する配当請求権を奪われ 259 ( 829 ) ドイツ法人税法上の機関関係制度における少数株主保護(安井) ることのみでは AktG 304条の保護を必要とする少数株主とはいえない。 なぜなら,たとえば従属会社(A)と利益供出契約を締結した支配会社 (B)が,さらにBを支配する会社(C)と利益供出契約を締結していて, CがAの株主であった場合,CはAから直接配当を受けることはできない が,Bを経由して,Aが獲得した利益のすべてを得ることができるからで ある。そのため,利益供出契約によって従属会社に対する配当請求権を奪 われ,かつ支配会社との関係においてもその損害を回復することができな い株主が,AktG 304条の保護を必要とすると解される27)。 このような解釈によれば,第一の見解は適当ではない28)。また,第三の 見解については,このようなケースにおいて当該株主と支配会社は経済的 一体ではなく,当該株主を少数株主の範囲から除外する根拠とはならない という批判がある29)。そのため,第二の見解が妥当であると考えられてい る30)。 (2) 補償義務者 AktG 304条によれば,支配会社と従属会社の間で締結される利益供出 契約には,前述のような少数株主に対する補償が予定されなければならな い。では,この補償の義務履行者は誰であろうか。これについても, AktG 304条は規定していない。 AktG 304条の意味と目的からすれば,この義務履行者は,従属会社で ある31)か支配会社である32)と考えられる。ただし,従属会社を義務履行 者であるとする見解に対しては,利益供出契約によって利益を得る支配会 社がその契約によって不利益を被る少数株主に対してその補償の義務を負 うべきである33),利益を供出する従属会社に対する補償請求権を認めても 少数株主の保護には無益である34),といった様々な批判がなされている。 したがって,支配会社をこの補償の義務履行者であるとする見解が支配的 である35)。 260 ( 830 ) 立命館法学 2006 年 3 号(307号) 3.補償の種類 AktG 304条によれば,利益供出契約は少数株主のための補償を予定し なければならない。では,どのような補償を予定しなければならないので あろうか。以下では,その内容についてみていくことにする。 (1) 固 定 補 償 利益供出契約は,少数株主のための補償として,従属会社に対する少数 株主の持分に対応する反復的な現金支払(補償金支払,Ausgleichs- zahlung)を予定しなければならない(AktG 304条1項1段)。そして, この補償金の支払として,事前に確定された一定の金額が少数株主に毎年 支払われることが求められている(AktG 304条2項1段)。すなわち,こ の補償金の支払額は,従属会社が実際に獲得した利益に関係なく事前に算 定された固定額である。したがって,このような種類の補償は,固定補償 (feste Ausgleich)と呼ばれている36)。 (2) 不 定 補 償 これに対して,支配会社が株式会社または株式合資会社である場合,上 記の補償方法の代わりに,毎期の補償金の支払額を変動させる補償の方法 が可能である(AktG 304条2項2段)。 この方法による補償金の支払額は次のように算定される。まず,少数株 主の従属会社に対する持分が,支配会社に対する持分に換算される。その 際に用いられる換算比率は,支配会社と従属会社が合併したと仮定した場 合の合併比率である。そして,支配会社が実際に獲得した利益のうち,換 算された持分に対応する利益持分の金額が,補償金として少数株主に支払 われる。この補償方法は,補償金の支払額がつねに不定であることから, 上記の補償方法との対比で,不定補償(variable Ausgleich)と呼ばれて いる37)。 (3) 補償方法の選択と少数株主への拘束 支配会社が株式会社または株式合資会社である場合,AktG 304条2項 の文言からすれば,利益供出契約の契約当事者は,補償の方法として固定 261 ( 831 ) ドイツ法人税法上の機関関係制度における少数株主保護(安井) 補償と不定補償のどちらかを選択することができる38)。補償の方法の選択 権が利益供出契約の契約当事者にあることから,建前としては,支配会社 のみで補償の方法を選択することはできない。しかし,支配会社が,同時 に従属会社の多数株主であることを勘案すれば,事実上支配会社によって 補償の方法が選択されることになる。 補償の方法は,基本的には固定補償と不定補償のどちらか一方の方法が 選択される。ただし,これはどちらか一方を選択しなければならないとい うことではなく,二つの方法を取り入れることは否定されない39)。このこ とは,たとえば,不定補償の場合に補償の最低額を定めて,ある年度の不 定補償による補償金額が当該最低額に達しない場合は,当該最低額を補償 金として支払う,というような方法において実施される40)。 このように,支配会社が株式会社または株式合資会社である場合,補償 の方法は契約当事者の選択に委ねられるのが原則ではあるが,この選択が 制限される例外的なケースがある。それは,支配会社側の当事者が複数存 在している場合である。たとえば,複数の会社が一つの会社を従属会社と する利益供出契約を締結した場合がそれである。このような利益供出契約 はそれ自体としては有効である。しかし,このような場合には補償の方法 として不定補償を選択することはできないとされる41)。その理由としては, 不定補償の算定は,補償義務者と従属会社との合併を仮想することが基礎 にあるため,支配会社側に複数の当事者が存在する場合,当該合併を仮想 することができないためであるとされる42)。 以上のように決定された補償の方法について,少数株主は異議を申し立 てることはできない。これは,少数株主が補償の方法についての決定権を 有しないためであり,このことは,AktG 304条の文言上明らかである。 (4) コンツェルンが形成されている場合 支配従属関係が複数存在するようなコンツェルンが形成されている,す なわち,たとえば親会社と子会社の他に子会社に支配されている孫会社が 存在するような場合,利益供出契約がどの段階において締結されているか, 262 ( 832 ) 立命館法学 2006 年 3 号(307号) そして,いつ締結されたかによって,取扱いが異なるなど,特別な問題が 存在する43)。以下では,親会社,子会社および孫会社で構成されるコン ツェルンで子会社および孫会社に少数株主が存在しているケースを前提と して,個別の場合に分けてみていくことにする。 a)親会社子会社間および子会社孫会社間それぞれにおいて利益供出 契約が締結されている場合 親会社子会社間および子会社孫会社間それぞれにおいて利益供出契約が 締結されている場合には,さらにそれぞれの契約がいつ締結されたかに よって結論が異なる。 まず,それぞれの契約が同時に締結された,または,親会社子会社間の 契約が子会社孫会社間の契約に先行して締結された場合,親会社子会社間 の契約にかかる補償の方法に関しては通常通りである44)。そして,子会社 孫会社間の契約にかかる補償の方法は,子会社がたとえ株式会社または株 式合資会社であっても,固定補償しか認められない45)。子会社の親会社に 対する利益供出義務によって,不定補償の算定の基礎となる子会社に対す る利益持分が存在しないからである。 次に,親会社子会社間の契約が子会社孫会社間の契約に遅れて締結され た場合は,子会社孫会社間の契約にかかる補償の方法が固定補償であれば, 親会社子会社間の契約にかかる補償の方法に関しては通常通りである46)。 そして,子会社孫会社間の契約にかかる補償の方法が不定補償である場合, 親会社子会社間の契約にかかる補償の方法に関してはこの場合も特別の問 題は存在しない47)。しかしながら,この場合,子会社の親会社に対する利 益供出義務により不定補償の算定の基礎となる子会社に対する利益持分が 存在しなくなることから,孫会社の少数株主の権利が害されるのではない かとの問題提起がなされている48)。この問題提起に対しては,AktG 307 条を類推適用して子会社孫会社間の契約を終了させるとする見解49)や重 大な理由による契約の解除によって契約の終了を可能とさせる見解50),さ らには契約を適合させるとする見解51)が主張されているが,未だに議論 263 ( 833 ) ドイツ法人税法上の機関関係制度における少数株主保護(安井) は決着がついていない52)。ただし,AktG 307条の類推適用を主張する見 解に対して,AktG 307条は少数株主が新たに追加した場合に限られるこ とが文言上明らかであり類推適用は認められないとする批判や,重大な理 由による契約の解除を主張する見解に対して,当該解除権は孫会社にのみ 帰属し少数株主には帰属しないとする批判がなされている53)。 b)親会社孫会社間でのみ利益供出契約が締結されている場合 親会社孫会社間でのみ利益供出契約が締結されている場合,孫会社の少 数株主は,子会社ではなく親会社に対して AktG 304条に定める補償を請 求することができる54)。ここで,子会社が孫会社の少数株主にあたるかと いう問題が出てくるが,当該子会社が親会社の100%子会社でない限り, 当該子会社は孫会社の少数株主にあたるとされる55)。子会社の少数株主は, この場合,AktG 304条に定める補償を受ける地位にはない。 c)親会社子会社間または子会社孫会社間のどちらか一方でのみ利益 供出契約が締結されている場合 親会社子会社間または子会社孫会社間のどちらか一方でのみ利益供出契 約が締結されている場合,当該契約にかかる補償の方法については,通常 通りである56)。ただし,このケースでは,利益供出契約が締結されていな い親会社子会社間または子会社孫会社間では事実上の従属関係が存在する ことになり,AktG 311条以下の規制(事実上のコンツェルンに対する規 制)を受けることがある57)。 4.補償の適切性とその算定 AktG 304条によれば,固定補償・不定補償ともに補償は適切でなけれ ばならない。では,どのような場合に補償が適切であるといえるのであろ うか。それは,AktG 304条の趣旨から判断される。すなわち,利益供出 契約により発生する少数株主の損失を補償するのが,AktG 304条の趣旨 であった58)。この趣旨からすれば,少数株主の当該損失は完全に補償され なければならず,そのような補償のみが適切であるといえる59)。 264 ( 834 ) 立命館法学 2006 年 3 号(307号) それでは,この適切な補償の算定方法について,以下に固定補償と不定 補償の算定方法をみていくことにする。 (1) 固 定 補 償 固定補償は,少数株主の各株式へ平均的な利益持分として配当されるこ とが可能であると予想される金額が毎年支払われることであり,その金額 は,従属会社の従来の収益状況および将来の収益見込により算定される (AktG 304条2項1段)。補償金額の算定基準が,従属会社の従来の収益 状況および将来の収益見込であるのは,AktG が少数株主をあたかも利益 供出契約が存在しないかのような状況に置こうとするためである60)。すな わち,仮に利益供出契約が存在しなければ,少数株主は従属会社から当該 事業年度の収益に応じて配当を受けることができるが,利益供出契約によ り従属会社は支配会社に収益を供出するため,従属会社に配当の原資が存 在しない。そこで,その配当に代わる補償金を少数株主が受け取ることが できれば,少数株主は利益供出契約が存在しないかのような状況に置かれ ることとなる。そのためには,将来の従属会社の配当と同等の補償金額を 算定する必要があり,その算定には従属会社の将来の収益見込が確実に予 想されなければならない。そして,そのために従属会社の従来の収益状況 が必要となる。 そこで,以下では従属会社の従来の収益状況及び将来の収益見込がどの ように算定されるのかみていくことにする。 a)従来の収益状況の算定 従来の収益状況は,過年度の状況であり,決算によりすでに明らかと なっている。よって,ここで改めてその算定方法について述べる必要がな いと思われるかもしれない。しかし,固定補償の金額を算定するために求 められる従来の収益状況の数値は,過年度の年次決算書類に表れた当期剰 余金の額ではない61)。なぜなら,固定補償の金額を算定するために求めら れる従来の収益状況の数値は,将来の収益見込の金額を算定するために求 められるものであり,従来の収益状況の数値に異常な損益が紛れ込んでい 265 ( 835 ) ドイツ法人税法上の機関関係制度における少数株主保護(安井) たとすると,将来の収益見込の金額が正しく算定されないこととなるため である。そのため,年次決算の収益報告書(Ertragsausweis)の当期剰余 金を前提として,それに以下のような修正が加えられて従来の収益状況の 数値が算定される62)。まず,前述のとおり,異常な収益および損失はな かったものとされ,繰越損失がある場合にはそれもなかったものとされ る63)。さらに,任意積立金として積立てられた金額は加算される64)。その 一方で,法定積立金は,当該数値の算定には考慮されず加算されない65)。 その理由は,AktG 304条にいう補償が,少数株主が利益供出契約により 配当を受けることが出来ない損失を補償するためのものであり,法定積立 金は法律により積立てることが強制されているため,たとえ利益供出契約 が締結されていなかったとしても,法定積立金として積立てられる利益に ついて少数株主は配当を受けることが出来ないので,その分についてまで 補償金額の算定に考慮する必要はないからである。 b)将来の収益見込の算定 将来の収益見込は,従来の収益状況を基礎として算定される。これは, 利益供出契約が存在していなければ収益がどのように生じていたのかとい う仮定の問題である。そのため,将来の収益見込の予測に関しては,つね に著しい不確実性を伴い,明白な算定基準は存在しない66)。したがって, 将来の収益見込の算定は個々のケースにより様々であるが,一般的には, 異なる複数の評価方法により収益見込額の算定が行われ,それによって予 測の不確実性を解消しようとする試みが行われている67)。 また,従来の収益状況が赤字であり,それにより将来の収益見込も赤字 であるとされた場合,補償金額がゼロとして算定される。これに対しては, 会社財産の清算価値を市場金利で乗じた利子分が最低補償として少数株主 に補償されるべきであるとする見解がある68)。この見解は,赤字である従 属会社の事業が清算されずに継続されるのは,将来的にその事業が収益を 生み出す,または,その事業を清算するより継続するほうが有益であると 支配会社が判断するからであり,利益供出契約によりその有益性を享受で 266 ( 836 ) 立命館法学 2006 年 3 号(307号) きない少数株主への補償が必要であるという考え方が前提となる69)。しか しながら,この見解は否定される70)。すなわち,上述したとおり,AktG 304条にいう補償が,少数株主が利益供出契約により配当を受けることが 出来ないという損失を補償するためのものであり,利益供出契約が存在し ていなくても少数株主が配当を受けることが出来ないような赤字の場合に 補償は必要ないからである。 (2) 不 定 補 償 支配会社が株式会社または株式合資会社である場合,固定補償ではなく, 支配会社の利益に左右される不定補償を,AktG 304条にいう補償の方法 とすることができる(AktG 304条2項2段)。不定補償は支配会社の個々 の株式の利益持分を基準とするので,補償金額の算定の際には,仮に合併 したとすれば従属会社の株式に対して支配会社の株式が割り当てられるこ ととなる合併比率により,少数株主の従属会社に対する持分が,支配会社 に対する持分に換算される(AktG 304条2項3段)。そして,換算された 持分に対応する支配会社の利益持分の金額が不定補償の金額となるが,こ こでいう利益持分とは,支配会社の当期剰余金に対する持分ではなく,支 配会社の株主に実際に支払われた配当であると解釈されている71)。 しかし,この解釈による場合,不定補償が著しく低く算定されるという 問題が生じる。それは,不定補償の金額の算定の基準が支配会社の株主に 実際に支払われた配当であることに由来する。すなわち,一般に株式会社 が株主に対して支払う配当金は当該会社の株主総会の議決によりその金額 が決定される。しかしながら,このようなケースにおいて支配会社が,少 数株主に対して支払う補償金額を低くするために,利益供出契約の契約期 間中の配当金を低く設定しておけば,従属会社の少数株主の犠牲の下に, 支配会社は,利益を内部留保することができる。 そこで,このような問題を防ぐために,不定補償の場合にはそれと同時 に固定補償が補償の最低額として取り決められなければならないとする見 解72)や,AktG 304条にいう利益持分の概念を支配会社の株主に実際に支 267 ( 837 ) ドイツ法人税法上の機関関係制度における少数株主保護(安井) 払われた配当ではなく支配会社の当期剰余金に対する持分と解釈すべきで あるとする見解73)が主張されている。 しかしながら,上記のような解釈は,AktG の文言や立法趣旨に反する とされる74)。また,その支配会社の信義(Glauben)と誠実(Treu)に反 する濫用的な配当政策により,支配会社の実際に支払う配当金の額が少な く,そのために不定補償の金額が著しく低い場合には,補償金として通常 であれば受け取ることができると思われる金額との差額を,少数株主が損 害賠償として民事訴訟において支配会社に請求できるとされる75)。そのた め,上記のような問題を回避するためにわざわざ AktG の文言や立法趣旨 に反する解釈をとる必要はないと考えられるだろう。したがって,AktG 304条にいう利益持分とは,支配会社の株主に実際に支払われた配当であ るとされる。 (3) 補償が適切でない場合 利益供出契約により取り決められる補償は適切なものでなければならな いが,実際に取り決められた補償が適切ではなかった場合やそもそも補償 が取り決められていなかった場合,当該契約はどのように取り扱われるの であろうか。 まず,利益供出契約に補償が取り決められていなかった場合は,当該契 約は無効である(AktG 304条3項1段)。これに対して,利益供出契約に 取り決められた補償が適切でなかった場合は,当該契約は無効ではなく, また,当該契約の取消や,当該契約の変更により補償が不適切となった場 合の当該変更に同意した株主総会決議の取消もできない(AktG 304条3 項2段)。この場合,少数株主は,裁判手続法(Spruchverfahrengesetz, 以下 SpruchG と表記する)に規定される裁判手続の申立をすることしか できない76)。この裁判手続では,当該補償についてそれが適切であるかど うかが審査され,当該補償が不適切であると判断されれば,その手続にお いて適切な補償金額が算定される。このような取扱いとなっているのは, 補償が不適切である場合に利益供出契約を無効または取消しうるとすると, 268 ( 838 ) 立命館法学 2006 年 3 号(307号) 少数株主を含めたすべての関係者にとって有益ではないとされるからであ る77)。 この裁判手続において当該補償の金額が不適切であると判断され,支配 会社が,当該補償の金額を適切な補償金額として算定された金額まで引き 上げることを裁判所から命じられた場合,裁判の確定の日から2ヶ月以内 であれば,支配会社は,当該利益供出契約を即時に解除することができる (AktG 304条4項)。当該手続の判決によって増額する補償金額は,支配 会社にとって当該契約の締結の際に予見できなかった負担であり,何らの 救済策もなく,支配会社に対してそのような負担を強いるのはあまりにも 酷であるという立法者の判断により,このような解除権が認められてい る78)。 5.補償請求権 AktG 304条によれば,利益供出契約は少数株主のために適切な補償を 予定しなければならず,それによって,支配会社は少数株主に対し,適切 な補償金額の支払を行う義務を負う。それでは,少数株主は支配会社に対 して補償金の支払を直接求める請求権を有しているのであろうか。この点 について,利益供出契約の締結当事者は支配会社と従属会社であるが,支 配会社に当該契約の義務履行を直接求める請求権が少数株主に認められて いる79)。 補償請求権が少数株主に認められているとすれば,次に,その請求権が いつ発生するのかということが問題となる。この問題については,補償の 方法が固定補償であるか不定補償であるかによりその時期が異なる可能性 がある。まず,固定補償の場合は,AktG に特別な規定が存在しないため, 請求権の発生時点は契約により自由に設定することができる80)。通常は, 毎期の定例の株主総会の開催日とされる81)。これに対して,不定補償の場 合は,その請求権の発生時点について固定補償の場合と比べて若干の制約 がある。それは,支配会社の株主総会による利益処分決議の後でなければ 269 ( 839 ) ドイツ法人税法上の機関関係制度における少数株主保護(安井) ならないということである。なぜなら,不定補償の金額は,支配会社が株 主に実際に支払う配当金を基準として算定されるので,支配会社の株主総 会で支配会社の利益処分案が決議されない限り,不定補償の金額が確定し ないためである。したがって,不定補償により補償を受ける少数株主は, 通常,支配会社の株主総会において利益処分決議がなされた後に補償金を 請求することができる82)。 また,AktG 304条にいう補償の趣旨からすれば,この補償請求権の実 際の行使が少数株主に限られる必要はないので,この請求権の譲渡や差押 は可能である83)。 6.契約の変更 固定補償における補償金額または不定補償における換算比率などの利益 供出契約における補償の定めは,当該契約の締結日ではなく,AktG 293 条1項に基づく当該契約の承認決議が行われる株主総会の開催日における 状況を基準として,確定される84)。これは,この株主総会における議決の 時点において従属会社が少数株主を有しない場合には当該補償の定めをお く必要はない,という AktG 304条1項3段の規定の反対解釈である85)。 そして,このように確定された当該契約の補償の定めは,当該利益供出契 約の有効期間中つねに用いられる86)。 しかしながら,利益供出契約は,KStG 上の機関関係制度の適用のため の要件として有効期間が5年以上でなければならないという期間の下限の 制限があるものの(KStG 14条1項1段3号),上限についてはまったく 制限がない。すなわち,有効期間の定めを置かない利益供出契約の締結も 有効である。そのような期限の定めのない利益供出契約が締結された場合, その契約の有効期間中に,当該補償金額または換算比率の算定の基準とな る事情が変わらないという保証はなく,むしろ契約締結当事者が利益供出 契約においてこのような変更についてあらかじめ配慮することはまれでは ない87)。 270 ( 840 ) 立命館法学 2006 年 3 号(307号) そこで,利益供出契約の締結の際に,適合約款(Anpassungsklauseln) が取り決められることがある88)。この適合約款とは,どのような事情の変 更が当該契約において予定された補償にどのように影響することとなるの かということについて取り決められたものである。そして,利益供出契約 にこの適合約款の取決めがあり,当該補償金額または換算比率の算定の基 準となった事情が変更された場合,当該契約の補償の定めは,その変更後 の事情に応じて変更,すなわち適合させられることとなる。ただし, AktG は,この適合約款の取決めに関する規定を有していない。そのため に,利益供出契約においてこのような適合約款を取り決めることが許され るのかが問題となる89)。この問題については,AktG 304条1項が適切な 補償を求めていることからすれば,補償金額または換算比率の算定の基準 となる事情が大きく変わり,変更後の事情からして当初算定された補償の 定めがもはや適切ではないという場合には,当該補償の定めは変更される 必要があり,これを事前に取り決める適合約款は許されると考えられる90)。 また,利益供出契約は,企業契約であり,契約自由の原則に基づき強行法 規に反しない限りにおいて,契約締結当事者は契約内容を自由に設定する ことができるので,当該契約内容の一部として,このような適合約款を取 り決めることは可能である,とも考えられる91)。 このように取り決められる適合約款の法的効果は,変更された諸事情に 対して当該補償の定めが自動的に適合させられることである92)。この適合 により補償金額が当初の金額より増額される場合,少数株主は,支配会社 に対して適合後の補償を請求することができる。少数株主のこの請求に支 配会社が応じない場合,少数株主は,通常の訴訟ではなく,前述の裁判手 続93)においてのみ裁判所に提訴することができる。これは,補償の適合 の問題は AktG 304条にいう補償の適切性の問題であり,補償の適切性の 問題については,前述の裁判手続において審理されることになっているか らである94)。 以上のように,支配会社と従属会社の間で締結される利益供出契約に適 271 ( 841 ) ドイツ法人税法上の機関関係制度における少数株主保護(安井) 合約款が取り決められていた場合,当該補償の定めの基準となった事情が 変更されると,変更された諸事情に対して当該補償の定めが自動的に適合 させられる。それでは,当該補償の定めの基準となった事情が変更された にもかかわらず,当該利益供出契約に適合約款が取り決められていなかっ た場合,当該補償の定めは適合させられないのであろうか。この問題につ いては,AktG に規定がなく,学説上も明らかにされていないとされる95)。 しかしながら,AktG 304条にいう補償は適切でなければならない(AktG 304条1項)。そうであるならば,たとえその適合約款の取決めがなくても, 当該補償の定めの基準となった事情が変更され当該補償の定めが適切なも のでなくなったのであれば,当該補償の定めを適合させる必要があると考 えられる。したがって,利益供出契約に適合約款の取決めがなくても,少 数株主は前述の裁判手続において,当該補償の定めの適合を求めることが できる96)。 7.補償請求権の消滅 利益供出契約は,少数株主の権利を保護するために,AktG 304条に定 める補償を予定しなければならない。そして,利益供出契約におけるこの 補償の定めにより,少数株主は支配会社(場合によっては従属会社)に対 して,当該補償の請求権を有する。すなわち,少数株主は従属会社の株式 を所有していることにより,この請求権を有することになる。したがって, 少数株主がその有する従属会社の株式を譲渡した場合,当該株式の譲渡後 に弁済期が到来する譲渡人の当該補償請求権は消滅する97)。 また,補償請求権は利益供出契約における補償の定めによって少数株主 に認められるため,この補償請求権の存立には利益供出契約の継続が不可 欠である。そのために,利益供出契約が終了した場合には,それ以後に弁 済期が到来する補償請求権は消滅する。利益供出契約が終了する場合とし ては,当該契約期間の満了,当該契約の解除,当該契約締結当事者の一方 もしくは両方の解散などが挙げられる98)。 272 ( 842 ) 立命館法学 2006 年 3 号(307号) これに対して,従属会社株式の譲渡や利益供出契約の終了という事由が 生じる前にすでに弁済期が到来した補償請求権については,上記事由の発 生後も消滅せずに存続する。ただし,この請求権を行使せず消滅時効が完 成した場合には,通常の債権と同様に,当該補償請求権は消滅する99)。こ の補償請求権の消滅時効の期間は3年である(ドイツ民法(BGB)195条, 197条2項)。そして,その起算点は,補償請求権の弁済期たる株主総会の 開催日ではなく,その開催日の属する暦年の終了時である(BGB 199条1 項)。 8.小 括 以上みてきたように,ドイツでは,少数株主の保護が AktG において法 制化されている。すなわち,AktG 304条は,少数株主に対する補償の定 めを利益供出契約におくことを強制した。ただし,AktG 304条は,利益 供出契約に定めるべき当該補償の定めの内容については,その詳細を規定 せず,補償内容が適切でなければならないことだけを求めた。そして,具 体的な補償内容については基本的に当事者の決定に委ね,当事者で争いが 生じた場合,補償内容の適切性に関して,個々の事例ごとに裁判所に判断 させることにし,そのための裁判手続を SpruchG において別途定めた100)。 これは,支配会社と従属会社の間で利益供出契約が締結されることにより 発生する従属会社の少数株主の損失は,個々の事例ごとに多種多様であり, 補償内容の適切性については,法律で一律に規制するより個々の事例ごと に判断する方が柔軟に対応でき,より少数株主の保護を図ることができる と考えられたからであろう。 それでは,このような少数株主の保護が図られているのはなぜだろうか。 それは,利益供出契約が,従属会社が獲得した利益を支配会社に供出する 義務を,従属会社に負わせるものであり,それによって従属会社の少数株 主の配当受給権を侵害するからである。この配当受給権の侵害をもたらす 利益供出契約の締結は,株式により仲介される会社財産に対する所有権へ 273 ( 843 ) ドイツ法人税法上の機関関係制度における少数株主保護(安井) の侵害を意味し,このような所有権侵害は,完全に補償されなければなら ないとされる101)。したがって,ドイツでは,このような少数株主保護制 度が法制化されているのである。 三 日本の連結納税制度の適用範囲の拡大と少数株主保護 1.概 説 これまではドイツの連結納税制度に相当する機関関係制度における少数 株主保護制度をみてきた。それでは,日本の連結納税制度において連結グ ループの範囲を拡大した場合,ドイツの少数株主保護制度と同様の制度を おけばよいのだろうか。この問題を考えるにあたっては,まず,ドイツの 機関関係制度と日本の連結納税制度における税額算定の方法とその相違点 を確認しておきたい102)。 ドイツの機関関係制度では,利益供出契約により,従属会社の損益は実 際に支配会社に帰属する。なぜなら,利益供出契約によれば,当該年度に おいて従属会社の決算が黒字であった場合,従属会社は当該利益を支配会 社に供出する義務を負い,従属会社の決算が赤字であった場合,支配会社 は従属会社の当該損失を引受ける義務を負うからである。そして,従属会 社の損益は支配会社の損益と合算されて,支配会社の固有の所得となり, 支配会社のもとで法人税額の算定が行われる。もちろん,この法人税の納 税義務者は支配会社である。 これに対して,日本の連結納税制度では,連結法人ごとに個別の決算が 行われ,それによって算定された個別の損益をもとに,内部損益の除去等 の調整が行われて連結グループの連結所得およびそれにかかる連結法人税 が算定される。よって,日本の連結納税制度では,子会社の損益が実際に 親会社に帰属するということはない。 このように,ドイツの機関関係制度と日本の連結納税制度では,子会社 (従属会社)の損益が実際に親会社(支配会社)に帰属するかどうかとい 274 ( 844 ) 立命館法学 2006 年 3 号(307号) う点で相違がある。そして,ドイツの機関関係制度において少数株主保護 制度が法制化されていた理由は,従属会社の利益供出義務により従属会社 の少数株主の配当受給権が侵害されることへの補償のためであった。以上 のことから考えれば,日本の連結納税制度において連結グループの範囲を 拡大する場合,ドイツの少数株主保護制度と同様の制度をおく必要はない ということがいえる。 それでは,日本の連結納税制度において連結グループの範囲を拡大する 場合,それによって考慮しなければならないとされる少数株主保護の問題 をどのように解決していけばよいのだろうか。以下では,この問題につい て検討していきたい。 2.少数株主に対する権利侵害の内容 連結納税制度において連結グループの範囲を100%子会社から拡大した 場合,子会社に親会社以外の少数株主が存在することになり,当該少数株 主の権利を侵害することになるとされる103)。それでは,具体的にどのよ うな少数株主の権利を侵害するのであろうか。 この点について,まず考えられるのは,少数株主における子会社の欠損 金の利用可能性が害されることである。たとえば,少数株主を有している 子会社がある決算期において欠損を出した場合,通常の個別申告であれば, その欠損金は最長7年間繰り越され,その間に利益を出せば,当該会社は その
本文档为【法人税法上机関関系制度】,请使用软件OFFICE或WPS软件打开。作品中的文字与图均可以修改和编辑, 图片更改请在作品中右键图片并更换,文字修改请直接点击文字进行修改,也可以新增和删除文档中的内容。
该文档来自用户分享,如有侵权行为请发邮件ishare@vip.sina.com联系网站客服,我们会及时删除。
[版权声明] 本站所有资料为用户分享产生,若发现您的权利被侵害,请联系客服邮件isharekefu@iask.cn,我们尽快处理。
本作品所展示的图片、画像、字体、音乐的版权可能需版权方额外授权,请谨慎使用。
网站提供的党政主题相关内容(国旗、国徽、党徽..)目的在于配合国家政策宣传,仅限个人学习分享使用,禁止用于任何广告和商用目的。
下载需要: 免费 已有0 人下载
最新资料
资料动态
专题动态
is_204381
暂无简介~
格式:pdf
大小:90KB
软件:PDF阅读器
页数:0
分类:互联网
上传时间:2011-06-18
浏览量:5